著者
秋谷 進 宮本 幸伸 木村 光明
出版者
日本小児アレルギー学会
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 = The Japanese journal of pediatric allergy and clinical immunology (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.139-146, 2009-03-01
参考文献数
23

原因不明の乳児肝炎として経過観察していた症例で,IgE 非依存性牛乳アレルギーと診断した2症例を経験した.IgE 抗体非依存性食物アレルギーは,IgE 抗体が通常陰性であるため食物アレルギーとは気づかれず種々の侵襲的検査を余儀なくされ,診断の遅れのために栄養障害や重症化をきたした報告も多く認められる.現在のところ IgE 抗体非依存性食物アレルギーの診断には評価の一定した検査方法がないが,臨床経過から IgE 抗体非依存性牛乳アレルギーを疑い,食物特異的リンパ球増殖反応検査を用いることで IgE 抗体非依存型牛乳アレルギーと診断した.乳児の慢性肝機能障害を呈する疾患のうち食物アレルギーの可能性を考慮し診察することで,侵襲性の高い検査が回避されることが考えられた.
著者
南部 光彦
出版者
日本小児アレルギー学会
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 = The Japanese journal of pediatric allergy and clinical immunology (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.19, no.5, pp.737-743, 2005-12-31
参考文献数
18

4か月健診を受診した400人を対象とし, 家族背景・生活習慣とアレルギー疾患発症との関連性を検討した. 月齢4か月時と3歳6か月時にアンケート調査をした. また乳幼児健診時にアレルギー疾患の有無を調べた.<br>4か月健診では, アトピー性皮膚炎 (AD) は37人, 湿疹は62人に認められた. ADも湿疹も1-6月生まれより, 7-12月生まれに多かった. 3歳6か月時のアンケート調査でのAD, 食物アレルギー, 気管支喘息の発症は, 既往を含めて314人中それぞれ71人, 52人, 21人であった.<br>家族の人数とAD発症には関連性はなかったが, 1-6月生まれでは, 家族風呂に入る時期を生後3か月以降にした者の割合が月齢4か月時のAD群に高かった. また7-12月生まれでは, 風呂上りのタオルを使い回ししている者の割合が月齢4か月時の湿疹群に高かった. ただし, 入浴順, 浴槽洗いの頻度, 口で噛んだものを子どもに与える, 唇同士のキスとアレルギー疾患発症には有意な関連性はなかった.<br>家族背景・生活習慣とADや湿疹との関連性が示唆されたが, その因果関係は不明である.
著者
神奈川 芳行 海老澤 元宏 今村 知明
出版者
日本小児アレルギー学会
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 = The Japanese journal of pediatric allergy and clinical immunology (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.69-77, 2005-03-01
参考文献数
8
被引用文献数
2 1

目的; 食物アレルギーの実態調査について, 医療機関に来院した患者の原因物質等に関する調査は行われているが, 患者家族の食品の購買行動に着目した実態調査は充分には行われていないので, その実態を調査した.<br>方法; 全国的な食物アレルギーの患者会の協力を得て, 会員家族1510家族に対して, 郵送による「食物アレルギー発症回避のためのアンケート調査」を実施し, 878家族, 計1,383名 (内アナフィラキシー経験者402名) の回答が得られた.<br>結果; 食品の購入先は,「生協」「スーパー」,「自然食品店」の順である. 99%の家族では, 食品購入時に表示を確認している.「可能性表示」がなされた場合には, 原材料に含まれているものと解釈され, 購入を回避する可能性があると推察された.<br>患者家族は, 表示内容からその食品中に含まれる食物抗原量を推定し, 食品を選択しているが, その情報提供の機会や内容は十分ではないと考えており, 今後, インターネットの活用など, 表示以外の方法を用いて, より詳細な原材料等の情報提供を必要としている.
著者
山岡 明子 小田島 安平
出版者
日本小児アレルギー学会
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 = The Japanese journal of pediatric allergy and clinical immunology (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.295-302, 2009-08-01
参考文献数
42

