著者
須賀 康
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.126, no.11, pp.2077-2083, 2016-10-20 (Released:2016-10-20)
参考文献数
18

本邦におけるシワの改善治療の1つとして,機器を用いた治療が簡便で安全性も高いため大きな支持を得ている.いずれの機器においても,ラジオ波,近赤外線,レーザーなどのエネルギー源を使って真皮内部に局所的に熱を発生させ,その生体反応により老化したコラーゲンに熱収縮・熱凝固を起こし,線維芽細胞が活性化して創傷治癒機転,再構築が誘動できると考えられている.1回の施術による効果は短期で局所的なものとなるが,定期的,継続的に施術することにより,小ジワ~中等度のシワであれば改善が期待できる.
著者
木田 尚子 曽我部 隆彰 加塩 麻紀子 須賀 康 金丸 晶子 大場 愛 富永 真琴
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.108-118, 2013-06-20 (Released:2015-08-25)
参考文献数
32

われわれヒトの皮膚温度は気温や体温によって大きく変動する。しかし,温度が皮膚機能に与える影響やその詳細なメカニズムは不明である。本研究では,生理的皮膚温度付近 (>30°C) の熱刺激や化学的刺激によって活性化する温度感受性イオンチャネルTRPV4に着目し,皮膚機能におけるその役割を検証した。その結果,TRPV4はヒト表皮ケラチノサイトにおいて細胞間接着構造adherens-junction (AJ) を構成するタンパク質βカテニン,Eカドヘリンと複合体を形成し,TRPV4を活性化する熱刺激や化学的刺激を加えることで①細胞内カルシウムイオン (Ca2+) 濃度の上昇,②低分子GTP結合タンパク質Rhoの活性促進,③細胞間接着構造AJおよびtight-junction (TJ) の形成・成熟促進とそれらを介した表皮細胞間バリア機能の亢進に関わることが示唆された。さらに,TRPV4を活性化する素材の開発はバリア機能の維持・改善に有用であると考え,天然由来物からTRPV4活性化成分を探索したところ,バナバ葉から単離されたエラグ酸誘導体に高いTRPV4活性化作用および表皮細胞間バリア機能向上作用が確認された。
著者
蜂須賀 康己 三好 明文 福原 稔之 小林 展章
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科医学会雑誌 (ISSN:03869776)
巻号頁・発行日
vol.58, no.5, pp.985-989, 1997-05-25 (Released:2009-02-10)
参考文献数
14

高校の野球部の練習中に行われた,発声訓練が誘因となって発症したと思われる特発性縦隔気腫の1例を経験した.症例は15歳の男子高校生.両頸部違和感と咽頭痛を主訴に来院した.胸部X線単純写真および胸部CTにて典型的な縦隔気腫を呈し,保存的治療にて約10日で軽快した.特発性縦隔気腫は若年男性に好発する比較的稀な疾患で予後良好とされている.最近6年間における38例について,本疾患の臨床像を検討した.胸痛や呼吸困難を訴え,皮下気腫を認め,発症時に胸腔内圧が上昇するような誘因がある場合は本症を疑う必要がある.
著者
蜂須賀 康己 藤岡 真治 魚本 昌志
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.36, no.6, pp.633-638, 2022-09-15 (Released:2022-09-15)
参考文献数
12

症例は48歳,男性.健康診断の胸部単純X線写真で異常影を指摘され当院を受診した.造影CTで左後縦隔に被膜を有する5.5×5.3×5.0 cmの腫瘤を認めた.良性囊胞性腫瘍を疑い切除術を行った.術中所見で腫瘍は胸腔内迷走神経由来であった.病理検査の結果,高度な囊胞変性を伴ったancient schwannomaと診断した.迷走神経由来の後縦隔ancient schwannomaのまれな1例を経験した.
著者
須賀 康平 伊橋 光二
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.D3P3499, 2009

