- 著者
-
大塚 洋一
- 出版者
- 日本プロテオーム学会
- 雑誌
- 日本プロテオーム学会誌 (ISSN:24322776)
- 巻号頁・発行日
- vol.7, no.2, pp.53-62, 2022 (Released:2023-01-14)
- 参考文献数
- 26
疾患機構の解明や診断・治療の高度化には,細胞の変容を区別しうるイメージング技術が求められている.生体組織に含まれる分子群の分布を可視化する質量分析イメージングは,分子夾雑な細胞ネットワークのローカルな化学状態の変化を捉えるために有用である.本総説では,細胞スケールで,脂質やタンパク質の空間分布情報を計測するための先端技術の進展と,それらの生体組織のイメージングへの適用について概説する.微小領域の成分を高感度に計測するためのイオン化法や,試料の前処理法,質量分析装置の進展により,計測できる分子種が拡張されてきた.液体クロマトグラフィー質量分析法を用いたオミクス計測では得られない,疾患組織の不均一化に関与する分子群の分布情報は,生命科学研究の発展に資する.生体成分を詳細に計測するための基盤要素技術の研究開発と,それらを活用する実試料の研究の融合推進がより一層求められている.