- 著者
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堀 信一
大川 元臣
三好 勝彦
- 出版者
- 京都大学医学部泌尿器科学教室
- 雑誌
- 泌尿器科紀要 (ISSN:00181994)
- 巻号頁・発行日
- vol.26, no.5, pp.p545-549, 1980-05
Computed Tomography (CT) による膀胱癌の診断は,非侵襲的な診断法であり,膀胱周囲臓器との関係を観察できるのみならず,腫瘍の形態,膀胱の性状の変化などを知りうることから,これによる術前診断が期待されている。しかし, 膀胱造影剤として,従来用いられてきた空気,低濃度陽性造影剤では,必ずしも腫瘍形態を満足に描出することができず,また造影剤によるartifact により,診断が困難になることが多く,種々の研究努力がなされているが,いまだ解決に至っていない。今回,われわれは,滅菌オリーブ油を膀胱内造影剤として用いることにより,腫瘍の膀胱内部分の行態,正常膀胱壁,および腫瘍の壁外浸潤を正確にとらえることを,実験的に確め,臨床に応用した。実験には,膀胱ファントムを作製し,遺影剤として, 空気, オリーブ油, 生食,1%アンギオグラフィン, 2%アンギオグラフィンを用い,検討を行なったが, CT膀胱造影剤として,オリーブ油が最適であると結論した。臨床的には,検査前にバルーンカテーテルを挿入,排尿を完全に行ない,空気の混入を避けながらオリーブ油100から120ccを注入の後,カテーテルを抜去し,仰臥位にてスキャンを行った。つぎに腫瘍の位置により,患者の体位変換をおこない,再びスキャンをおこなって,腫瘍の正確な描出を試みた。現在までに65例に滅菌オリーブ油注入によるCT膀胱スキャンを行なったが,副作用は全く認めず,この方法は膀胱癌の術前診断として高く評価されると考える。