【目的】<BR> 咳嗽機能は呼吸器系の感染防御の重要な機構の一つである.喘息、肺がん術前、肺炎軽快後の高齢者を対象とした咳嗽力低下に関する報告では、肺実質および末梢気道の特性変化、呼吸筋の筋力低下と相互協調性低下、声門閉鎖不全などを咳嗽力低下の要因に挙げている.咳嗽力低下の要因のうち呼吸筋の筋力低下を電気刺激で補う研究は脊髄損傷を対象としたものはあるが、寝たきり高齢者を対象としたものは見当たらない.そこで今回は、寝たきり高齢者を想定し、その基礎研究として健常者を対象に擬似的咳嗽力低下状態を電気刺激で改善できるか研究を行った.咳嗽力の指標としては咳嗽時最大呼気流速(以下PCF:Peak Cough Flow)と咳嗽時最大呼気筋力(以下PEmax:Peak Expiratory max)を用いた.<BR>【方法】<BR> 本研究は内容を説明し,同意の得られた健常男性20名(年齢21.3±1.1歳、身長169.7±5.5cm、体重65.2±13.7kg、肺活量4.62±0.45L、努力性肺活量4.49±0.41L)を対象に行った.測定には呼吸機能検査機器Multi-Functional SPIROMETER(HI-801 CHEST社製)を用い、FVCモードでPCF、呼吸筋力測定モードでPEmaxを測定した.まず背臥位にて、安静吸気からの最大努力咳嗽をPCFとPEmaxにて測定し、その50%の値での咳嗽を練習させ、±10%の誤差範囲内で3回連続成功した状態を擬似的嗽力低下状態とした.この状態での咳嗽を12回行い、ランダムに6回の腹直筋電気刺激を加圧相に行い、この時のPCFとPEmaxを測定した.電気刺激の強度は10段階ペインスケールの8程度となるまで上げるという説明を対象者に対して行い、不快感を与えない程度の最大強度の設定を試みた.電気刺激条件は縦9cm横7cmの電極を腹直筋の4箇所に貼付し、周波数は50H<SUB>Z</SUB>とした.統計処理はPCFとPEmaxの各指標について電気刺激のない条件とある条件の各6回のデータを平均した.Shapiro-Wilk検定で正規性を確認し、PCFはWilcoxon の符号付順位検定で、PEmaxはt検定で検定を行い、各指標において電気刺激のない条件とある条件の差を比較した.有意水準は5%未満とした.<BR>【結果】<BR> PCFの電気刺激のない条件(中央値121.55L/min四分位範囲46.00L/min)と電気刺激のある条件(中央値156.90L/min四分位範囲74.95L/min)において有意な差を認めた.PEmaxでも電気刺激のない条件(43.54±11.30cmH<SUB>2</SUB>0)と電気刺激のある条件(50.55±13.53cmH<SUB>2</SUB>0)において有意な差を認めた.<BR>【考察とまとめ】<BR> 腹直筋電気刺激によりPCFとPEmaxのどちらにも有意な増加が見られ、この方法を用いて咳嗽の介助を行える可能性が示唆された.今後、異なる電気刺激条件や、実際に高齢者を対象とした研究を行って効果を検証していく必要があると考えられる.
著者
木村 有太子 須賀 康
出版者
日本医真菌学会
雑誌
Medical Mycology Journal (ISSN:21856486)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.J45-J49, 2018 (Released:2018-08-31)
参考文献数
15
被引用文献数
1 2

爪白癬の治療において,抗真菌薬の内服・外用以外の治療の選択肢としてさまざまな工夫がなされてきた.爪白癬に罹患した爪甲部分の爪切りやグラインダーを用いて機械的に除去する方法,スピル膏や尿素配合軟膏のODTによる化学的除去法もあるが,近年ではレーザー療法もその1つとして注目されている.わが国で報告されている爪白癬のレーザー治療としては,炭酸ガスレーザーと外用抗真菌薬を併用した方法,フォトダイナミックセラピーを用いた治療,Nd:YAGレーザーによる治療報告がなされ,良好な結果が得られている.しかし,レーザーの照射条件や照射回数,有効性の判定などが施設や論文によって一定でなく,いまだエビデンスレベルとして確立しているとはいえない.また,Nd:YAGレーザーと外用抗真菌薬の併用では,それぞれの単独療法とくらべて効果が高くなるとの報告もある.今後,爪白癬に対するレーザー治療の有効性や外用抗真菌薬との併用による治療効果の増強,治療期間の短縮の可能性について,確かな臨床的知見が得られることを期待したい.
著者
須賀 康
出版者
特定非営利活動法人 日本レーザー医学会
雑誌
日本レーザー医学会誌 (ISSN:02886200)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.65-71, 2010-04-15 (Released:2010-11-14)
参考文献数
20

フラクショナルレーザー療法は,きわめて微細なレーザー光(micro laser beam)を一定の密度で皮膚に照射してゆく治療法である.このようなレーザー照射法では,周囲の皮膚が熱緩和(thermal relaxation)の役割を果たし,表皮や真皮に対してのburn-like thermal damageを最小限に抑えることができる.一方では,micro laser beamの熱刺激により表皮のターンオーバーを亢進し,真皮組織を十分に収縮させて,従来のlaser resurfacingに劣らない皮膚リモデリング作用を誘導できる.特に炭酸ガスレーザーを用いたフラクショナル療法は,真皮組織の一部を確実に蒸散し,取り除くとともに,熱によるコラーゲン収縮が生じるため,皮表に張力を与えて,強力なスキンタイトニング効果を可能にしている.本療法の登場により,真皮へ強力なアプローチが可能となったため,これまで十分な方法がなかった,?瘡瘢痕の治療にも応用できるようになった.すなわち,表皮が細かく陥凹するような所謂,顔面のice pick scarには特に有効であり,日常生活で?瘡瘢痕の整容的なコンプレックスに悩んでいる患者にとっては朗報となっている.
著者
渡邊 慎吾 須賀 康平 小野 修 江川 廉 茂木 崇宏 櫻井 佳宏 小関 忠樹
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会 東北ブロック協議会
雑誌
東北理学療法学 (ISSN:09152180)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.66-73, 2018-09-01 (Released:2018-09-14)
参考文献数
27

