著者
中井 昭夫
出版者
武庫川女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

発達性協調運動障害(Developmental Coordination Disorder:DCD)が子どもの発達に与える影響、自閉症スペクトラム障害など他の神経発達障害との関連、DCDの神経基盤の解明として内部モデル、視覚-運動時間的統合能、身体性(身体所有感、運動主体感)、模倣などを検討、病態モデルの構築を行い、ニューロリハビリテーション法、ニューロモデュレーターとしての薬物療法など介入方法の開発とその効果検証を行った。
著者
小西 行郎 秦 利之 日下 隆 諸隈 誠一 松石 豊次郎 船曳 康子 三池 輝久 小西 郁生 村井 俊哉 最上 晴太 山下 裕史朗 小西 行彦 金西 賢治 花岡 有為子 田島 世貴 松田 佳尚 高野 裕治 中井 昭夫 豊浦 麻記子
出版者
同志社大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2012-06-28

発達障害とりわけ自閉症スペクトラム障害(以下ASDと略す)について、運動、睡眠、心拍、内分泌機能、体温などの生体機能リズムの異常を胎児期から学童期まで測定し、ASDにはこうした生体機能リズムの異常が症状発生の前、胎児期からでも見られることを発見した。それによって社会性の障害というASDの概念を打ち破り、生体機能リズムの異常としてのASDという新しい概念を得ることができた。この研究を通して、いくつかのバイオマーカを選択することが可能になり、科学的で包括的な診断方法を構築すると共に、障害発症前に予防する先制医療へ向けて展望が開けてきた。
著者
奥川 純子中井 昭夫
雑誌
第56回日本作業療法学会
巻号頁・発行日
2022-08-29

【背景と目的】 近年,習慣的運動,特に協調への介入が認知機能を向上させることが報告され,神経発達障害の中核症状を改善させる可能性も示唆されている.ラジオ体操は広く普及し,短時間で,屋内でも実施可能な,音楽に合わせた,左右対称の全身運動である.本研究は,DCD特性のある子どもに対し,ラジオ体操を用いた身体性からの介入が,協調のみならず,神経発達障害の中核症状や情緒,適応行動に与える影響を客観的尺度を用いて検証することを目的とする.【方法】 放課後等デイサービスに通う小学2〜5年生の25名を,ラジオ体操を8週間実施群と未実施群の2群に分け交叉試験を行った.毎朝zoomで参加できるよう設定し,開始時,交叉時,終了時の3回,M-ABC2,DCDQ,AD/HD-RS,SDQ,VinelandⅡにより評価し,また,インフォーマルな評価として経過報告,終了時アンケートを実施した.本研究は武庫川女子大学教育研究所倫理審査委員会の承認を受け,参加者およびその保護者から同意を得て実施した.【結果】1)協調 開始時のM-ABC2においてDCD/DCD疑いと判定とされた児の79%に改善を認めた.特に「手先の器用さ」の改善が大きく,開始時に5パーセンタイル以下であった児の82%に改善を認めた.2)AD/HD特性 全体の48%でAD/HD-RSのスコアの改善を認めた.3)情緒の問題 「情緒の問題」は1群で57%,2群で55%が改善した.「総合的困難さ」は,1群で36%,2群で55%が改善した.4)適応行動 1群は「日常生活スキル」が50%,「社会性」が64%で,2群では「社会性」が55%で改善した.zoomがラジオ体操に参加した動機となった参加者の81%に「社会性」の改善が見られた.5)介入前後の各検査間の相関の変化 開始時と終了時の各検査間の相関の比較では,M-ABC2のスコアが改善したことにより,他の検査間データとの相関が弱まり,また,SDQとその他の相関も弱まった.一方で,DCDQ,AD/HD-RS,Vineland Ⅱの相関はあまり変化なく,子どもの日常生活での困難さは,単純に個別検査における課題遂行能力だけでは推し量れないことが示唆された.6)インフォーマルな評価 「生活リズム」「身体機能」「社会性」「AD/HD特性」に関する肯定的な回答が上位を占めた.診断/特性ごとで見ると「身体機能」はDCD特性がある児,「社会性」はASD特性のある児,「AD/HD特性」はAD/HD特性のある児でそれぞれ肯定的な感想が得られた.「生活リズム」については特性にかかわらず,肯定的な意見が多かった.【考察】 習慣的運動が認知機能を高めることは,既に成人では多く報告されているが,本研究から,神経発達障害の特性のある小児でも中核症状,情緒,適応能力の改善効果があり,その期間は2か月,1回約3分というラジオ体操でも効果があることが示された.頻度に関しては,週4日以上でその効果が大きかった.また,全身運動であるラジオ体操により「手先の器用さ」の改善が認められたことは,活動指向型・参加指向型アプローチとして微細運動に介入する際にも,身体機能指向型アプローチを組み合わせることが有用であることが示唆された.神経発達障害の特性のある子どもに対するオンラインによる継続的運動により,小集団での社会性の促進,体性感覚の弱さに対する視覚フィードバック,セロトニンやBDNFを介した中枢神経系,睡眠に与える効果などが複合的に協調を改善させ,さらに,中核症状,情緒,適応能力にもよい影響を与えた可能性が考えられる.
著者
綿引 清勝 澤江 幸則 島田 博祐 中井 昭夫
出版者
NPO法人 日本自閉症スペクトラム支援協会 日本自閉症スペクトラム学会
雑誌
自閉症スペクトラム研究 (ISSN:13475932)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.59-67, 2020-02-29 (Released:2021-02-28)
参考文献数
16

