著者
森 健治 橋本 俊顕 原田 雅史 米田 吉宏 島川 清司 藤井 笑子 山上 貴司 宮崎 雅仁 西條 隆彦 黒田 泰弘
出版者
The Japanese Society of Child Neurology
雑誌
脳と発達 (ISSN:18847668)
巻号頁・発行日
vol.33, no.4, pp.329-335, 2001

自閉症患児29例 (IQ50以上=6例, IQ50未満=23例) および正常小児19例において, 扁桃体~海馬を含む左, 右側頭葉内側部, 左小脳半球の3箇所にてproton magnetic resonancespectroscopy (1H-MRS) を施行し, 代謝物質の濃度を抑制されていない組織水を用いた内部標準法にて測定した.IQ50未満の自閉症患児においては, 扁桃体~海馬を含む左側頭葉内側部および左小脳半球にてN-acetylaspartate濃度が有意に低下していた.これは, これらの部位における神経細胞の減少や発達異常あるいは神経活動の低下を反映していると考えられ, 自閉症で報告されている神経病理学的所見および脳血流SPECTの所見とよく一致していた.1H-MRSは自閉症の病態解明に有用であると考えられる.
著者
菊地俊文 片山行雄 黒田泰弘 今本啓一
雑誌
コンクリート工学年次大会2023(九州)
巻号頁・発行日
2023-06-16

普通コンクリートでは,適切な対策を講じることで,受入れ時のコンクリート温度の上限値を35℃から38℃に変更することが認められているが,マスコンクリートは対象外とされている。本論文では,各種ポルトランドセメントを用いた同じ強度レベルのコンクリートを対象に,練上がり温度を20℃および40℃とした室内実験,受入れ時の温度を35℃超とした実機実験を行い,フレッシュ性状の経時変化,凝結硬化,自己収縮,温度履歴,圧縮強度(簡易断熱・模擬部材含む)を測定した。また,マスコンクリートの温度ひび割れ危険度を解析的に評価し,受入れ時35℃を超えるマスコンクリートの適用可能性について言及した。
著者
黒田 泰弘
出版者
一般社団法人 日本外科感染症学会
雑誌
日本外科感染症学会雑誌 (ISSN:13495755)
巻号頁・発行日
vol.18, no.3-4, pp.368-376, 2022-08-15 (Released:2022-08-15)
参考文献数
72

敗血症における脳障害は,1.狭義の敗血症関連脳障害(sepsis-associated acute brain dysfunction:以下,SABD),2.広義のSABD,3.敗血症に合併した新たな脳神経疾患,に分けられる。狭義のSABDは炎症性メディエーターによる脳への直接的影響により生ずる。一方,広義のSABDは敗血症による脳以外の臓器障害または薬剤などによって間接的に引き起こされる。SABDは,敗血症関連臓器障害のうちで最も頻度が高く,敗血症患者の最大70%が罹患し,他の臓器が侵される前に発症することが多い。SABDは症状が非特異的であり,病歴も加味した除外診断が重要である。1は敗血症の治療が中心となるが,2および3は治療の追加や治療内容の早期変更が必要な場合がある。
著者
行岡 秀和 田勢 長一郎 黒田 泰弘 谷川 攻一 村川 德昭 中川 隆
出版者
日本蘇生学会
雑誌
蘇生 (ISSN:02884348)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.85-89, 2016-08-01 (Released:2016-08-23)
参考文献数
8

