著者
関根 恵理香 金泉 志保美
出版者
国立大学法人 群馬大学大学院保健学研究科
雑誌
群馬保健学研究 (ISSN:13434179)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.11-20, 2022 (Released:2022-04-01)
参考文献数
13

本研究は,発達障害児・者のきょうだいに関する先行研究の概観により,研究の動向を明らかにし,今後の研究課題を検討することが目的である。研究方法は,医学中央雑誌 Web 版(ver.5)を用いて,「発達障害」,「きょうだい」をキーワードとして検索し,17件の文献を分析対象とした。きょうだい自身を研究対象としている研究が最も多く,診療録や文献を対象としたものも若干見られた。発達段階区分別の内訳については,各区分で散見していたが,学童期以前を対象とした研究は少なく,思春期のみを対象とした文献は抽出されなかった。記述内容を質的帰納的に分析した結果,研究内容として【きょうだいの心理的反応やその影響要因】,【きょうだいが同胞との関係を構築する過程】,【きょうだいが捉える同胞およびその障害や家族像】,【専門職によるきょうだいへの支援の分析】,【きょうだいが発達障害の同胞のいる生活へ適応する過程】,【成人きょうだいの体験や思いに関する事例研究】の6カテゴリーが形成され,きょうだいの体験は周囲の人々のかかわりから様々な影響を受けていることが明らかになった。今後は,体験や経験が未だ十分明らかとなっていない思春期のきょうだいを対象とした調査を検討していくことが課題である。
著者
大桃 道幸
出版者
群馬大学
雑誌
群馬保健学紀要 (ISSN:13434179)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.29-35, 1998-03

ロイ・モレルはFar from the Madding Crowdの主人公Gabriel Oakの生き方を例に挙げて,幾多の苦難を乗り越えて人生の勝利者となるOakこそハーディが称揚する人物像であるとし,夢想家や夢想的な生き方をハーディは非難しているのだと論じている。モレルの立場はハーディの小説の悲劇性を登場人物たちの非現実的で夢想的な生き方に求めるもので,宿命論に立脚した従来のハーディ観を打破するという点で高く評価されるべきだが,ハーディの小説を単なる人生訓,処世訓のレベルで捉えている点に不満が残るし,ハーディがその後Oakのような人物ではなく,むしろ自己破滅型の夢想家を執拗に描き続けた理由を明らかにはしない。ハーディの小説,とりわけ後期の小説に登場する主人公たちの多くは芸術家ないしは芸術家肌の人物であるが,夢想性は彼らの生来の気質であって,それはしばしば人を破滅に導くものの,彼らにとっては創造力の源泉であり,彼らの存在そのものの基盤であると言ってよい。また彼らにとって,理想の恋人像が生身の人間よりも現実的であるのと同じように,想像の世界のほうが実際の世界よりも一層現実的なのである。従って,芸術家ないしは同様の気質を備えた人物が実社会で生きてゆくことそれ自体が多くの矛盾をはらみ,必然的に悲劇が生じることになる。厳しい現実の中で幸福を獲得するOakを称える一方で,自分自身苦悩の人生を歩んだハーディは,虚しく夢を追い求め破滅してゆく人々を,大いなる共感を持って描き続けざるを得なかったのである。
著者
石田 和子 石田 順子 中村 真美 伊藤 民代 小野関 仁子 前田 三枝子 神田 清子
出版者
群馬大学
雑誌
群馬保健学紀要 (ISSN:13434179)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.53-61, 2005-03