本報告では、身体的不器用さを有する学齢期の自閉スペクトラム症児の運動発達上の困難さと支援方略を検討するため、投運動の困難さを主訴とした2 名を対象に、3 種類の投運動課題を用いた介入の結果から、その特徴を分析した。方法は20XX 年1 月~3 月の3 カ月間において、アセスメントは協調運動の発達を調査するためにMovement Assessment Battery for Children-2(M-ABC2)を実施した。運動に対する心理的な評価は、運動有能感に関する質問紙調査を実施した。介入プログラムは、課題指向型アプローチの理念に基づき「強く投げる課題」、「弱く投げる課題」、「ねらった所に投げる課題」の5 つの課題を含むプログラムを5 回実施した。その結果、投動作の改善では、2 名ともに体幹部の評価得点の向上が見られた。しかし末梢部の評価得点は、協調運動全般に遅れがある事例で向上が見られなかった。以上のことから投運動の質的な変化を踏まえ、身体的不器用さを有する自閉スペクトラム症児の臨床的な特徴と介入効果について得られた知見を報告する。
著者
信迫 悟志 坂井 理美 辻本 多恵子 首藤 隆志 西 勇樹 浅野 大喜 古川 恵美 大住 倫弘 嶋田 総太郎 森岡 周 中井 昭夫
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2016, 2017