心肺蘇生(CPR)の合併症の部位や頻度に関する検討はほとんど行われていない。日本蘇生学会医師会員923名に対して,CPR実施数(指導数を含む),合併症の部位・頻度,防止策などについてアンケート調査を実施した(回答率46%)。回答者は,40歳以上が84%,男性が84%で,ほとんどが麻酔科,救急科の専門医であった。CPR実施数は,20回以下26%,21~100回33%,101回以上41%で,85%が合併症を経験しており,肋骨骨折,気胸・血胸,胸骨骨折,皮下気腫・縦隔気腫,胃内容逆流,誤嚥性肺炎,肺損傷,肝損傷の順であった。合併症防止の注意点としては,胸骨圧迫の部位,強さ,気管挿管の手技が多かった。心停止において迅速なCPRが予後を改善することは明白だが,今回の調査で,合併症は熟練した医師でも発生することがわかった。合併症を最小にするCPR法や予後に及ぼす影響を検討する必要がある。
著者
内野 博之 牛島 一男 平林 剛 石井 脩夫 芝崎 太 黒田 泰弘
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.14, no.4, pp.527-550, 2007-10-01 (Released:2008-10-24)
参考文献数
63

集中治療における脳保護の成否は, (1) いかに早期に脳への血流を再開させ, エネルギー代謝を改善することができるか (脳機能回復を念頭に置いた脳蘇生法) と, (2) 血流再開後にいかに脳を保護できるか (脳神経障害から脳を保護する治療法の適用) の2点が大きな柱となるものと思われる。すなわち, 心停止後の頭蓋外臓器の機能を脳に有利になるような方法で管理し, かつ頭蓋内の恒常性を維持することをその意図とすることをその主目的としている。神経集中治療における救命救急処置法の改善および脳保護法の進歩や脳指向型集中管理法が併用され, これまでは回復が難しいと思われてきた神経機能回復に光明を見い出すことができるようになったが, 人の脳神経細胞障害のメカニズムは複雑かつ多要素で, 神経機能回復を目指した治療を開始するまでの時間が極めて短く, 虚血性脳神経細胞障害を完全に抑制できる状況とは言い難い。本稿では, 虚血性神経細胞障害における細胞内カルシウム動態とフリーラジカルの関与を紹介し, 細胞死に深く関わるミトコンドリア機能不全とカルシニューリン/イムノフィリン情報伝達系の重要性を概説する。
著者
江木 盛時 小倉 裕司 矢田部 智昭 安宅 一晃 井上 茂亮 射場 敏明 垣花 泰之 川崎 達也 久志本 成樹 黒田 泰弘 小谷 穣治 志馬 伸朗 谷口 巧 鶴田 良介 土井 研人 土井 松幸 中田 孝明 中根 正樹 藤島 清太郎 細川 直登 升田 好樹 松嶋 麻子 松田 直之 山川 一馬 原 嘉孝 大下 慎一郎 青木 善孝 稲田 麻衣 梅村 穣 河合 佑亮 近藤 豊 斎藤 浩輝 櫻谷 正明 對東 俊介 武田 親宗 寺山 毅郎 東平 日出夫 橋本 英樹 林田 敬 一二三 亨 廣瀬 智也 福田 龍将 藤井 智子 三浦 慎也 安田 英人 阿部 智一 安藤 幸吉 飯田 有輝 石原 唯史 井手 健太郎 伊藤 健太 伊藤 雄介 稲田 雄 宇都宮 明美 卯野木 健 遠藤 功二 大内 玲 尾崎 将之 小野 聡 桂 守弘 川口 敦 川村 雄介 工藤 大介 久保 健児 倉橋 清泰 櫻本 秀明 下山 哲 鈴木 武志 関根 秀介 関野 元裕 高橋 希 高橋 世 高橋 弘 田上 隆 田島 吾郎 巽 博臣 谷 昌憲 土谷 飛鳥 堤 悠介 内藤 貴基 長江 正晴 長澤 俊郎 中村 謙介 西村 哲郎 布宮 伸 則末 泰博 橋本 悟 長谷川 大祐 畠山 淳司 原 直己 東別府 直紀 古島 夏奈 古薗 弘隆 松石 雄二朗 松山 匡 峰松 佑輔 宮下 亮一 宮武 祐士 森安 恵実 山田 亨 山田 博之 山元 良 吉田 健史 吉田 悠平 吉村 旬平 四本 竜一 米倉 寛 和田 剛志 渡邉 栄三 青木 誠 浅井 英樹 安部 隆国 五十嵐 豊 井口 直也 石川 雅巳 石丸 剛 磯川 修太郎 板倉 隆太 今長谷 尚史 井村 春樹 入野田 崇 上原 健司 生塩 典敬 梅垣 岳志 江川 裕子 榎本 有希 太田 浩平 大地 嘉史 大野 孝則 大邉 寛幸 岡 和幸 岡田 信長 岡田 遥平 岡野 弘 岡本 潤 奥田 拓史 小倉 崇以 小野寺 悠 小山 雄太 貝沼 関志 加古 英介 柏浦 正広 加藤 弘美 金谷 明浩 金子 唯 金畑 圭太 狩野 謙一 河野 浩幸 菊谷 知也 菊地 斉 城戸 崇裕 木村 翔 小網 博之 小橋 大輔 齊木 巌 堺 正仁 坂本 彩香 佐藤 哲哉 志賀 康浩 下戸 学 下山 伸哉 庄古 知久 菅原 陽 杉田 篤紀 鈴木 聡 鈴木 祐二 壽原 朋宏 其田 健司 高氏 修平 高島 光平 高橋 生 高橋 洋子 竹下 淳 田中 裕記 丹保 亜希仁 角山 泰一朗 鉄原 健一 徳永 健太郎 富岡 義裕 冨田 健太朗 富永 直樹 豊﨑 光信 豊田 幸樹年 内藤 宏道 永田 功 長門 直 中村 嘉 中森 裕毅 名原 功 奈良場 啓 成田 知大 西岡 典宏 西村 朋也 西山 慶 野村 智久 芳賀 大樹 萩原 祥弘 橋本 克彦 旗智 武志 浜崎 俊明 林 拓也 林 実 速水 宏樹 原口 剛 平野 洋平 藤井 遼 藤田 基 藤村 直幸 舩越 拓 堀口 真仁 牧 盾 増永 直久 松村 洋輔 真弓 卓也 南 啓介 宮崎 裕也 宮本 和幸 村田 哲平 柳井 真知 矢野 隆郎 山田 浩平 山田 直樹 山本 朋納 吉廣 尚大 田中 裕 西田 修 日本版敗血症診療ガイドライン2020特別委員会
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.28, no.Supplement, pp.27S0001, 2020 (Released:2021-02-25)
被引用文献数
2

