著者
大山 ちあき 藤野 文代
出版者
北関東医学会
雑誌
北関東医学 (ISSN:13432826)
巻号頁・発行日
vol.51, no.5, pp.301-305, 2001
被引用文献数
1

【目的】患者及び家族の希望で訪問看護を受けながらターミナル期から死亡までを在宅で過ごし, 死亡したがん患者についての訪問看護の内容を明らかにし, 在宅療養を可能にする条件を探求することである.【研究方法】訪問看護記録・外来カルテ・入院カルテの分析と訪問看護者との討議内容を分析する方法とした.これらのデータを基に文献との比較を行い, 考察した.【結果】5事例のうち患者自身が在宅ケアを選択し意思決定した人は2名であり, 他の3名は娘や息子夫婦が在宅ケアを決定した.ターミナルの期間は, 最も短い人で2ヶ月, 長い人で7ヶ月であった.訪問期間は9日から5ヶ月半であった.死亡場所は, 在宅2名, 病院3名であった.病院で死を迎えた人の理由は, 本人の苦痛が強くなったため本人が入院希望をした人が2名, 家人が患者を看ていることに耐えかねて入院希望した人が1名であった.<BR>訪問看護の内容としては, 医療処置・清潔ケア・介護方法の助言・家族の健康管理・連絡調整であった.訪問看護婦は, 患者及び家族の希望に沿いながら, 看取りのための準備を実施していた.また, 訪問看護婦は患者や家族にとって頼れる存在であり, 病院とつながっている安心感を与える存在であった.【結論】本研究から, 在宅ターミナルケアを可能にする患者・家族・看護者のそれぞれの条件は, 以下のような内容であることが明らかになった.<BR>1. 患者の身体的条件においては, 疼痛コントロールができていることと, 精神的な条件においては, 死を受容しながら生きる希望を持っていること.<BR>2. 患者にとって強力なキーパーソンが存在すること.<BR>3. 家族が患者の死を受容して, 家族の介護の意思が他者から支えられていること.<BR>4. 家族がケアの学習意欲を持っていることと, 看護者がケアの指導技術を持っていること.<BR>5. 病院と地域の連携のシステムがあること.
著者
大山 ちあき 狩野 太郎 神田 清子
出版者
群馬大学
雑誌
群馬保健学紀要 (ISSN:13434179)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.39-44, 2001-03

本研究の目的は, がん専門病院と一般病院のがん告知に関する考え方の違いを明らかにすることである。対象はがん専門病院に入院中のがん患者186名と, 10施設の一般病院に入院中のがん患者412名であった。医師の告知状況, 病名告知についての看護者の考え方などについて, 平成11年10月1日に病棟責任者記載による一斉調査を行った。その結果, 医師の告知状況は, 「がんまたは悪性腫瘍」として真実を告げている割合が, がん専門病院では84.4%であり, 一般病院の54.1%に比べると約30.0%高くなっていた。看護者が望む病名告知も医師と同様の結果であった。がん告知に対する看護者の考慮する点は, がん専門病院・一般病院ともに「病期・予後」を最優先にしていた。がん専門病院の看護者は「患者の知る権利」「患者の希望」を大切にしていた。一方, 一般病院の看護者は「家族の希望」を優先していた。以上の結果より, がん専門病院と一般病院では, がん告知に対する看護者の姿勢に明らかな違いが見られた。今後, 一般病院では看護者・医師ともに, 患者の意思を尊重した告知のあり方を, 病院独自の方法で検討していく必要性が示唆された。