著者
浅野 智也 伊藤 慎英 大島 埴生 山岡 未奈 池田 直樹 米廣 幸平
出版者
一般社団法人日本理学療法学会連合
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.396-403, 2021 (Released:2021-08-20)
参考文献数
18

【目的】慢性期脳卒中患者を対象に,運動療法と歩行練習ロボットGait Exercise Assist Robot(以下,GEAR)を併用した低頻度練習による効果を検証した。【方法】対象は,47 歳男性で発症後13 ヵ月の脳卒中右片麻痺患者1 名とした。研究はABAB 型シングルケースデザインを用いた。A 期を運動療法と通常歩行練習を行う従来練習期とし,B 期を運動療法とGEAR を用いた歩行練習を行うGEAR 練習期とした。両期ともに週2 回の練習頻度で4 週間の練習期間とした。介入期間は計16 週間とした。評価は歩行速度・歩幅・歩行率,身体・認知機能と歩容とした。【結果】歩行速度は初回GEAR 練習期・2 回目GEAR 練習期に向上し,歩行率は2 回目GEAR 練習期に増加し,歩容は介入期間の前後で改善した。【結論】低頻度条件の運動療法とGEAR 練習の併用によって,慢性期脳卒中患者一例の歩行能力は改善した。
著者
大島 埴生 飯田 淳子 長崎 和則
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2-1, pp.247-258, 2018

本稿は,中途障害者の生活の再編成に関する先行研究を検討したものである.先行研究は,(1)直 接的な援助を想定した援助志向の研究と,(2)当事者の生活をありのままに理解しようとする,当事 者の生活に焦点を当てた研究,(3)両者のいずれにも属さない,障害と社会の関係を問う社会モデル に基づく研究に大別された.さらに,援助志向の研究は医学モデルと生活モデルに基づく研究があっ た.医学モデルに基づく研究は中途障害者の生活の再編成を個人の問題として,生活モデルに基づく 研究は個人と環境を含めた問題として,そして社会モデルに基づく研究は社会の問題として捉えてい る.当事者の生活に焦点を当てた研究は,インペアメントに伴う体験に関する研究と個人史に着目し た研究があり,前者は短期的な生活を,後者は中長期的な人生を扱う傾向がある.これらの先行研究 の課題としては,第一に一部の中途障害の研究で社会モデルの観点がほとんど採用されていない点, 第二に研究対象者が豊富な語りをもつ人に限定されている点,第三に短期的な生活と中長期的な人生 の関係性が捉えにくい点がある.今後はこれらの課題を踏まえ,語りの聴き取りのみならず,生活の 観察も行うことにより,従来の研究の俎上に上がってこない人々の体験を,社会的状況と人生史の文 脈のなかで考察し,中途障害者の生活の再編成過程を描写していくような研究が求められる.
著者
大島 埴生 沖田 一彦
出版者
県立広島大学
雑誌
人間と科学 : 県立広島大学保健福祉学部誌 (ISSN:13463217)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.35-42, 2019-03

患者-理学療法士(PT)認識の齟齬がどのような要素で,なぜ起こるのかをあきらかにするため,両者にインタビュー実施し,その内容を質的に分析した。対象は回復期リハビリテーション病棟に入院している脳卒中片麻痺者4名とその担当PTとした。半構造化インタビューを入院から一ヶ月毎に縦断的に計3回実施した。患者とPTの齟齬は主に[身体性(embodiment)]と[生活(life)]において生じていた。[身体性]については〈身体の認識〉と〈良くなるという実感〉の相違により,[生活]については〈リスク認知〉と〈生活についての合理的判断〉の相違から構成されていた。そして,患者はインタビュー初期の頃は,主に[身体性]について語り,時間とともに徐々に[生活]に語りの軸が移っていく傾向にあった。これらの齟齬は[体験の共有不可能性]に由来していた。PTには,認識の齟齬を自覚し,患者の認識も体験に基づくものであると認め,相対的に捉える姿勢が求められる。原著