日本集中治療医学会と日本救急医学会は,合同の特別委員会を組織し,2016 年に発表した日本版敗血症診療ガイドライン(J-SSCG) 2016 の改訂を行った。本ガイドライン(J-SSCG 2020)の目的は,J-SSCG 2016 と同様に,敗血症・敗血症性ショックの診療において,医療従事者が患者の予後改善のために適切な判断を下す支援を行うことである。改訂に際し,一般臨床家だけでなく多職種医療者にも理解しやすく,かつ質の高いガイドラインとすることによって,広い普及を目指した。J-SSCG 2016 ではSSCG 2016 にない新しい領域[ICU-acquired weakness( ICU-AW)と post-intensive care syndrome(PICS),体温管理など]を取り上げたが,J-SSCG 2020 では新たに注目すべき4 領域(Patient-and Family-Centered Care,sepsis treatment system,神経集中治療,ストレス潰瘍)を追加し,計22 領域とした。重要な118 の臨床課題(clinical question:CQ)をエビデンスの有無にかかわらず抽出した。これらのCQ には,本邦で特に注目されているCQ も含まれる。多領域にわたる大規模ガイドラインであることから,委員25 名を中心に,多職種(看護師,理学療法士,臨床工学技士,薬剤師)および患者経験者も含めたワーキンググループメンバー,両学会の公募によるシステマティックレビューメンバーによる総勢226 名の参加・協力を得た。また,中立的な立場で横断的に活躍するアカデミックガイドライン推進班をJ-SSCG 2016 に引き続き組織した。将来への橋渡しとなることを企図して,多くの若手医師をシステマティックレビューチーム・ワーキンググループに登用し,学会や施設の垣根を越えたネットワーク構築も進めた。作成工程においては,質の担保と作業過程の透明化を図るために様々な工夫を行い,パブリックコメント募集は計2 回行った。推奨作成にはGRADE方式を取り入れ,修正Delphi 法を用いて全委員の投票により推奨を決定した。結果,118CQ に対する回答として,79 個のGRADE による推奨,5 個のGPS(good practice statement),18 個のエキスパートコンセンサス,27 個のBQ(background question)の解説,および敗血症の定義と診断を示した。新たな試みとして,CQ ごとに診療フローなど時間軸に沿った視覚的情報を取り入れた。J-SSCG 2020 は,多職種が関わる国内外の敗血症診療の現場において,ベッドサイドで役立つガイドラインとして広く活用されることが期待される。なお,本ガイドラインは,日本集中治療医学会と日本救急医学会の両機関誌のガイドライン増刊号として同時掲載するものである。
著者
黒田 泰弘 山下 進 中村 丈洋 河北 賢哉 西山 佳宏 河井 信行 内野 博之
出版者
一般社団法人 日本救急医学会
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.17, no.5, pp.167-176, 2006

