著者
鎮西 忠茂 大屋 一弘
出版者
Japanese Society for Tropical Agriculture
雑誌
熱帯農業 (ISSN:00215260)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.106-114, 1972

天ぐ巣病罹病サツマイモと健全なサツマイモ地上部の無機成分組成の相違を調べる目的で, 健全株8サンプル, 罹病株10サンプルを採集し, それぞれの葉・葉柄・茎についてN, P, K, Ca, Mg, Fe, Mn, Zn, B, Mo, Cu, Na, Alなどの13元素を分析した.<BR>葉においてはN, K, B, Cu含量が, 葉柄においてはK, Ca, Mo, Cu含量が, 茎においてはNおよびMg含量が罹病株より健全株において高いことがわかった.<BR>葉・葉柄・茎における各成分の含量を比較した場合 (1) NおよびMn含量は健全株・罹病株共に葉において高かった. (2) Znの含量は建全株・罹病株共に葉・葉柄・茎の間に相違がなかった. (3) 他の10元素については, 健全株と罹病株の間で葉・葉柄・茎間の差にそれぞれ異なった傾向がみられた.<BR>葉・葉柄・茎間の成分含量相関をみると, 健全株および罹病株の両方においてK, Ca, Zn, Fe, Mn, Naなどの含量は, 葉と葉柄, 葉と茎、葉柄と茎の間で有為な相関関係があった.また健全株・罹病株共に葉柄と茎間において最も多くの成分が相関を示した.<BR>サツマイモ天ぐ巣病の診断に植物分析を行なうことが一つの方法として考えられるので適当なサンプリング部位および分析すべき成分について検討した.
著者
大屋 一弘 Oya Kazuhiro 琉球大学農芸化学科
出版者
沖縄農業研究会
雑誌
沖縄農業 (ISSN:13441477)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.41-44, 1965-12
被引用文献数
1

沖縄本島酸性土壤の国頭礫層土壤及びアルカリ性土壤の泥灰岩土壤を用いて,パソゴラグラスに対するりん酸の肥効をポット栽培で試験した。Pの量は各土壤に10a当り0,6,15,22,37kgの5段階を施用し,P施用量に対するパンゴラグラスの収量及びP_2O_5吸収量を調べた。国頭礫層土壤においては石灰区と無石灰区を設けたが,石灰区では過石の形でPを15kg施用した時,ハイホスカの形ではPを22kg施用した時に最高の収量が得られた。無石灰区では過石及びハイホスカいずれの場合でもPを37kg施用したもので最高の収量が得られた。そして石灰施用の有無によって過石及びハイホスカのりん酸肥効は相違を示す傾向がみられた。泥灰岩土壤においては過石の形ではPを15kg施用した場合,またハイホスカの形ではPを37kg施用した場合に最高の収量が得られた。パンゴラグラスのP_2O_5吸収量は,国頭礫層土壤及び泥灰岩土壤に共通して,過石及びハイホスカの間で相違はなかった。国頭礫層土壤においてパンゴラグラスのP_2O_5吸収量が石灰施用によって減少するような傾向は見られなかった。
著者
大屋 一弘 渡嘉敷 義浩 高江洲 均 多喜 和彦 西垣 晋
出版者
琉球大学
雑誌
琉球大学農学部学術報告 (ISSN:03704246)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.165-176, 1976-12-01
被引用文献数
1

沖縄本島南部, 糸満市阿波根および西原村棚原に堆積する典型的な2つの"ジヤーガル"土壌断面を選定し, 各断面をおのおの5層に分け, 土壌断面中の理化学性, 粘土鉱物組成, および水溶性成分の移動・集積について調べた。粘土鉱物組成は主として選択溶解法とX線回折分析法を用い, 水溶性成分は蒸留水の浸出で溶出する成分中Siを比色法, Fe, Ca, Mgを原子吸光法, Na, Kを炎光法を用いておのおの測定した。典型的な"ジヤーガル"とその母材の土壌反応はいずれも弱アルカリ性反応を呈し, 粒径分布はシルト部分や細砂部分の含量が高く, 土性はSiCLあるいはLを示した。また, 有機炭素は1%以下で, CEC25&acd;34me/100gを示し, 置換性塩基中Caは31&acd;39me/100gで最も多量に含まれた。Kは1&acd;3me/100gで最上層と最下層に多く含まれ, Mgは1&acd;4me/100g, Naは1&acd;2me/100gでいずれも上層から下層へ漸次増加した。粘土部分の非晶質成分はジチオナイト可溶成分が4&acd;11%, そのうちFe_2O_3が2&acd;4%含まれ, 0.15Mシュウ酸ナトリウム可溶成分が8&acd;22%含まれた。後者の成分は上層から下層へ量的に漸次減少し, いずれもSiO_2/Al_2O_3分子比が2に近い値を示した。また, 粘土部分の結晶質成分は71&acd;85%含まれ, 上層から下層へ幾分増加した。断面中の鉱物組成は, 全層にモンモリロナイトが主体を占め他にイライト, Al-バーミキュライト, クロライト, カオリナイトがいずれも少量随伴した。一方, シルト部分は著しく多量の石英とごく少量の長石とが全層に含まれ, 両鉱物の他にごく少量のカルサイト, ドロマイト, クリストバライトが付随し, これらの鉱物の存否は各層間で異なった。"ジヤーガル"土壌断面での水溶性成分中Si, Feの溶出量および溶出の型は土壌断面の各層間で異なった。これに対しCa, Mg, K, Naの塩基類は溶出量および溶出の型に土壌断面の各層間でほぼ一定の傾向がみられた。Caは数10PP^m溶出し, 5mの深さの泥灰岩層に著しく多かった。Mg, Naの溶出量は1&acd;3ppmで上層から下層へ漸次増加し, 特にMgは最下層の泥灰岩層では5ppmに達した。Kは2&acd;4ppm溶出し最上層と最下層の泥灰岩に多く, 中間層ではMgとNaの溶出量の間にあった。なお, 連続的に抽出測定される水溶性塩基のMg, K, Naは或る比率をもって置換性部分から放出されるものと思われる。また, Caの大部分は遊離のCaCO_3として存在することが示唆された。