外来で化学療法を受けている乳がん再発患者の日常生活上の気がかりと治療継続要因を探求することを目的に質的研究を行った。外来で化学療法を受けている乳がん再発患者を対象で本研究参加への同意が得られた10名であった。半構成的な面接によりデータを収集した。面接内容を逐語録に起こし,質的帰納的方法を参考に,患者の言動から日常生活上の気がかりと治療継続要因に関する言動をコード化し類似性に従いサブカテゴリー,カテゴリーと抽象化を行った。その結果は以下のようにまとめられる。1.外来で化学療法を受ける患者の日常生活上の気がかりは【抗がん剤を続けることの気かかり】【再発・転移が気がかり】【嘔気・嘔吐による体力の消耗】【倦怠感により動きたくとも動けない現実】【脱毛による活動範囲の縮小】のカテゴリーが抽出された。2.治療継続要因としては《抗がん剤治療へ託す生への希望》《変化した生活を補う人》《療養生活での癒し体験》のカテゴリーが抽出された。3.抗がん剤の副作用である嘔気・嘔吐・倦怠感は行動範囲の縮小が見られることから,症状マネジメントの方法や気分転換活動,患者教育を行う必要がある。4.抗がん剤の副作用である脱毛はボディイメージの変容により耐え難い苦痛であるため,脱毛の時期,受容の状況や考えを聞き必要に応じて指導や情報提供を行う必要がある。5.治療生活を支える要因とは,患者の長い治療生活を支えていくことであり,心理,社会的なサポートが重要な役割を果たすことが明らかになった。以上のことより,患者の外来治療時間を利用して看護師は,患者が治療を継続していく上での悩みや思いを自由に語れる場を提供する必要があることが示唆された。
著者
大桃 道幸
出版者
群馬大学医学部保健学科
雑誌
群馬保健学紀要 (ISSN:13434179)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.103-110, 2003

トマス・ハーディの短編小説To Please His Wifeは, 野心のために夫と二人の息子を失った女性ジョアンナの半生を描いた作品である。ハーディの短編小説は長編小説に比べ, 過小評価されてきた嫌いがあり, To Please His Wifeもまたその例に漏れず, 因果応報, 自業自得の単純な物語として片付けられがちである。しかしながら, 小説家ハーディの円熟期に書かれたこの作品はその簡潔なペーソスあふれる筋立ての中に, 結婚, 階級(意識), 野心, 教育, 出世といった同時期に書かれた長編小説に共通するテーマが織り込まれていて, ハーディ文学を理解する上で見落とせない作品となっている。ハーディはまた, 主人公のジョアンナを野心のために身を滅ぼした一人の愚かな女性から〈船乗りの妻〉という普遍的な悲劇のヒロインへと高めることにより, To Please His Wifeを時空を超えた感動的な悲劇的作品にしている。
著者
小林 雅美 砂崎 博美 吉田 美由紀 侭田 ゆかり 伊藤 まゆみ
出版者
群馬大学
雑誌
群馬保健学紀要 (ISSN:13434179)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.23-27, 2002-03
被引用文献数
1

皮膚科における電子メールを媒体とした相談内容の分析とセルフケア支援の展望について検討することを目的として, 1997年7月〜2000年1月までにアクセスのあった質問メール404件(のべ290名)について, 質問者の特性, 全疾患・代表疾患の相談内容を分析した。1.質問者は20歳代40%, 30歳代21%と若年者が多く, 質問者と相談対象の間柄は本人が75%であった。居住地域は国内外に及んだ。2.疾患では掻痒性疾患が最多で, 相談部位は顔面が多かった。病名記載ありが約7割, 受診経験ありが約6割を占めた。主な相談内容は, 治療法の検索(88件), 詳しい疾患の説明を希望(59件), 治療法の正当性(53件)についてであった。3.アトピー性皮膚炎では, 治療法の検索(21件), 薬の情報を希望(17件), 腫瘍では, 詳しい疾患の説明を希望(13件), 治療法の検索(10件), 毛包炎では, 治療法の検索(10件), 日常生活指導を希望(6件)が多かった。以上の結果から皮膚科外来におけるニーズの多様化が明らかになり, 電子メールを媒体としたセルフケア支援の展望が示唆された。
著者
近藤 由香 京田 亜由美 塚越 徳子 瀬沼 麻衣子 二渡 玉江
出版者
国立大学法人 群馬大学大学院保健学研究科
雑誌
群馬保健学研究 (ISSN:13434179)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.1-10, 2022 (Released:2022-04-01)
参考文献数
34