ヒト蘇生後脳症においてKety-Schmidt法,washout法,positron emission tomographyにより測定された脳循環代謝量と,Safarの蘇生後脳循環障害の時間的stageをまとめ,予後との関係を述べる。臨床では,蘇生直後-1時間後における脳循環代謝量を測定できないので,stage I (no reflow)およびstage II (early postischemic hyperemia)の存在は不明である。蘇生後24時間以内のstage III (delayed postischemic hypoperfusion)では脳血流量は正常もしくは低下する。しかし,「hypoperfusionにもかかわらず脳酸素消費量の増加状態」を特徴とするSafarの報告と異なり,とくに予後不良の症例においては,実際に脳酸素消費量は低値で,脳酸素消費量の低下が脳血流量の低下よりも相対的に著明である。蘇生後24時間以後のstage IVでは,一過性のsecondary hyperemiaを呈する場合,持続するhypoperfusionを呈する場合,極度の脳代謝量低値が持続する場合,は予後不良と関係する可能性がある。意識回復例では蘇生後7日以降に脳酸素代謝が回復してくるので,蘇生後7日以内では予後を脳酸素消費量の値から推定することは難しい。
著者
江木 盛時 黒田 泰弘 山田 亨 山田 博之 山元 良 吉田 健史 吉田 悠平 吉村 旬平 四本 竜一 米倉 寛 和田 剛志 渡邉 栄三 小谷 穣治 青木 誠 浅井 英樹 安部 隆国 五十嵐 豊 井口 直也 石川 雅巳 石丸 剛 磯川 修太郎 板倉 隆太 今長谷 尚史 志馬 伸朗 井村 春樹 入野田 崇 上原 健司 生塩 典敬 梅垣 岳志 江川 裕子 榎本 有希 太田 浩平 大地 嘉史 大野 孝則 谷口 巧 大邉 寛幸 岡 和幸 岡田 信長 岡田 遥平 岡野 弘 岡本 潤 奥田 拓史 小倉 崇以 小野寺 悠 小山 雄太 鶴田 良介 貝沼 関志 加古 英介 柏浦 正広 加藤 弘美 金谷 明浩 金子 唯 金畑 圭太 狩野 謙一 河野 浩幸 菊谷 知也 土井 研人 菊地 斉 城戸 崇裕 木村 翔 小網 博之 小橋 大輔 齊木 巌 堺 正仁 坂本 彩香 佐藤 哲哉 志賀 康浩 土井 松幸 下戸 学 下山 伸哉 庄古 知久 菅原 陽 杉田 篤紀 鈴木 聡 鈴木 祐二 壽原 朋宏 其田 健司 高氏 修平 中田 孝明 高島 光平 高橋 生 高橋 洋子 竹下 淳 田中 裕記 丹保 亜希仁 角山 泰一朗 鉄原 健一 徳永 健太郎 富岡 義裕 中根 正樹 冨田 健太朗 富永 直樹 豊﨑 光信 豊田 幸樹年 内藤 宏道 永田 功 長門 直 中村 嘉 中森 裕毅 名原 功 藤島 清太郎 奈良場 啓 成田 知大 西岡 典宏 西村 朋也 西山 慶 野村 智久 芳賀 大樹 萩原 祥弘 橋本 克彦 旗智 武志 小倉 裕司 細川 直登 浜崎 俊明 林 拓也 林 実 速水 宏樹 原口 剛 平野 洋平 藤井 遼 藤田 基 藤村 直幸 舩越 拓 升田 好樹 堀口 真仁 牧 盾 増永 直久 松村 洋輔 真弓 卓也 南 啓介 宮崎 裕也 宮本 和幸 村田 哲平 柳井 真知 松嶋 麻子 矢野 隆郎 山田 浩平 山田 直樹 山本 朋納 吉廣 尚大 田中 裕 西田 修 日本版敗血症診療ガイドライン2020特別委員会 松田 直之 山川 一馬 原 嘉孝 大下 慎一郎 青木 善孝 稲田 麻衣 梅村 穣 矢田部 智昭 河合 佑亮 近藤 豊 斎藤 浩輝 櫻谷 正明 對東 俊介 武田 親宗 寺山 毅郎 東平 日出夫 橋本 英樹 林田 敬 安宅 一晃 一二三 亨 廣瀬 智也 福田 龍将 藤井 智子 三浦 慎也 安田 英人 阿部 智一 安藤 幸吉 飯田 有輝 石原 唯史 井上 茂亮 井手 健太郎 伊藤 健太 伊藤 雄介 稲田 雄 宇都宮 明美 卯野木 健 遠藤 功二 大内 玲 尾崎 将之 小野 聡 射場 敏明 桂 守弘 川口 敦 川村 雄介 工藤 大介 久保 健児 倉橋 清泰 櫻本 秀明 下山 哲 鈴木 武志 関根 秀介 垣花 泰之 関野 元裕 高橋 希 高橋 世 高橋 弘 田上 隆 田島 吾郎 巽 博臣 谷 昌憲 土谷 飛鳥 堤 悠介 川崎 達也 内藤 貴基 長江 正晴 長澤 俊郎 中村 謙介 西村 哲郎 布宮 伸 則末 泰博 橋本 悟 長谷川 大祐 畠山 淳司 久志本 成樹 原 直己 東別府 直紀 古島 夏奈 古薗 弘隆 松石 雄二朗 松山 匡 峰松 佑輔 宮下 亮一 宮武 祐士 森安 恵実
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.28, 2020
被引用文献数
2

