著者
多田 ゆりえ 細羽 竜也
出版者
県立広島大学
雑誌
人間と科学 : 県立広島大学保健福祉学部誌 = Humanity and science : journal of the Faculty of Health and Welfare (ISSN:13463217)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.51-58, 2018-03

本研究では就労継続支援A型事業所を利用している精神障害者が一般就労への移行にどの程度関心を持っているかの実情を検討した。方法として,A型事業所を利用している精神障害者3名に,A型の利用目的と利用状況についてインタビューを行った。厚生労働省の方針である「一般就労への移行」を支援するA型の機能を中心に,調査協力者の就労ニーズを検討した。3名中2名はA型の利用にあたり一般就労への移行に関心を持っていたが,家庭の事情や今の職場の人間関係のよさから離れがたい気持ち,また新しい環境への不安などの理由から一般就労への移行を躊躇しているケースもあった。一般就労への移行としてのA 型の機能に重点を置く際には,利用者個々人の事情に対して,より細やかな支援が必要になると考えられる。This study conducted a preliminary examination to measure the interest toward facilitating regular employment for workers who use continued support for employment Type A. To conduct this examination, three mentally disabled workers who use continued employment support for employment Type A were interviewed about the purpose of their Type A employment, work space, and condition. With a focus on the function of employment Type A, which is to support "facilitating regular employment" according to the Ministry of Health, Labour and Welfare, the three interviewees' employment needs were examined. Two of the three showed interest in the facilitation of regular employment; however, they were hesitant because of some private issues, the good human relations present in their current work spaces, and anxiety about working in a new place. The Ministry of Health, Labour and Welfare wants to advocate the importance of facilitating regular employment; however, only promoting it is not enough. It may be necessary to support workers in tackling their individual issues as well.報告
著者
沖田 一彦 田端 幸枝 越智 淳子 吉田 彰
出版者
県立広島大学
雑誌
広島県立保健福祉大学誌人間と科学 (ISSN:13463217)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.87-95, 2004-03

学生が, 専門科目に関してレポートや卒業論文を作成するときには, さまざまな学術資料を検索する。その場合, 和雑誌に掲載された論文の検索には医学中央雑誌 Web のデータベース利用が主となっているが, 本学ではその利用頻度の高さと契約口数の少なさから, 利用が集中した場合には検索が行えないこともある。また, 卒後の教育を考えたとき, 医学中央雑誌 Web のデータベース利用は限られた施設でのみ可能である。これらのことから, 学生の在学時および卒後の学習や研究を支えるため, 試験的に理学療法及び作業療法に関わる文献検索システムの構築を試みた。本領域の学術・商業雑誌計6誌の書誌情報をデータベース化し, 学内LANから Web ブラウザにより, サーバ上のデータベースにアクセスして文献検索ができるようにした。検索条件には学術論文の場合はキーワード, 見出し, 表題, 著者, 発行年, 巻, 号を用いた。本システムは, 現在は学内LANからのアクセスに限られているが学外からの利用もできるよう構築されているため, 今後は公開利用の可能性を模索したい。
著者
野村 幸子 河上 智香 長谷 典子 藤原 千恵子
出版者
県立広島大学
雑誌
人間と科学 : 県立広島大学保健福祉学部誌 (ISSN:13463217)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.169-180, 2007-03
被引用文献数
2

本研究の目的は,入学したばかりで小児看護学受講前の学生は,子どもとの接触体験をどの程度持っているのか,またどのような子どもイメージを持っているのか,子どもとの接触体験は,イメージの形成にどのように影響するのかを明らかにすることであった。対象者は,研究の目的に同意が得られた2大学の1年生143名である。結果は,接触体験で最も多い項目は,「赤ちゃんを抱く」や「子どもとの遊び相手」で世話に関する体験は少なかった。接触体験やきょうだい数が多いほど,子どもの『行動特性』からくるイメージは肯定的となっていた。他のイメージの側面には影響がみられなかった。また接触体験の多さは,子どもへの関心とも関連がなかった。むしろ接触体験が多いと苦手意識になることも示唆された。学生は,子どもへの関心は高いが,そのイメージは,子どもとの浅い関わりや外観から得られるイメージであることがわかった。
著者
西上 忠臣 近藤 敏 北川 美智子
出版者
県立広島大学
雑誌
人間と科学 : 県立広島大学保健福祉学部誌 (ISSN:13463217)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, 2007-03