本研究の目的はがん患者自身が抱える親に対する悩み事について文献検討より明らかにすることである。医学中央雑誌を用いて,「がん」「がん患者」「悩み」「思い」「家族への思い」「苦痛」「負担」「親」のキーワードで検索を行った。がん患者自身が抱える親に対する悩み事については,内容分析の手法を用いて,サブカテゴリ,カテゴリへと抽象化した。 分析対象文献は16件であった。がん患者自身が抱える親に対する悩み事は,60コード,19サブカテゴリ,【親に自身の心身のサポートを担わせる悩み】【親に余計な負担をかけないための苦慮】【親の介護や健康への心配】【親に病気のことを伝えなければならない重荷】【子としての役割が果たせない申し訳なさ】の5カテゴリが形成された。がん患者は,親に自身の心身のサポートを担わせる悩みを抱いているが,子どもとして親に甘えたい気持ちと,子どもとして親を支えないといけない気持ちの両側面があることが示唆された。看護師は他職種と連携して,患者が求める社会資源を活用できるよう支援していくことが必要である。
著者
黒岩 めぐみ 金泉 志保美
出版者
国立大学法人 群馬大学大学院保健学研究科
雑誌
群馬保健学研究 (ISSN:13434179)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.1-7, 2020 (Released:2020-04-27)
参考文献数
9

本研究は、病気や障害をもつ子どものきょうだい児に対して行われている支援に関する研究の動向を明らかにし、今後の研究課題を検討することを目的とした。医学中央雑誌Web(Ver.5)を用いて2010年~2019年の文献を検索し、14件を対象に分析した。研究対象は看護師が最も多く、きょうだい児を直接対象として調査・分析している研究は3件と少なかった。NICUを対象とした研究は2件であった。対象文献の研究内容をコード化し、類似性に従って分類した結果、【きょうだい児への具体的な介入の実施とその評価】【看護師をはじめとする医療者が行っているきょうだい児への支援の現状】【家族からきょうだい児に対して行われた情報提供に関する研究】【母親の認識するきょうだい児の面会により得られる効果】の4カテゴリが形成された。今後の課題として、きょうだい児への直接的な支援が積極的に行われること、NICUにおけるきょうだい面会の推進およびきょうだい児の反応を明らかにすることの必要性が示唆された。
著者
石田 和子 中村 美代子 森田 久美子 茂呂 木綿子 神田 清子
出版者
群馬大学
雑誌
群馬保健学紀要 (ISSN:13434179)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.7-13, 2001-03

骨髄移植を受けた患者家族の不安構造を分析し, 骨髄移植の治療過程の中での家族の関わりを明らかにすることを目的に研究を行った。対象は同種骨髄移植を受けた患者家族6名であり, 半構成的面接法により1回につき30分から60分の面接を行った。面接内容は移植決定から無菌室退室後の不安について3期に分け逐語録に起こし分析した。その結果, (1)移植を決定した時から無菌室入室までの不安は「病名を聞いた時の衝撃」「病気, 移植に関する知識不足」「病気, 移植に関連した情報探求行動」「ドナーが見つかった安心感」「ドナーの骨髄採取術への不安」(2)無菌室入室時から退室までの不安は「患者のそばで直接的に役立てないことへの無力感」「いてもたってもいられない行動「再発, 死への不安」(3)無菌室退室後の不安は「思った以上の回復」「生きていてくれるだけで十分」「生活のすべてが悪化するのではないかという不安」「安心する要因」の12のカテゴリーが抽出できた。以上のことより, 骨髄移植を受ける家族には患者が無菌室入室中は無力感を強く抱いており, 見守ることも一大切な役割であることを支持する必要がある。また, 退院後の家族は, 患者が生存していること自体に感謝していることが明らかにされた。看護婦は家族の不安を受け止め, それぞれの段階に応じた家族援助を行うことが示唆された。
著者
内田 陽子 新井 明子 小泉 美佐子
出版者
群馬大学
雑誌
群馬保健学紀要 (ISSN:13434179)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.81-87, 2006-03

本研究の目的は,老年実習における学生のヒアリハットの場面と内容を明らかにし,教育方法を検討することである。対象は協力の得られた本学6期生75人であり,実習中にヒアリハット体験を調査票に記載してもらった。結果,以下のことが明らかになった。1.関連するリスクは転倒・転落が一番多く,ついで誤嚥,外傷,利用者取り違え等であった。2.ヒアリハット体験場面は,入浴,食事,排准などの日常生活援助場面が多く占めた。3.ヒアリハットの件数に比べ教員や職員に対する報告件数は少なかった。対策として学生の確認や技術練習を重ねるとともに,事前に予測されるリスク表を手渡し,実習中に確認させる。実習中にいつでも教員や職員に相談,確認できる体制を整えることが必要と考えた。
著者
内田 陽子 新井 明子 小泉 美佐子
出版者
群馬大学
雑誌
群馬保健学紀要 (ISSN:13434179)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.93-103, 2005-03
被引用文献数
3