<p>日本集中治療医学会と日本救急医学会は,合同の特別委員会を組織し,2016 年に発表した日本版敗血症診療ガイドライン(J-SSCG) 2016 の改訂を行った。本ガイドライン(J-SSCG 2020)の目的は,J-SSCG 2016 と同様に,敗血症・敗血症性ショックの診療において,医療従事者が患者の予後改善のために適切な判断を下す支援を行うことである。改訂に際し,一般臨床家だけでなく多職種医療者にも理解しやすく,かつ質の高いガイドラインとすることによって,広い普及を目指した。J-SSCG 2016 ではSSCG 2016 にない新しい領域[ICU-acquired weakness( ICU-AW)と post-intensive care syndrome(PICS),体温管理など]を取り上げたが,J-SSCG 2020 では新たに注目すべき4 領域(Patient-and Family-Centered Care,sepsis treatment system,神経集中治療,ストレス潰瘍)を追加し,計22 領域とした。重要な118 の臨床課題(clinical question:CQ)をエビデンスの有無にかかわらず抽出した。これらのCQ には,本邦で特に注目されているCQ も含まれる。多領域にわたる大規模ガイドラインであることから,委員25 名を中心に,多職種(看護師,理学療法士,臨床工学技士,薬剤師)および患者経験者も含めたワーキンググループメンバー,両学会の公募によるシステマティックレビューメンバーによる総勢226 名の参加・協力を得た。また,中立的な立場で横断的に活躍するアカデミックガイドライン推進班をJ-SSCG 2016 に引き続き組織した。将来への橋渡しとなることを企図して,多くの若手医師をシステマティックレビューチーム・ワーキンググループに登用し,学会や施設の垣根を越えたネットワーク構築も進めた。作成工程においては,質の担保と作業過程の透明化を図るために様々な工夫を行い,パブリックコメント募集は計2 回行った。推奨作成にはGRADE方式を取り入れ,修正Delphi 法を用いて全委員の投票により推奨を決定した。結果,118CQ に対する回答として,79 個のGRADE による推奨,5 個のGPS(good practice statement),18 個のエキスパートコンセンサス,27 個のBQ(background question)の解説,および敗血症の定義と診断を示した。新たな試みとして,CQ ごとに診療フローなど時間軸に沿った視覚的情報を取り入れた。J-SSCG 2020 は,多職種が関わる国内外の敗血症診療の現場において,ベッドサイドで役立つガイドラインとして広く活用されることが期待される。なお,本ガイドラインは,日本集中治療医学会と日本救急医学会の両機関誌のガイドライン増刊号として同時掲載するものである。</p>
著者
内藤 悦雄 黒田 泰弘
出版者
徳島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1995

