著者
小林 和法 倉沢 真澄 丹 美香 工藤 大樹 赤塚 秀貴 大場 愛
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.212-217, 2011-09-20 (Released:2013-09-20)
参考文献数
2
被引用文献数
1

肌の「ハリ」は理想の肌の要素のひとつとして挙げられることが多い。従来「ハリ」といえば肌に触れたときの感覚としてとらえられ,真皮にアプローチした改善策がとられてきた。しかしわれわれは,「ハリ」には視覚的要素も含まれていると考え,視覚的なハリという点に着目して検討を行った。健常日本人女性の顔面を対象に行った肌の官能評価スコアを用いてクラスター分析を行ったところ,「目で見て感じるハリ (視覚的ハリ) 」は「視覚的うるおい感」と非常に距離が近く,一方で「触覚的ハリ」とは別のクラスターに分類されることがわかった。また,視覚的ハリは角層水分量や経表皮水分蒸散量と関係することがわかった。この結果から,角層水分状態の改善が視覚的ハリの向上につながるのではないかと考え,化粧料の連用試験を行い,角層水分状態が改善されたときに視覚的ハリスコアがアップするかどうかをみたところ,角層水分量の有意な増加とともに視覚的ハリの有意な向上が確認され,一方で触覚的ハリには有意な変化が認められなかった。これは,視覚的ハリと触覚的ハリには,それぞれに最適な改善アプローチが別々に存在する可能性を示唆している。
著者
大場 愛 佐藤 千尋 高橋 きよみ 二川 朝世
出版者
The Society of Cosmetic Chemists of Japan
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.201-217, 2008-09-20 (Released:2010-08-06)
参考文献数
20

人間の体は器官・部位ごとに独立して機能しているわけではなく, 顔面皮膚以外の器官が顔面皮膚に影響を及ぼす例は, 多くの女性が経験し認知している。その影響は, 美容上無視できないほどのものである。昨今, 首から肩にかけた部位の苦痛・不快感 (いわゆる, こり感) を抱く人たちが増加していることに着目し, それが顔面美容に影響を及ぼすのか, 及ぼすとすれば, その状態を緩和することで顔面美容の改善を得ることができるのかを検討した。その結果, 首から肩にかけた部位に抱く苦痛・不快感は, その部位の筋緊張の昂進, 筋硬度の増加と関係しており, 額の表情筋である前頭筋の緊張, ひいては額のシワ程度にも関係していることがわかった。そして, 頸部や背面上部の筋肉の緊張を緩和することを目的としたボディマッサージ施術により, 前頭筋の緊張緩和や額のシワ程度の改善が認められた。顔面以外の要因が顔面美容に悪影響を及ぼしている例はほかにもあると考えられ, われわれの結果は, 今後, 顔面皮膚を美しく健やかにするための方策について, 個体全体で考える必要性があることを示唆するものである。
著者
木田 尚子 曽我部 隆彰 加塩 麻紀子 須賀 康 金丸 晶子 大場 愛 富永 真琴
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.108-118, 2013-06-20 (Released:2015-08-25)
参考文献数
32

われわれヒトの皮膚温度は気温や体温によって大きく変動する。しかし,温度が皮膚機能に与える影響やその詳細なメカニズムは不明である。本研究では,生理的皮膚温度付近 (>30°C) の熱刺激や化学的刺激によって活性化する温度感受性イオンチャネルTRPV4に着目し,皮膚機能におけるその役割を検証した。その結果,TRPV4はヒト表皮ケラチノサイトにおいて細胞間接着構造adherens-junction (AJ) を構成するタンパク質βカテニン,Eカドヘリンと複合体を形成し,TRPV4を活性化する熱刺激や化学的刺激を加えることで①細胞内カルシウムイオン (Ca2+) 濃度の上昇,②低分子GTP結合タンパク質Rhoの活性促進,③細胞間接着構造AJおよびtight-junction (TJ) の形成・成熟促進とそれらを介した表皮細胞間バリア機能の亢進に関わることが示唆された。さらに,TRPV4を活性化する素材の開発はバリア機能の維持・改善に有用であると考え,天然由来物からTRPV4活性化成分を探索したところ,バナバ葉から単離されたエラグ酸誘導体に高いTRPV4活性化作用および表皮細胞間バリア機能向上作用が確認された。