14歳,男児.PL顆粒やイブプロフェンとうどんの同時摂取で蕁麻疹やアナフィラキシーの既往がある.2008年2月に学校で給食を摂取した後にサッカーをしていたところアナフィラキシーが出現した.給食は牛乳,おでん(大根・卵・はんぺん・コンニャク・ 人参・ほうれん草・ちくわ),わかめご飯,魚フライであった.小麦,グルテンの血中抗原特異的IgE抗体(ImmunoCAP<SUP>&reg;</SUP>)が陽性であった事や過去の既往等から小麦による食物依存性運動誘発アナフィラキシーを疑い負荷試験を行ったが,小麦+運動では無症状であった.そこでアスピリンを前投与した後に小麦を摂取させたところ運動とは関係なくアナフィラキシーが誘発された.以上より小麦と同時にサリチル酸含有物質を摂取することにより症状が誘発されると考えられ小麦依存性サリチル酸誘発アナフィラキシーと診断した.
著者
西牟田 敏之 渡邊 博子 佐藤 一樹 根津 櫻子 松浦 朋子 鈴木 修一
出版者
THE JAPANESE SOCIETY OF PEDIATRIC ALLERGY AND CLINICAL IMMUNOLOGY
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 = The Japanese journal of pediatric allergy and clinical immunology (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.135-145, 2008-03-10
被引用文献数
12 20

<B>【目的】</B>喘息ガイドラインの治療管理が適確に遂行されるために,重症度とコントロール状態の両方を簡単に判定できる JPAC 設問票を開発し,有用性を検討した.<BR><B>【方法】</B>JPAC 設問票は,喘息症状,呼吸困難,日常生活障害に関する3設問から重症度を判定し,これに運動誘発喘息と β<SUB>2</SUB> 刺激薬使用頻度を加えた全5設問からコントロール状態を判定する.下志津病院受診中の5歳から19歳の喘息患者225名を対象に,JPAC 点数と重症度,呼吸機能検査との関係を検討した.<BR><B>【結果】</B>重症度増加と JPAC 点数減少は,Jonckheere-Terpstra 検定によって p<0.0001と有意な関連性を示した.症状と頻度から判定した各重症度におけるJPAC点数のmean±S.D.は,寛解15±0,間欠型14.9±0.3,軽症持続型13±1.2,中等症持続型9.2±1.0,重症持続型7±2.4であり,完全15点,良好12~14,不良11点以下と設定したコントロール基準と整合性があった.JPAC 点数と呼吸機能検査の関係は,%FEV<SUB>1.0</SUB>,%MMF,%V'<SUB>50</SUB>において p<0.0001と有意な相関を認めた.<BR><B>【結語】</B>JPAC は,患者の重症度とコントロール状態を判断するのに適しており,ガイドライン治療の普及に役立つ.
著者
鳥居 新平 赤坂 徹 西間 三馨 松井 猛彦 三河 春樹 三河 春樹
出版者
THE JAPANESE SOCIETY OF PEDIATRIC ALLERGY AND CLINICAL IMMUNOLOGY
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 = The Japanese journal of pediatric allergy and clinical immunology (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.19, no.3, pp.288-300, 2005-08-01
被引用文献数
5 4

2004年10月までに喘息死亡例として登録された189例についてその年次変化をみるとこれまでの報告にも指摘されているように1998年頃から減少傾向にある.<br>そこで最近の変化をみるために1988年~1997年に死亡した158例と1998年~2004年に死亡した30例に分け集計した.<br>男女比は1997年以前は97:62であったが, 1998年以降は19:11であり, とくに大きな変化はみられなかった.<br>重症度との関係に関しては1997年以前と1998年以降と比較すると不明・未記入例を除くと重症例は44%が50%に, 中等症では30%が28%に, 軽症では26%が22%となり重症例ではやや増加傾向がみられたが, 中等症, 軽症では減少傾向がみられた.<br>死亡場所と死亡年齢の関係では病院における死亡は0~3歳 (71.1%) が最も多く, 次いで7~12歳 (54.2%), 13歳以上 (39.8%) と加齢に伴い減少傾向がみられた. 一方病院外の死亡は加齢とともに増加傾向がみられた.<br>既往歴に関しては入院歴, 意識障害, イソプロテレノール使用歴は1997年以前と1998年以降で減少傾向がみられたが, 挿管歴は増加傾向がみられた.<br>死亡の要因については予期不能がこれまでの集計にもあったように最も多かった.<br>死亡前1年間の薬物療法に関してはキサンチン薬剤が多かったが, 1998年以降は減少傾向がみられ, その他ステロイド薬やβ刺激薬の内服も減少傾向がみられるが, BDIが増加傾向となり1997年以前にはみられなかったβ刺激薬貼布薬の使用があらたにみられるようになった.<br>β刺激薬吸入過度依存例は全体として減少傾向にある.<br>怠薬は全体として減少傾向がみられるが, 年齢別にみると思春期に多くなる傾向がみられる.<br>怠薬と欠損家庭の関連をみると怠薬あり群は怠薬なし群に比べやや欠損家庭が多い傾向がみられるが, 有意な差とは考えられない.