著者
大嶋 勇成
出版者
一般社団法人日本小児アレルギー学会
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.35-40, 2019 (Released:2019-03-31)
参考文献数
21

二重抗原曝露仮説が提唱されて以降, 食物アレルギーの発症機序として経皮感作が注目されている. 保湿剤により皮膚バリア機能を改善し, 食物アレルギーの発症を予防する試みが行われているが, アトピー性皮膚炎の発症を抑制しても, 食物アレルギーの発症を予防する効果は証明されていない. 食物アレルギー患者のすべてに, アトピー性皮膚炎の既往や皮膚バリア機能の異常を認めるわけでないことから経皮以外の感作経路の存在が示唆される. 花粉・食物アレルギー症候群では食物抗原と交差反応性をもつ花粉への感作は経気道的に生じていると考えられる. したがって, 経皮感作の予防のみでは食物アレルギーの発症を完全に防ぐことは困難と考えられる. 食物アレルギーの発症予防には, 経皮感作を修飾する因子, 経口・経気道感作の機序を明らかにする必要がある.
著者
伊藤 尚弘 安冨 素子 村井 宏生 森岡 茂己 石原 靖紀 小倉 一将 谷口 義弘 大嶋 勇成
出版者
一般社団法人日本小児アレルギー学会
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.217-223, 2022-08-20 (Released:2022-08-22)
参考文献数
10

【目的】福井県では医療圏によって専門医への受診が困難であり,専門的診療を行う施設は限られる.今回,アレルギー診療の均霑化を進めるため実施しているオンライン勉強会の有用性と問題点を検証した.【方法】アレルギーの勉強会はオンライン会議システムを利用し,平日夕方に月1回開催した.勉強会に参加したことがある医師22名と小児アレルギーエデュケーター5名に対し,アンケートを行った.【結果】アレルギー専門医9名,非専門医10名,小児アレルギーエデュケーター4名から回答が得られた.参加した医師の73.7%が診療内容を変えたと回答した.大学病院への紹介に変化があったと解答したのは26.3%であった.従来現地開催で実施していた日本小児科学会福井県地方会と比較して女性医師の参加割合は有意に多かった.【結論】オンライン勉強会は子育て世代の女性医師にとっても参加しやすく,参加者の診療内容に変化をもたらしており,アレルギー診療の均霑化に繋がることが示唆された.
著者
村井 宏生 藤澤 和郎 岡崎 新太郎 林 仁幸子 河北 亜希子 安冨 素子 眞弓 光文 大嶋 勇成
出版者
一般社団法人日本小児アレルギー学会
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.27, no.4, pp.566-573, 2013 (Released:2013-12-11)
参考文献数
8
被引用文献数
8 5

【目的】教職員がアナフィラキシーを理解し初期対応を可能にするための教育は学校生活の安全のために必要不可欠である.教職員に対するエピペン®の実技指導を含む講習の有効性を検討した. 【方法】福井市の小中学校教職員を対象に,食物アレルギーとアナフィラキシーに関する講習とエピペントレーナーを用いての実技指導を行った.講習会前後でアナフィラキシー対応に関する意識の違いをアンケート調査により比較検討した. 【結果】講習前には,エピペン®認知度は97%であったが,使用法まで理解している者は29%にすぎなかった.使用に対する不安は,使用のタイミングが82%と最も多く,使用後の保護者からのクレームが68%であった.養護教諭や現場の教諭がエピペン®を施行するとした割合は,講習前の41%,28%から,講習後には63%,48%と著増した.実技指導により使用への抵抗感が軽減したとの回答が増加した. 【結論】講演会に実技指導を加えることは,アナフィラキシーに対する理解を深め,エピペン®使用の不安を軽減する上で有用と考えられた.
著者
安冨 素子 岡崎 新太郎 河北 亜紀子 林 仁幸子 村井 宏生 眞弓 光文 和田 泰三 大嶋 勇成
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.62, no.7, pp.827-832, 2013-07-30 (Released:2017-02-10)
参考文献数
12

症例は4カ月女児.生後1カ月より湿疹が出現し,近医で小柴胡湯加桔梗石膏(しょうさいことうかききょうせっこう)・当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)・十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう),NSAIDs外用剤による治療を受けていたが,皮疹の増悪,下痢,体重減少を認め当科に入院した.入院時血清Na126mEq/L, K7.3mEq/L, Alb3.0mg/dl, IgG15.3mg/dl.便中EDN,血清IL-18値が著明高値で,上記漢方薬のDLSTは陽性であった.漢方薬中止後に下痢は消失,ステロイド外用剤で皮疹は改善.母の食事制限なしに母乳で体重増加も回復し,検査所見も正常化した.外用剤の不適切な使用による皮膚症状の増悪に,漢方薬による修飾も加わり,電解質異常,低蛋白血症を来したものと考えられた.アトピー性皮膚炎の治療において,漢方薬は補助的治療薬と位置付けられるが,乳児への適応は慎重にされるべきである.
著者
安冨 素子 大嶋 勇成 眞弓 光文
出版者
日本小児アレルギー学会
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.253-258, 2008-06-01 (Released:2008-08-01)
参考文献数
13

エリスロマイシンは抗菌作用のみならず,抗炎症作用を持つことから慢性気道炎症性疾患への応用が注目されている.樹状細胞は気管支喘息の病態における抗原感作とアレルギー性炎症の増悪に重要な役割を持つと考えられることから,エリスロマイシンが病原体由来の刺激による樹状細胞の活性化とT細胞刺激に及ぼす影響について検討した.その結果,エリスロマイシンは poly (I:C) と LPS 刺激による樹状細胞の表面マーカー発現とサイトカイン産生を選択的に抑制した.エリスロマイシンはpoly (I:C) と LPS 刺激によるIRF-3 活性化,IFN-β産生を抑制し,poly (I:C) 刺激によるナイーブT細胞のTh1分化を特異的に抑制した.また,エリスロマイシンは peptidoglycan 刺激を受けた樹状細胞によるメモリーT細胞の IL-17産生誘導も抑制した.これらの結果からエリスロマイシンは,アレルギー性炎症を修飾する気道感染の病原体刺激の種類により異なる抗炎症作用を示すことが示唆された.