著者
伊東 乾 添田 喜治
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

ルクセンブルク大司教座大聖堂、バイロイト祝祭劇場を始めとする西欧教会・オペラ劇場を、従来の建築音響学に存在しなかった儀礼や演出の空間性、僧侶や歌手の発声の特質を踏まえた非線形音響の枠組みで詳細測定・解析し、教会・劇場内音響の動的異方性を始めて明らかにした。海外での測定評価の準備として国内でも同様の実証を東大寺二月堂、新国立劇場などにおいて行い、宗教建築内での伝統儀礼が言語の明瞭性や没入感など、音声言語の脳認知と密接に連関している可能性を、物理測定によって始めて示した。旧来顧慮されてこなかった垂直方向の音源移動評価のため6軸相関計等を開発し、高所からの歌声や話声が抱擁感を持つ機構を解明した。
著者
伊東 乾 大場 善次郎 藤原 毅夫 吉田 真 美馬 秀樹 松本 洋一郎 関村 直人 杉野 昇
出版者
東京大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2004

3D可視化技術の技術教育応用を、以下の2点に整理して行った。1 立体視モニタなどの特殊な装置系を必要とするもの2 通常のネットワーク・コンピュータシステムでの教育情報の多次元表示1 については1-1 同一の情報を平面モニタと立体モニタで提示した際の、学習記憶、ならびに疲労については、どちらにも有為な差は見いだせなかった。1-2 「3D内視鏡」操作のように、現実に立体視を利用するシステムの学習については、装置系は決定的に重要 1-3 一般の技術/工学教育の実施に当たっては、幅広い普及などの観点からも情報の多次元表示(すなわち2)が有効 との結論にいたった。2については2-1 インテラクティブで可動性のある、平面モニタ上での情報構造の立体可視化システム(美馬エンジン)が、東京大学教養学部での情報教育で大きな効果を生み出した。2-2 次元の概念を、物理学における解析力学の「一般化座標」にならって拡大し、内部自由度の拡大と考えることで、平面(2D)モニタ上に教育情報の多次元表現を実現した。2-3 一般化された次元とは「色彩」「濃度」「網掛け」といった汎用性あるグラフィックの要素であり、これらをxml等のマークアップ言語で指定することで、工学教育における情報の効果的なオンデマンド多次元表現の一般的可能性があることを、「学習知識構造化」として試験実装することに成功した。
著者
伊東 乾 青木 直史 添田 喜治 岩城 達也 石原 茂和
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

日欧の木造・石造建築物の比較測定に基づき、西欧教会、オペラ劇場の動的音楽音響特性を、そこで行われる演奏・儀礼との関係に基づいて明らかにした。上下方向に移動変化する音楽音響に既存の評価法がなかったため、相関解析を用いてこれを定式化し数理を準備した。これを用い、作曲家リヒャルト・ヴァーグナーが設計に直接関与したバイロイト祝祭劇場の音楽音響ダイナミクスを、ヴァーグナー楽劇の上演を伴って収録解析した。その成果に基づいて空間演奏の要素を伴う指揮の技法を初めて体系化、国際公刊した。この過程で創出した新しい非線形音楽音響解析手法群を適用し、古代ギリシャ・ハルモニアのヘテロダイン共鳴などの機構も明らかにした。
著者
栗原 一貴 五十嵐 健夫 伊東 乾
出版者
一般社団法人日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.14-25, 2006-10-26
被引用文献数
10

本論文では,資料の作成から発表までを電子ペンによって統一的に行うことのできるプレゼンテーションツールを提案し,実用システムの開発と教育現場における長期ユーザスタディによりその有効性を検証する.まず事前調査を行い,従来のツールでは満たせないプレゼンテーションに対する現場ニーズを分析した.その結果,資料の作成・編集をIT初心者でも簡便に行うことができる機能と,発表中であっても資料を動的に編集できる機能が重要であるという知見が得られた.これに基づき,電子ペンの持つ直感的操作が可能な特性と,絵画的表現および言語的表現を自由に空間に配置・操作できる特性を活かした電子プレゼンテーションツール「ことだま」を開発した.そして小中高校の教員を被験者とする2年間にわたる長期のユーザスタディを行った.その結果ことだまの有効性が実証され,教育現場への応用で必要となるプレゼンテーションツールデザインのための知見が得られた.
著者
伊東乾 榊原 健一 青木 涼子 小坂 直敏
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告音楽情報科学(MUS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2000, no.19, pp.79-82, 2000-02-17

五線記譜法に由来する音高や音色などの概念は、作曲や聴取、分析に深い影響を及ぼしている。本稿では正弦波モデルによる音楽音声の新しい取り扱いを提案する。能楽の発声と記譜の事例に関して正弦波モデルを適用して考察し、合わせて観世榮夫氏の協力で行った研究制作「能オペラ『邯鄲』」にも触れる。The concepts of pitch and timbre, which have their origin in western classical music notation system, deeply ruled the music thinking of composition, listening and analysis. In this article we propose a new treatment of musical voice based on a sinusoidal model. Noh music theater, Japanese traditional opera, have proper charactaristics in its singing technique and notation system to be analysed with a sinusoidal model. We also report research = production "Quand-Temps" Noh-Opera after the concepts of M. Duchamp and J. Cage, which is a collaboration with Hideo KANZE, prominent Noh actor in KANZE style.