脳卒中後の痙縮は,運動機能の回復を阻害する可能性を有することから,早期に痙縮発症の要因を同定することが重要であると考えられる。そこで,本レビューは脳卒中後早期の痙縮発症の予測因子を調査することを目的とし,論文レビューを実施した。データベースはPubMedを用いた。論文検索は,“spasticity”,“post stroke spasticity”の2つの用語に“stroke”,“cerebrovascular accident”,“CVA”,“predictors”,“risk factors”を組み合わせて実施した。すべての検索は2017年5月22日までに終了した。最終的に15編の論文が採用された。痙縮発症の予測因子は,運動機能に関する報告が最も多かった。その他に,感覚機能,疼痛,年齢等の患者属性,臨床経過および脳の損傷部位が挙げられた。痙縮発症の要因を早期に同定し,リハビリテーションおよび薬物治療を実施することは,さらなる運動機能の回復や介護負担の軽減および治療コスト削減をもたらす可能性がある。
著者
須賀 康
出版者
順天堂大学
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.24-32, 2003-05-30

皮膚は外界からのダメージに対して生体を保護し,体内からの水分蒸発を防ぐ働きがあります.主たる役割を有する場所は表皮であり,ダメージに対抗するため,細胞骨格,膜骨格などを有しています.遺伝的な要因で「表皮バリアーの準備が十分にできない」という事態を生ずれば,先天性角化異常症(角化症)という病気が起こります.私は,このような角化症の病態生理・分子生物学的な解析に携わってきた経験を生かし,角化症の原因となる<細胞骨格・膜骨格の異常>について動物モデルを作成し,今後の病態解明・遺伝子治療などに役立てる試みを行って参りました.これらの動物モデルは,今後の先天性皮膚疾患の患者に対するex vivo遺伝子治療を考える上でも大変有用と思われます.すなわち本療法は,表皮基底層の幹細胞(stem cell)を見つけて培養,ノックイン法の技術により疾患遺伝子を正常遺伝子で置換します.そして,悪い遺伝子を取り除いた培養表皮シートを使って患者さんの表皮を植え変えてしまう方法です.表皮シートは患者本人由来ですから,拒絶されることはありません.このため,本療法は皮膚科領域の中では最も理想的な方法と考えられ注目されています.
著者
佐々木 晃 須賀 康行
雑誌
情報処理学会論文誌プログラミング(PRO) (ISSN:18827802)
巻号頁・発行日
vol.1, no.2, pp.124-124, 2008-09-26

本発表では,プログラミングを支援する言語指向エディタの自動生成手法を提案する.本研究で対象とする言語は,汎用プログラミング言語ではなく,特定の分野で使われることに目的を特化した言語,ドメイン特化型言語である.このような言語の利用者は必ずしもプログラミングの知識を持つわけではない.そこで,プログラミング支援をする専用の言語指向エディタが不可欠となる.たとえばGUIによるウィザード形式でテンプレートに埋めながらプログラムを完成させるようなエディタが考えられるが,そのような単純なものでも,開発では,言語仕様を満たすための緻密性が要求される.したがって,自動生成による開発コスト削減,保守性の向上が望まれる.汎用言語に対する言語指向エディタの自動生成は,インクリメンタル構文解析,属性評価など関連する研究が古くからなされている.一方で,今回想定しているエディタでは,プログラマが編集するものはプログラムのテキストではない.そこで本研究では,テキストの構文などを抽象化した抽象構文木を編集させるという視点を持ち,木の文法(tree grammar)に基づいた仕様記述に基づいてエディタを生成する方法をとる.この方式では汎用言語における構文エラーは発生しない.一方で,言語要素の型や静的意味チェックが必要となるが,これは属性文法に基づく手法を用いる.本発表では,以上で述べた仕様記述やエディタ生成のアルゴリズムの詳細,本研究の評価について実例を交えて示す.We propose a method for generating language-oriented editors. Target languages in this study are domain specific languages that are specialized to supporting tasks in specific domains. Primary users of such languages do not have programming skills. This means we should also offer a programming development tool with the language processor. These tools are expected to be generated from specifications, since the development and maintenance cost of such tools tends to be high. There are several studies on syntax-oriented editors for general purpose programming languages, such as incremental parsing and attribute evaluation techniques. On the other hand, in this study, it is not a program text that a programmer is to edit. Therefore, our approach to generating such tools is based on abstract syntax trees (ASTs) in which text structure is abstracted out. The method for checking of static semantics is based on the attribute grammar formulation. In this presentation, we will show the details of specification, generating algorithms, and evaluation with experiments.