本研究の目的は群馬大学医学部保健学科での老年看護学実習の評価を行い,学生の高齢者に対する看護実践のやる気を高める条件を明らかにすることである。対象は2004年5月から7月にかけてS介護老人保健施設で実習をした39人の本大学の学生である。調査は学生の実習終了最終日に学生に質問紙を配布し,各自記入をしてもらった。質問紙の主な調査項目は,(1)学生の高齢者看護実践のやる気の程度と,それに影響する条件として(2)学生の背景条件,(3)受け持ち高齢者の背景条件,(4)実習における学習の程度に関する項目を設定した。結果,1,学生にとって受け持ち高齢者へのアセスメントや看護実践に対しては教員が,他の高齢者に対する看護実践では看護師が有効であると認識していた。 2,学生の看護過程や技術に対しての自己評価は高かった。3,痴呆棟に実習に行った学生のほうが,高齢者から拒否された経験が生かされ関わる自信がついていた。4,学生の今後の高齢者に対する看護実践のやる気と有意な正の相関がみられた項目は,「アセスメントができた」,「実習が楽しかった」,「介護老人保健施設に就職したい」,「元来実習が好きである」,「受け持ち高齢者に拒否された経験があった」,「受け持ち高齢者に対する看護技術の実践」であった。「受け持ち高齢者の排泄が自立している」については負の相関がみられた。5,学生のやる気はグループ毎に相違があり,最も有効なやる気を高める条件は「実習が楽しかった」であった。痴呆高齢者に拒否されても,日々のケアのなかで患者と分かり合えることを促す指導を実践していくことが求められる。教員は授業としての実習を展開するなかで,学生の気持ちや表情を観察し,学生が問題解決のどの過程にあるか,満足いく実習ができているか常に確認していく必要がある。
著者
石田 和子 下田 薫 中村 美代子 神田 清子
出版者
群馬大学
雑誌
群馬保健学紀要 (ISSN:13434179)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.41-47, 2000-03

骨髄移植を受けた患者が退院後抱える適応問題を分析し,入院中における効果的な看護介入の方法を明らかにすることを目的に研究を行った。村象は同種骨髄移植を受けた40歳代の男性患者3名であり,半構成的面接法により1回につき30分から60分の面接を行った。面接内容を逐語録に起こし,ロイの適応モデルの自己概念様式,役割機能様式,相互依存様式を用いて分析した。その結果,自己概念様式としては「死への恐怖」「再発への不安」「夫婦関係」の3カテゴリーが抽出された。また役割機能様式では「経済的問題」「役割の変化」の2カテゴリー,相互依存様式では「食事に対する不満」「趣味の変化」の2カテゴリーが導き出された。以上のことより,1.「死への恐怖」「再発への不安」は病名告知時,移植を受容する時,移植後まで引き続く問題であり,患者とともに話し合い,患者の立場で生きる希望を失わず,頑張れるよう精神的な支えになることが必要である。2.「夫婦関係」「経済的な問題」「役割の変化」「食事に村する不満」「趣味の変化」は退院直後からの問題であり,家族を含む個別的な指導が必要であり問題が継続しないよう,患者と話し合うことが大切である。など有効な看護介入が示唆された。
著者
沼田 加代
出版者
群馬大学
雑誌
群馬保健学紀要 (ISSN:13434179)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.15-24, 2005-03
被引用文献数
2

本研究の目的は,育児グループを行政主催型育児グループと自主型育児グループとに分け,母親の育児不安の内容と育児グループの効果を検討することである。対象は,M市内の育児グループヘの参加者のうち,乳幼児を持つ母親8名ずつの計16名である。研究方法は,対象者である母親に半構成的面接法を実施し,その内容を質的に分析した。面接内容は,基本属性,育児不安の内容,育児グループ参加の効果,子どもおよび母親の育児面の変化,専門職との関わり状況等である。結果,母親の年齢は26〜38歳,子どもの年齢は1〜5歳であった。育児不安の内容は,「兄弟姉妹による育児の相違」,「夫や周囲からの協力不足」があげられた。育児グループ参加による効果については,行政主催型育児グループと自主型育児グループに共通した内容は,「友達が増える場」であった。さらに,行政主催型育児グループのみにあげられた効果は,「相談ができる場」,「遊び場・機会の確保」,「遊びを教えてもらえる場」,「気を紛らわす場」などであった。自主型育児グループのみにあげられた効果は,「交流の場」,「作り物ができる場」,「情報が得られる場」,「視野が広がる場」などであった。これらのことから,行政主催型育児グループは,保健師などの専門職との具体的な相談の場を求めており,自主型育児グループは,母親同士の交流をはかりながら自分たちの創作活動をする場を求めていたといえる。
著者
綿貫 早美 狩野 太郎 亀山 絹代 筑井 夕佳織 諸田 了子 中野 良子 神田 清子
出版者
群馬大学
雑誌
群馬保健学紀要 (ISSN:13434179)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.109-116, 2003-03
被引用文献数
3 1