我々は,広島県三原市内の町内会と連携し高齢者の健康づくりを目的とした作業療法プログラムを行ってきたので効果と本学の連携について報告する。プログラムの参加者は30名(73.2±6.3歳,男性18名,女性12名),介入期間は平成17年7月28日〜12月8日,頻度は2週間に1回,全11回実施した。効果判定には,作業遂行能力を評価するカナダ作業遂行測定(COPM ; Canadian Occupational Performance Measure)と主観的健康観を測定するSF-36を用いた。プログラム終了後に,COPMの遂行度が有意に高く(t=-2.21,p=0.03),SF-36では社会生活機能が有意に高くなっていた(t=-0.61,p=0.02)。今回の作業療法プログラムのノウハウを活かし,地域に還元するため,本年度は三原キャンパス地域連携センターの事業として,学生のボランティアを募り,三原地域連携推進協議会,三原市社会福祉協議会との連携のもとで地域の「いきいきサロン」を支援している。学生という循環型の資源を生かして,地域と本学との交流が学生により行われ,まち作りの役割を担っていくシステム作りをすすめている。
著者
勝見 吉彰
出版者
県立広島大学
雑誌
人間と科学 : 県立広島大学保健福祉学部誌 (ISSN:13463217)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.129-136, 2014-03

ステップファミリーでの生活経験のある青年期女性2名との面接結果を提示し,ステップファミリーにおける親子関係のあり方について,子どもの視点からの検討を行った。提示された2事例では,再婚により新しい関係が始まった時点から,継親との関係は対照的に展開していった。1例目は継父との関係を築くことには消極的で,継父を" 単なる同居人" としか見ていないこと,2例目では継父との関係は初めから肯定的であり,自分の親として認知していることが明らかとなった。いずれの事例においても別れた実親への思いが整理されないままであり,子どもの心の成長という点から,別れた実親をめぐる体験についても家族間で整理される必要性が検討された。親の再婚後に生ずる同居する親との関係の変化に注目することの重要性が指摘された。資料
著者
西田 征治 近藤 敏 西村 玲子 住廣 香里
出版者
県立広島大学
雑誌
人間と科学 (ISSN:13463217)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.63-70, 2011-03

我々は2005 年より三原市における認知症予防教室に参画してきた。本稿ではそのコンセプトと2007年に実施したプログラムと成果を報告する。本教室は,一般市民を対象とした目的型ポピュレーションアプローチにより,参加者の認知症予防行動が習慣化されることや自己効力感を高めることを主な目的としている。そのため,参加者はグループを構成し興味や課題と言った自分たちに何らかの意味のある活動を計画し,実行し,振り返ることを通して,認知症予防のための認知的アプローチの手法を学ぶ。その中で,我々は,彼らのエンパワメント支援を行っている。2007年のプログラムでは参加者の9割が「今までやめていたいことを家でするようになった」,8割が「日常生活でも計画― 実行― 振り返りを意識するようになった」と回答し,行動変容や意識変化の成果が認められた。また,自主化されたグループは2年半経過した現在でも活動を継続している。報告
著者
大島 埴生 沖田 一彦
出版者
県立広島大学
雑誌
人間と科学 : 県立広島大学保健福祉学部誌 (ISSN:13463217)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.35-42, 2019-03

患者-理学療法士(PT)認識の齟齬がどのような要素で,なぜ起こるのかをあきらかにするため,両者にインタビュー実施し,その内容を質的に分析した。対象は回復期リハビリテーション病棟に入院している脳卒中片麻痺者4名とその担当PTとした。半構造化インタビューを入院から一ヶ月毎に縦断的に計3回実施した。患者とPTの齟齬は主に[身体性(embodiment)]と[生活(life)]において生じていた。[身体性]については〈身体の認識〉と〈良くなるという実感〉の相違により,[生活]については〈リスク認知〉と〈生活についての合理的判断〉の相違から構成されていた。そして,患者はインタビュー初期の頃は,主に[身体性]について語り,時間とともに徐々に[生活]に語りの軸が移っていく傾向にあった。これらの齟齬は[体験の共有不可能性]に由来していた。PTには,認識の齟齬を自覚し,患者の認識も体験に基づくものであると認め,相対的に捉える姿勢が求められる。原著
著者
横須賀 俊司
出版者
県立広島大学
雑誌
人間と科学 : 県立広島大学保健福祉学部誌 (ISSN:13463217)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.19-31, 2016-03

