著者
鈴木 一郎 正津 晃 井上 宏司 中島 功 猪口 貞樹 上田 守三 大谷 泰雄 三冨 利夫 相川 浩幸 重田 定義
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科医学会雑誌 (ISSN:03869776)
巻号頁・発行日
vol.51, no.5, pp.917-924, 1990-05-25 (Released:2009-04-21)
参考文献数
22

東海大学病院開設以来14年間に散弾銃銃創8例を経験した.8例とも男性で,事故による被弾であり,全例に入院を要した.2例は血気胸のため胸腔ドレーンを挿入,1例は視神経に隣接した散弾による視力障害のために開頭術,1例は膝関節貫通損傷にて大腿骨・経骨の部分切除を行った.死亡例はない.試験開胸や試験開腹術を要した症例はない. 1例は創感染を生じたが治療により改善し,他の7例には早期・晩期のいずれにおいても感染はなかった. 体内に残留した散弾の完全除去は非常に困難であり,しかも不必要である.ただし,鉛は関節滑液に溶解しやすく,周囲組織に沈着しやすいので,関節内の散弾や関節周囲の偽嚢胞は除去しなければならない. 体内遺残散弾による急性鉛中毒は非常に稀であり,受傷後最長13年8ヵ月を経過しているが,未だ本症を疑わせる症例はない.
著者
加藤 暢介 増田 良太 西海 昇 加賀 基知三 猪口 貞樹 岩崎 正之
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.76, no.1, pp.146-149, 2015 (Released:2015-07-31)
参考文献数
12

散弾銃損傷に対し,重症度から腹部の緊急手術と胸部の待機手術に分けて施行し良好な経過を得た症例を経験した.症例は60歳の男性.キジ狩り中に誤射を受け被弾した.胸部単純X線写真で左側胸腹部に計39個の散弾を確認した.胸部CT写真は銃弾の軌道に沿った左肺挫創と左血気胸を認めた.左胸腔ドレーン挿入時に一過性の気瘻と100mlの血性排液を認め,消化管損傷の可能性を優先し,緊急試験開腹手術を施行した.胸部37個の弾丸のうち合計23個が残ったが,血中鉛濃度の上昇を認めたため,18病日に肺内,心嚢内,左胸部皮下脂肪層・筋層内の銃弾を摘出した.血中鉛濃度は17病日に12.0ug/dlまで上昇したが,以後下降し受傷1カ月後は9.9ug/dlとなり,以後低値となった.散弾銃は,銃創による臓器損傷と体内遺残散弾による鉛中毒に注意が必要である.出血や重篤な臓器損傷がなければ鉛中毒予防のため散弾除去は待機手術で良い.
著者
山本 理絵 斉藤 剛 青木 弘道 飯塚 進一 秋枝 一基 猪口 貞樹
出版者
一般社団法人 日本救急医学会
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.25, no.12, pp.865-873, 2014-12-15 (Released:2015-03-12)
参考文献数
20
被引用文献数
2 2