術後せん妄は重大な医療事故につながる合併症である。術後せん妄は医師と看護師が共に責任を持つべき問題であるが,高齢者の術後せん妄予防に向けた看護介入を検討した報告は少ない。今回我々はせん妄の発症率,発症時期,症状,発症因子を分析した。対象と方法:1998年〜2000年の3年間に当院泌尿器科で手術を受けた65歳以上の高齢者502人を対象に,カルテ及び看護記録から遡及的にデータ収集を行った。収集したデータをもとに術後せん妄発症率及び発症のピーク時期,症状などを分析した。また,502人中,せん妄を発症した22人を「せん妄群」とし,せん妄群と性,年齢,術式,麻酔の種類を一致させた22人を抽出し「非せん妄群」とした。せん妄群と非せん妄群を比較しせん妄発症に関連する要因を分析した。結果:せん妄の発症率は腰椎麻酔患者で2.2%,全身麻酔患者で17.1%だった。術後せん妄の発症ピークは,全身麻酔患者で術後2-3日目,腰椎麻酔患者で術当日の夜だった。せん妄の発症に関連する要因として,1)不眠・昼夜逆転 2)視聴覚障害 3)鎮痛・鎮静剤の使用が明らかとなった。結論:術後せん妄予防のため,術後早期から睡眠の援助,眼鏡や補聴器の使用,鎮痛・鎮静剤の適正使用の援助を実施することの重要性が示唆された。
著者
大山 ちあき 狩野 太郎 神田 清子
出版者
群馬大学
雑誌
群馬保健学紀要 (ISSN:13434179)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.39-44, 2001-03

本研究の目的は, がん専門病院と一般病院のがん告知に関する考え方の違いを明らかにすることである。対象はがん専門病院に入院中のがん患者186名と, 10施設の一般病院に入院中のがん患者412名であった。医師の告知状況, 病名告知についての看護者の考え方などについて, 平成11年10月1日に病棟責任者記載による一斉調査を行った。その結果, 医師の告知状況は, 「がんまたは悪性腫瘍」として真実を告げている割合が, がん専門病院では84.4%であり, 一般病院の54.1%に比べると約30.0%高くなっていた。看護者が望む病名告知も医師と同様の結果であった。がん告知に対する看護者の考慮する点は, がん専門病院・一般病院ともに「病期・予後」を最優先にしていた。がん専門病院の看護者は「患者の知る権利」「患者の希望」を大切にしていた。一方, 一般病院の看護者は「家族の希望」を優先していた。以上の結果より, がん専門病院と一般病院では, がん告知に対する看護者の姿勢に明らかな違いが見られた。今後, 一般病院では看護者・医師ともに, 患者の意思を尊重した告知のあり方を, 病院独自の方法で検討していく必要性が示唆された。
著者
神田 清子 飯田 苗恵 狩野 太郎
出版者
群馬大学医学部保健学科
雑誌
群馬保健学紀要 (ISSN:13434179)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.25-31, 2000
被引用文献数
2

本研究の目的は, 化学療法に伴うがん患者の味覚変化に対する看護者のアセスメントとその介入の実態を明らかにすることである。対象は, 全国の500病院で働く病棟の副婦長1000名であり, 郵送法による質問紙調査を施行した。回収は634名(回収率63.0%)であり, 記入不備などを除く568名を分析した。味覚変化のアセスメントは, 「患者からの訴え」による方法がもっとも多く87.0%, 次いで「食事嗜好の変化との関連」57.6%であった。各項目に対する介入の割合は, アセスメントの割合に比べて低くなっていた。介