著者
大塲 洋介 宮下 芳明
雑誌
研究報告ヒューマンコンピュータインタラクション(HCI) (ISSN:21888760)
巻号頁・発行日
vol.2022-HCI-200, no.37, pp.1-8, 2022-11-01

MacBook Pro(2021)画面上部のノッチ領域には,カーソルが進入できる.しかし,カーソルの一部や全部が隠れてしまう.この影響でノッチが操作時間を増加させることを,筆者らは先行研究で明らかにした.そして本稿では,ノッチを「カーソルが進入できない領域」とした方が良いと提言する.ノッチの外縁でカーソルが留まるため,ノッチと隣接したターゲットを高速に選択できると考えられるからである.実験 1 では,現行のノッチの仕様で,「ノッチに進入する戦略」よりも「ノッチを回避する戦略」が望ましいことを示した.実験 2 では,ノッチを「カーソルが進入できない領域」に変更した場合,ノッチと隣接するターゲットを速く正確に選択できるようになることを示した.
著者
大塲 洋介 宮下 芳明
雑誌
研究報告ヒューマンコンピュータインタラクション(HCI) (ISSN:21888760)
巻号頁・発行日
vol.2022-HCI-199, no.2, pp.1-8, 2022-08-15

MacBook Pro(2021)にはディスプレイの上端中央にノッチ(描画が行われない黒い領域)が配置された.デフォルトのカーソルサイズの場合,このノッチとカーソルが重なると,カーソルの全部もしくは一部が隠れてしまう状況が観察された.このような状況下では,ユーザはノッチ内でのカーソルの位置がわからなくなったり,カーソルを見失ってしまったりする可能性がある.それにより,ノッチを回避する経路をとったり,ノッチ付近で慎重に操作したりすることで操作時間が増加するかもしれない.本研究では,画面上端にあるターゲットから,同じく画面上端にある他のターゲットを選択する場合(例えば,メニューバーの「ファイル」項目を選択後,「検索」項目を選択する場合),ノッチが操作時間に与える影響を調査した.結果,本実験条件のうち,ノッチがターゲットの間にある条件では,操作時間が約 11.8% 増加することがわかった.
著者
富張 瑠斗 木下 大樹 大塲 洋介 山中 祥太 宮下 芳明
雑誌
研究報告ヒューマンコンピュータインタラクション(HCI) (ISSN:21888760)
巻号頁・発行日
vol.2022-HCI-199, no.5, pp.1-7, 2022-08-15

視力が低いとポインティングの際,カーソルやターゲットがぼやけて見える.そのためターゲットを慎重に狙う必要があり,選択までの時間が増加する可能性がある.また,カーソルやターゲットを正確に把握できないため操作ミスも増える可能性がある.本研究では視力が低下した際,パフォーマンスがどの程度低下するのかを調査する.実験では視力の変化を画面のぼかしで代替することで,画面上のターゲットが明瞭に見えない状況を再現した.実験の結果,ぼかしが強いほど操作時間とエラー率が増加することがわかった.また,ターゲットが小さいほど,エラー率に対するぼかしの影響が大きいことがわかった.
著者
木下 大樹 大塲 洋介 富張 瑠斗 山中 祥太 宮下 芳明
雑誌
研究報告ヒューマンコンピュータインタラクション(HCI) (ISSN:21888760)
巻号頁・発行日
vol.2022-HCI-199, no.37, pp.1-8, 2022-08-15

多くのポインティング手法の評価実験ではできるだけ速く正確にタスクを行うように指示される.速さと正確さはトレードオフの関係にあるため,それぞれにどれだけの重みを置くかは参加者にゆだねられてしまう.例えば,エラーしにくいポインティング手法を提案して評価実験をする場合,正確さに重きを置く参加者が多いと,従来手法との差が出ない可能性がある.本稿では,速さと正確さに対するバイアスがポインティング手法の評価結果へ与える影響を調査した.ニュートラル,速さ重視,正確さ重視の 3 種類のバイアスでポインティングタスクを行う実験を,十字カーソルとバブルカーソルの 2 種類のカーソルで実施した.結果,バイアスとカーソルの間に交互作用がみられ,バイアスが正確さ重視になることでカーソル間のエラー率の差が小さくなることがわかった.このことから,速さと正確さに対するバイアスが評価結果に影響を与える可能性が示唆された.一方で,正確さ重視においてもバブルカーソルの方が十字カーソルよりも有意にエラー率が低く,バブルカーソルはバイアスによらず有効な手法であると示された.ポインティング手法の評価実験において,複数のバイアスを条件に含めてタスクを行うことで,多彩な状況(たとえば,ユーザが確実にエラーをせずにボタンを選択したい状況)を考慮した評価が行えると考えられる.