日本の自立生活運動は,1970 年代に展開されていた障害者運動が80 年代にアメリカの自立生活運動を受容することで発展していったとされる。しかし,1970 年代から1980 年代に向けて,どのような移行があったのかは明らかではない。アメリカ自立生活運動の成果の一つはアテンダントサービスを定着させたことである。したがって,どのような過程を経て,アテンダントサービスが定着していったのかを記述,考察することで,どのようにアメリカ自立生活運動が受容されていったのかを明らかにすることができる。その際,「第9 回車いす市民全国集会・兵庫」を事例にした。この事例を選んだ理由は,アテンダントサービスを実際に導入していったということによる。結論としては,自立生活運動の理念や思想の普及が必ずしも要件になっていないことが明らかになる。原著
著者
土居 紀子 津森 登志子
出版者
県立広島大学
雑誌
人間と科学 : 県立広島大学保健福祉学部誌 (ISSN:13463217)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.99-106, 2018-03

本研究は助産師の分娩介助技術について視線計測を行い,分娩介助技術を客観的データで表現できるか検討する目的で行った。分娩介助映像を組み込んだ視線解析装置を用いて,分娩介助中の助産師の注視場所,注視時間,視線軌跡等を計測し,それらが分娩進行に伴いどのように変化するかを分析した。その結果,助産師は会陰保護時に児頭と膣口背側縁を含む領域への注視に多くの時間を費やしていることが初めて明らかになった。さらに,分娩進行に伴って助産師の見る領域や見方が有意に異なっていた。これらの結果を助産師へのインタビュー内容等と照らし合わせることにより,分娩介助中の視線データは助産師のアセスメントを反映する可能性が示唆された。今後データを蓄積し,さらに解析を深めることにより,視線データを熟練助産師の技術の可視化やそれを利用した助産教育に活用しうる可能性が期待される。This study aimed to evaluate the delivery skills of midwives through gaze-tracking measurements and to determine whether delivery skills could be expressed using objective data. Using a gaze analysis device incorporated into delivery video equipment, we recorded eye fixation locations, duration of gaze, and scanpaths in midwives during deliveries and analyzed how these changed as delivery progressed. The results clearly showed that during perineal protection, midwives spend much time focusing on the region that includes the baby's head and the posterior border of the vaginal orifice. Furthermore, as delivery progressed, the regions on which the midwives focused and the viewing angles changed significantly. This suggests that gaze-tracking data from deliveries could be incorporated into midwife assessment by cross-checking the results with the content of interviews with midwives. The accumulated gaze-tracking data and more detailed analysis can be used to evaluate the skills of experienced midwives. In addition, the data can be utilized in midwife training.資料
著者
玉井 ふみ 堀江 真由美 寺脇 希 村松 文美
出版者
県立広島大学
雑誌
人間と科学 (ISSN:13463217)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.103-112, 2011-03

保育士の視点から発達の気になる就学前児の行動特性を明らかにすることを目的に,就学前の子どもを対象として開発した発達質問紙の「行動2」,気になる子どもに関する自由記述,「子どもの強さと困難さアンケート(SDQ)」について検討した。なお,「行動2」は不注意,多動・衝動性,柔軟性の乏しさ,興味の偏りなど発達障害にみられる行動特性を示す項目で構成されている。SDQ による評価では,保育士が「気になる子ども」53名のうち50名が少なくとも1つ以上のサブカテゴリーで支援の必要性がHigh Needであり,とくに「行為面」,「多動・不注意」,「向社会性」に支援の必要性が高い子どもが多かった。「気になる子ども」と対照群の子どもの「行動2」の項目の出現率を比較すると,8項目中6項目で「気になる子ども」の方が高かった。多動・不注意を含む行動の問題や社会性の問題が保育上の課題として捉えられる傾向が示唆された。The purpose of this study is to investigate the behavioral characteristics of preschool children with special needs from the point of view of nursery school teachers. The children were assessed with a developmental questionnaire using a checklist of behavioral problems, such as attention defi cit, hyperactivity, in 5 to 6-year-old children. In addition, nursery school teachers were asked to describe behaviors which they pay attention to when observing behaviors of children. Behavioral screening was administered to children with special needs using the Strengths and Difficulties Questionnaire. Fifty children among fifty three children had high need in at least one subscale in SDQ. High scores derived from conduct problems, hyperactivity/inattention, prosocial behavior. It was suggested that special needs were related to behavioral problems and social skills.報告Reports
著者
三好 さち子 大津 廣子 望月 章子 浅井 優子 南 美智子 今西 芳子 大平 政子
出版者
県立広島大学
雑誌
広島県立保健福祉大学誌人間と科学 (ISSN:13463217)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.27-35, 2003-03
被引用文献数
2

