- 著者
-
大島 利夫
- 出版者
- 公益財団法人 日本感染症医薬品協会
- 雑誌
- The Japanese Journal of Antibiotics (ISSN:03682781)
- 巻号頁・発行日
- vol.50, no.11, pp.855-861, 1997-11-25 (Released:2013-05-17)
- 参考文献数
- 21
平成8年7月に大阪府堺市で発生した腸管出血性大腸菌による集団下痢症に際し, ベルランド総合病院小児科で外来患者788例, 入院患者88例を扱い, 入院例を中心に溶血性尿毒症症候群(HUS)合併の予期因子を検討した。当院では入院, 外来の全例に抗菌薬 (ホスホマイシン) を投与し, HUS合併率は1.4%と低率であった。入院症例の検討で, 腹痛持続日数では有意差がなかったが, 血便持続日数, 下痢持続日数の検討では合併症例が非合併症例よりも長い傾向があった。入院時15,000/μl以上の白血球増多のある例, CRP2.0mg/dl以上の例でもHUS合併が多かった。経過中に発熱があった例, 嘔吐を伴った例でもHUS合併が多い傾向があった。不完全HUS, 腎症, LDH高値, 血小板減少, 乳幼児といったHUS合併のリスクが高いと考えられる34例に, γ-グロブリン, ウリナスタチン, アスピリン, ジピリダモールからなる「早期集約的治療」を行い, 臨床的に有効と思われた。