<p>【はじめに,目的】発達性協調運動障害(Developmental Coordination Disorder:DCD)は,注意欠如多動性障害(Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder:ADHD)の約50%に併存し(McLeod, 2016),自閉症スペクトラム障害(Autism Spectrum Disorder:ASD)にも合併することが報告されている(Sumner, 2016)。一方,DCDの病態として,内部モデル障害(Adams, 2014)やmirror neuron systemの機能不全(Reynolds, 2015)が示唆されているが,それらを示す直接的な証拠は乏しい。そこで本研究では,視覚フィードバック遅延検出課題(Shimada, 2010)を用いた内部モデルの定量的評価と運動観察干渉課題(Kilner, 2003)を用いた自動模倣機能の定量的評価を横断的に実施し,DCDに関わる因子を分析した。</p><p></p><p></p><p>【方法】対象は公立保育所・小・中学校で募集された神経筋障害のない4歳から15歳までの64名(男児52名,平均年齢±標準偏差:9.7歳±2.7)であった。測定項目として,Movement-ABC2(M-ABC2)のManual dexterity,視覚フィードバック遅延検出課題,運動観察干渉課題,バールソン児童用抑うつ性尺度(DSRS-C)を実施し,保護者に対するアンケート調査として,Social Communication Questionnaire(SCQ),ADHD-Rating Scale-IV(ADHD-RS-IV),DCD Questionaire(DCDQ)を実施した。MATLAB R2014b(MathWorks)を用いて,内部モデルにおける多感覚統合機能の定量的指標として,視覚フィードバック遅延検出課題の結果から遅延検出閾値(delay detection threshold:DDT)と遅延検出確率曲線の勾配を算出し,自動模倣機能の定量的指標として,運動観察干渉課題の結果から干渉効果(Interference Effect:IE)を算出した。M-ABC2の結果より,16 percentile未満をDCD群(26名),以上を定型発達(Typical Development:TD)群(38名)に分類し,統計学的に各測定項目での群間比較,相関分析,重回帰分析を実施した。全ての統計学的検討は,SPSS Statistics 24(IBM)を用いて実施し,有意水準は5%とした。</p><p></p><p></p><p>【結果】DCD群とTD群の比較において,年齢(p=0.418),性別(p=0.061),利き手(p=0.511),IE(p=0.637)に有意差は認めなかった。一方で,DCD群ではTD群と比較して,有意にSCQ(p=0.004),ADHD-RS-IV(p=0.001),DSRS-C(p=0.018)が高く,DCDQが低く(p=0.006),DDTの延長(p=0.000)と勾配の低下(p=0.003)を認めた。またM-ABC2のpercentileとSCQ(r=-0.361,p=0.007),ADHD-RS-IV(r=-0.364,p=0.006),DCDQ(r=0.415,p=0.002),DDT(r=-0.614,p=0.000),勾配(r=0.403,p=0.001)との間には,それぞれ有意な相関関係を認めた。そこで,percentileを従属変数,これらの変数を独立変数とした重回帰分析(強制投入法)を実施した結果,DDTが最も重要な独立変数であった(β=-0.491,p=0.002)。</p><p></p><p></p><p>【結論】本研究では,内部モデルにおける運動の予測情報(運動の意図,遠心性コピー)も含めた多感覚統合機能不全(DDTの延長)が,DCDに最も重要な因子の一つであることが示された。</p>
著者
中井 昭夫 川谷 正男 吉澤 正尹
出版者
福井大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

広汎性発達障害、注意欠陥多動性障害など発達障害にいわゆる「不器用さ」、発達性協調運動障害(Developmental Coordination Disorder:DCD)の併存は多く、またDCDの頻度は世界的に約6-10%とされ、非常に多い状態であるが、我が国ではその研究は少ない。本研究では多数の発達障害症例での「不器用さ」に関する詳細な検討、2つの国際共同研究による国際的評価・スクリーニング尺度(DCDQとMOQ-T)の日本語版の作成と信頼性の検討、モーションキャプチャーや筋電図等バイオメカニクスによる行動計測方法の検討、事象関連電位、NIRS、PETなど脳機能イメージング研究を行い、我が国における「不器用さ」、DCDの発達小児科学的検討方法をほぼ確立することができた。
著者
森 俊之 谷出 千代子 乙部 貴幸 竹内 惠子 高谷 理恵子 中井 昭夫
出版者
仁愛大学
雑誌
仁愛大学研究紀要. 人間学部篇 (ISSN:21853355)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.61-67, 2011-12-30

ブックスタートに取り組んでいる自治体と取り組んでいない自治体を比較することで,乳幼児期からの絵本の読み聞かせがその後の子どもの読書習慣に及ぼす影響を検討した.7年間以上ブックスタートに取り組んでいる自治体と未だ取り組んでいない自治体を1か所ずつ選び,当該自治体の公共図書館の近隣に立地する小学校7校で,1年生の子どもをもつ保護者を対象に子どもの生活習慣や読書環境に関するアンケート調査を行った.乳児期におけるブックスタートの体験が,小学1 年生の時点での読書習慣を増やし,ゲーム習慣を減らすという結果が見出された.また,乳児期に親子でブックスタートを体験することで,保護者の図書館利用頻度が高まり,保護者による子どもへの読み聞かせの頻度が高まるという結果も示された.ブックスタートは,保護者の読み聞かせ行動などを変化させ,それにより小学校入学後の子どもの読書習慣など生活習慣に影響を及ぼすと考えられる.