本研究の目的は,ある看護行為の実施過程における意思決定プロセスを明らかにすることである。同意の得られた34名の病院勤務看護師が,模擬患者(65歳,女性,脳梗塞・左片麻痺,仰臥位で寝ている,背部痛を訴えている。)への看護行為の実施過程での意思決定プロセスを分析した。データ収集は,半構成的面接法と看護行為のVTR撮影,自記式質問紙を用いて行った。分析は質的,帰納的な分析方法を用いた。その結果,次のことが明らかになった。(1)看護行為の選定過程では,患者の主観的な訴えを重視して看護行為を選定している。(2)必要な観察項目では,身体状況に視点をあてた観察を重要視している。(3)看護行為実施時の看護師の問題認知と仮説設定の思考プロセスは,症状などの現象を問題と認知し,身体内部の変化に着眼しており,心理的側面までを読み取った対応をしていない。
著者
加藤 一生
出版者
県立広島大学
雑誌
広島県立保健福祉大学誌人間と科学 (ISSN:13463217)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.9-20, 2004-03

広島原爆に遠距離で被爆した花嵐岩中に自然発生した長寿命核種^<36>Cl (半減期3×10^5年) の量の正確な推定を行う上で必要となる情報を得るために, カリウム (K), ウラニウム (U) ならびにトリウム (Th) 含有率を天然放射性同位元素からのガンマ線測定を行い定量した。非被爆花嵐岩中のU, ThならびにKも定量し, それらが広島周辺の岩盤ごとにどのように変わるか調べた。定量結果から, たとえば愛媛県の伊予大島からの伊予石におけるKの含有率は広島市に近い倉橋島の議院石の含有率に比べて低い, などいくつかの興味深い事柄が分かった。議院石採石場の山頂近くにあった大きな岩盤の様々な深さから採取した17個の測定結果から, UとTh含有率が岩盤のある小さな部分で極めて高いことが分かった。その最大値はUの6.5ppm, そしてThの55ppmである。このことから, UとThの含有率は議院石採石場の中の位置によってかなり変化することが推察された。
著者
安武 繁 蔵本 美代子 松浦 幸重 森岡 久美子 平井 ひとみ 武田 由美子 桐山 美紀子
出版者
県立広島大学
雑誌
人間と科学 : 県立広島大学保健福祉学部誌 (ISSN:13463217)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.83-90, 2006-03

近年,10代の性感染症や人工妊娠中絶の増加が思春期保健の緊急課題となっている。そこで,学校保健と地域保健が連携した「生と性の健康教育」推進システムを構築した。まず,学校を対象として「生と性の健康教育」に関する実態調査を行い,関係機関から成る検討委員会を開催した。次に,保健所管内3地域で年齢段階に応じた「生と性の健康教育」のモデル事業を実施した。尾道地域では,保育所で保育士による健康教育と保護者との座談会を行った。三原・世羅地域では,小学校で養護教諭による健康教育や,高等学校で大学生のピアエデュケーションの手法による健康教育を行った。このようなモデル事業の成果をもとに,効果的な健康教育を推進するためのマニュアルを作成し,関係機関に配布した。「生と性の健康教育」を推進するためには,学校保健と地域保健が連携し,ライフサイクルの発達段階に応じた教育内容を工夫することが重要であり,さらに関係機関が協働し,健康教育の企画・実施・評価機能を持つことが必要である。
著者
大島 一洋
出版者
県立広島大学
雑誌
広島県立保健福祉大学誌人間と科学 (ISSN:13463217)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.1-7, 2002-03

国立情報学研究所で電子化
著者
本多 留美 綿森 淑子
出版者
県立広島大学
雑誌
人間と科学 (ISSN:13463217)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.83-99, 2007-03
被引用文献数
1