急性薬物中毒は救急医療において重要な分野の一つであり,起因物質の特定は治療を行う上で極めて重要である。厚労省により薬毒物分析機器の配置が行われてきたが,機器による分析は難しく,簡便かつ迅速な検査法として尿中薬物簡易スクリーニングキットが多くの医療機関で使用されている。しかし,尿中薬物簡易スクリーニングキットは分析対象が限定され検出不能な薬物があること,体内動態や交差反応による陽性や感度不足による陰性があることから,薬物の特定には定量分析が必要となる。本研究では,ガスクロマトグラフ質量分析装置(gas chromatograph mass spectrometer: GC/MS)や液体クロマトグラフ質量分析装置(liquid chromatography-tandem mass spectrometer: LC-MS/MS)による血中薬物の定量分析結果をgolden standardとして,当院で使用している尿中薬物簡易スクリーニングキットTriage DOA® の臨床的有用性について検討した。2009年4月~2013年3月までに当施設を受診し入院となり,Triage DOA® と定量分析の双方を施行した急性薬物中毒822例を研究対象とした。ベンゾジアゼピン系睡眠薬およびベンゾジアゼピン系抗不安薬(BZO),バルビツール酸系睡眠薬(BAR),三環系抗うつ薬(TCA),アンフェタミン系覚醒剤(AMP)に対するTriage DOA® の感度,特異度,陽性的中率,陰性的中率,偽陽性率,偽陰性率について検討した。検討の結果,Triage DOA® にはいくつかの問題はあるが,救急初期治療の一次スクリーニング検査としては有用であった。しかし,TCA,AMPの陽性的中率は低く,BZOは陰性的中率が低いことから,救急現場ではTriage DOA® の解釈には十分な注意が必要である。また,近年本邦では尿中薬物簡易スクリーニングキットでは検出できない抗精神病薬やselective serotonin reuptake inhibitor,serotonin and norepinephrine reuptake inhibitorなどの抗うつ薬が数多く使われている。尿中薬物簡易スクリーニングキットで陰性でもこれらの薬物を服用している可能性を念頭に置いて初期治療を行う必要がある。
著者
中島 功 大塚 洋幸 市村 篤 本多 ゆみえ 梅澤 和夫 関 知子 中川 儀英 猪口 貞樹
出版者
日本救急医学会関東地方会
雑誌
日本救急医学会関東地方会雑誌 (ISSN:0287301X)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.219-224, 2020-03-31 (Released:2020-03-31)
参考文献数
5

家禽や野鳥が保有する低病原性鳥インフルエンザウイルスであってもヒトが死に至る例が報告されており, これまで定説となっていた豚由来のウイルス感染とは違うルートが推測される。鳥からヒトへの感染に関する最近の文献調査, およびモンゴルへの調査視察を踏まえ鳥から直接感染するインフルエンザの動向を本稿では報告する。アザラシのインフルエンザ, 日本のイノシシのインフルエンザ, 豚便所, 北米大陸における豚のインフルエンザ, H7N9の動向, スペイン風邪, シアル酸レセプタなどを文献調査した。その結果, ヒト側の遺伝子の発現の仕方の違い (シアル酸レセプタ), ウイルス側遺伝子再集合, RNAポリメラーゼの読み違いなどにより, 鳥型インフルエンザが直接ヒトに感染し, 重篤な症状を引き起こす可能性がある。臨床医としてこれらの報告を鑑み, 患者の感染ルートには常に十分な注意を払うべきと考える。
著者
武田 道寛 西野 智哉 滝沢 志絵 櫻井 馨士 若井 慎二郎 守田 誠司 中川 儀英 猪口 貞樹
出版者
日本救急医学会関東地方会
雑誌
日本救急医学会関東地方会雑誌 (ISSN:0287301X)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.326-328, 2020-03-31 (Released:2020-03-31)
参考文献数
11

浸水性肺水腫 (immersion pulmonary edema, 以下IPE) は, 本邦での報告例はいまだ少ないため認知度が低い。症例は既往のない50歳代女性で, 潜水中に呼吸困難を自覚し救急要請された。救急隊接触時の動脈血酸素飽和度は80% (室内気) であり, 来院時は両側肺野に水泡音を聴取し, 重度の低酸素血症と肺水腫を呈していた。心電図, 心臓超音波検査では心原性を示唆する所見は認めなかった。意識清明であったため, 非侵襲的陽圧換気 (noninvasive positive pressure ventilation, 以下NPPV) による治療を開始したところ速やかに自覚症状と酸素化は改善した。チョークスや動脈空気塞栓症を疑う所見に乏しく, また海水誤嚥のエピソードもなかったため, IPEの可能性が高いと考えられた。
著者
高沢 研丞 梅澤 和夫 関 知子 守田 誠司 中川 儀英 山本 五十年 猪口 貞樹
出版者
Japanese Association for Acute Medicine
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.15, no.5, pp.185-189, 2004-05-15 (Released:2009-03-27)
参考文献数
14