人口の高齢化や介護保険サービス分野での雇用の増加によって、言語聴覚士(ST)が認知症の人とかかわる機会は増えている。そこで現任のST129名に調査票を送付し73名から回答を得て、認知症の人へのかかわりの頻度や内容などの実態、および今後のあり方についての意見を集約した。かかわりの頻度については、認知症をともなう例は言語聴覚療法の対象者にも多く、STが認知症の人とのかかわる頻度は高かった。内容については、「摂食・嚥下面の評価」が業務量・重要性の両者において最も高かった。今後のSTのかかわり方として、認知症にともなうコミュニケーションや生活上の障害にもかかわるのがよいという意見が多かった。STが認知症の人に広い範囲で適切にかかわるためには、認知症について学べる機会を増やし、障害特性に合った評価や介入の方法を開発するとともに、自らの役割についてST自身が自覚し、開拓する姿勢も重要と考えた。原著国立情報学研究所で電子化
著者
黒田 寿美恵 佐藤 禮子
出版者
県立広島大学
雑誌
人間と科学 (ISSN:13463217)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.89-100, 2008-03

本研究の目的は,終末期がん患者が選択する生き方とその本質を明らかにし,生き方を選択する終末期がん患者に対する看護のあり方を検討することである。病名・病状を知っており症状コントロールの良好な終末期がん患者6名を対象に,参加観察法と面接法によりデータ収集を行い,質的帰納的に分析を行った。分析の結果,得られた終末期がん患者の選択する生き方の本質は,1)生命の維持と病状の安定を求める,2)迫りくる死に身を委ねる,3)自己を重視する,4)自らの力を信じる,5)他者を気遣う,6)心理的安寧を求める,の6つに集約された。生き方を選択する終末期がん患者への看護のあり方として,1)病状を正しく認識できるように助ける,2)死と向き合い人生を回顧する患者に寄り添う,3)生きる希望を支える,4)患者の自分らしさを尊重する,5)患者が必要とする医療を提供することが重要である。症例報告国立情報学研究所で電子化
著者
山本 映子 北川 早苗
出版者
県立広島大学
雑誌
人間と科学 : 県立広島大学保健福祉学部誌 (ISSN:13463217)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.111-123, 2007-03

本研究は,理由が判明しないまま不登校を繰り返す小学生の心の理解に,児童に関わる重要な非専門家も加わるコミュニティ援助の具体手段の中で宿題コラージュ法・かばん登校がもたらした効果を検討し,不登校支援に示唆を得ることを目的とした。小学校1年次より,毎年不登校を繰り返し,4年生の夏休み明けから不登校となった男児のコラージュ作品を分析し,「コラージュ法による攻撃性の発見」で得られた特徴が全て含まれていることが判明した。しかし,攻撃性の他に,対人恐怖,自我同一性の問題などが男児の不登校という現象の深奥に秘められていることも示唆された。コミュニティ援助という臨床心理学的対応の結果として,不登校は一応の解決に至った。コミュニテイィ援助にコラージュ制作という専門技法を用いることが,不登校児童への対応の1つの可能性として,活かしていくことが考えられる。
著者
山口 三重子 島津 望 下妻 晃二郎 矢部 正浩 福島 智子 加藤 恒夫
出版者
県立広島大学
雑誌
広島県立保健福祉大学誌人間と科学 (ISSN:13463217)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.77-85, 2005-03

本研究の目的は,自宅で最期を迎えたいと希望するがん患者の在宅緩和ケアを行うために作られた,プライマリケアチーム(開業医・訪問看護師・開業薬剤師など)と緩和ケア専門チーム(緩和を専門とする医師・看護師・MSWなど)の連携がスムーズに行われるための課題を明らかにすることである。分析対象は,在宅緩和ケアに参加した医療職者の事例検討会(学習会)において録音したテープ,診療録,看護記録である。テープは逐語録にし,分析にはワトソンの理論を参考に内容分析法で行った。その結果,在宅緩和ケアにおける連携をスムーズにするために必要な因子として,連携前の準備,緩和ケアに特有のケアや薬剤の理解,両チームの役割分担,の3つの要因が抽出された。今後の検討課題として,連携のアウトカム評価,コーディネーター(リーダー)の役割と職種,より多職種を含めた組織化などが挙げられた。