A 62-year-old woman was transferred to our hospital complaining of nausea, vomiting and acute abdominal pain four hours after the ingestion of wild grass. Her initial systolic blood pressure was 60mmHg and her heart rate was 40beats/min. Her vital signs improved following the administration of atropine sulfate and dopamine. Since the species of the ingested plant was not known at the time of admission, hemoperfusion and hemodialysis appeared to be the best methods of treatment. On the next day, her vital signs stabilized and her complaints were alleviated. The plant was later revealed to be Veratrum album. Veratrum album is a toxic wild plant that is frequently encountered in Japan and is often mistaken for Hosta sieboldiana. Since acute intoxication by veratrum alkaloids may cause severe parasympathetic symptoms, including profound hypotension and bradycardia, early recognition and treatment are required.
著者
網野 真理 吉岡 公一郎 鈴木 陽介 上村 春良 福嶋 友一 櫻井 馨士 守田 誠司 大塚 洋幸 中川 儀英 山本 五十年 児玉 逸雄 猪口 貞樹 田邉 晃久
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.41, no.SUPPL.3, pp.S3_138-S3_138, 2009 (Released:2015-01-23)

本邦においては硫化水素による自殺者が2008年の1年間のみで1,007人にものぼり社会的に深刻な問題になっている. 今回われわれは, 重篤な意識障害と呼吸不全に心筋障害を合併した硫化水素中毒患者の救命に成功し, 心筋障害の回復過程を心臓核医学検査により評価し得たので報告する. 症例は32歳, 男性. 自ら硫化水素を発生させて吸入自殺を図り, 救急車で当院救命センターに搬送された. 来院時の身体所見では, 除脳硬直肢位, 口唇のラベンダーブルー斑, 腐卵臭を呈し, 両側肺野では湿性ラ音が聴取された. 硫化水素中毒に伴う意識障害, 呼吸不全, 肺炎, 横紋筋融解症と診断し, 人工呼吸器管理, 高濃度酸素投与にて集中治療室へ入院. 第2病日には肺炎による敗血症性ショックを発症, 第3病日には横紋筋融解症の進行と心筋障害の新規出現が認められた. さらに第5病日には心原性ショック, 肺水腫が出現したが, 第7病日には人工呼吸器からの離脱に成功した. 第14病日は心筋血流イメージとして99mTc-tetrofosmin (TF), 心筋脂肪酸代謝イメージとして123I-BMIPP, 心臓交感神経イメージとして123I-MIBGを施行可能であった. TF, BMIPPでは前壁の一部, 下壁~後壁における集積低下が認められ, MIBGでは高度交感神経障害が示唆された. 同時期に施行した冠動脈CTにおいて冠動脈の有意狭窄はなかった. 心筋障害に対する内服加療としてカルベジロールおよびエナラプリルを投与し, 第38病日に退院となった. 受傷6カ月後の心電図および心臓超音波検査では, 左室壁運動は正常化し心臓核医学検査ではTF, BMIPPにおける前壁, 下壁~後壁の集積低下は改善した. MIBGにおいては, wash out rateは改善した. 以上の臨床経過から, 内因性の急性心筋梗塞, たこつぼ心筋症, 急性心筋炎の可能性は低く, 硫化水素による心筋障害と考えられた. 本症例は重篤な硫化水素中毒からの急性期離脱後, およそ6カ月の経過を経て心筋障害の改善傾向を示した貴重な症例である.
著者
中島 功 猪口 貞樹 木ノ上 高章 片山 正昭 尾崎 清明
出版者
東海大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2009

位置情報と個体識別ができるS帯2.4-500kbps伝送速度の鳥装着用パケット送受信機の開発し、総務省の型式認定を申請した。山階鳥類研究所で渡り鳥に装着し、その鳥がわが国に帰還すれば、データが採取でき危機管理に役立てる。H5N1の感染地域、ロシア、モンゴルでの鳥インフルエンザ関連の生態環境、電波伝搬環境を分析し、将来の危機管理としての鳥インフルエンザ予防に役立てる統合研究をおこなった。