先天性高乳酸血症は有機酸代謝異常症の中で最も頻度の高い疾患であり、本症の確定診断のためにはピルビン酸代謝関連酵素活性の測定が不可欠である。先天性高乳酸血症の自験例および酵素診断を依頼された他施設例の中で、ビタミンB_1、大量投与により臨床症状の改善と血中および髄液中の乳酸値の低下をきたした13症例の培養細胞について、ピルビン酸脱水素酵素複合体(PDHC)活性の詳細な検討を行った。すなわち反応液中のTPP濃度を一般に用いられる高濃度から組織内の生理的濃度まで変化させてPDHC活性を測定した。そのTPP濃度とPDHC活性との曲線によりPDHCのTPPに対する親和性の低下、すなわちビタミンB_1、反応性の有無を判定した。その結果13例中7例をビタミンB_1反応性PDHC異常症と診断しえた。ビタミンB_1反応性PDHC異常症例はビタミンB_1反応性高乳酸血症例の半数を占めており、本症の頻度が高いことが判明した。さらにそのうち3例の遺伝子解析を行い、3例ともE_1α遺伝子のアミノ酸置換を伴う点変異であった。すなわち2例はエクソン3の変異であり、1例は44番目のヒスチジンがアルギニンに、他の1例は88番目のグリシンがセリンにアミノ酸置換していた。3例目はエクソン8の263番目のアルギニンがグリシンに変異していた。これらの変異に対してはPCRと制限酵素を用いた遺伝子診断が可能であった。これらの方法により、2例は突然変異であり、また1例は母親由来の変異遺伝子によることが判明した。PDHCのTPPに対する親和性が正常であったビタミンB_1反応性高乳酸血症の6例では、PDHCと同様にTPPを補酵素とするαケトグルタール酸脱水素酵素複合体および分岐鎖ケト酸脱水素酵素複合体の異常である可能性があり、今後これらの検討が必要である。

1 0 0 0 OA 脳神経蘇生

著者
黒田 泰弘
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.364-372, 2018-05-15 (Released:2018-06-23)

てんかん重積状態,特に非痙攣性てんかん重積状態において,てんかん発作の管理,持続脳波モニタリングが重要である.脳梗塞超急性期における血栓溶解療法のtime windowが発症後4.5時間まで延長された.脳梗塞超急性期において,条件を満たした場合に,rt-PA投与に加えてステント型血栓回収機器を用いた再開通療法が勧められる.一過性神経発作(TNA)例においては椎骨脳底動脈系脳梗塞の発症リスクに注意する.敗血症関連脳症は,感染による全身性反応の結果として生じたびまん性脳機能障害で,昏睡もしくはせん妄を呈する.重症熱中症では,呼吸・循環を含む全身管理とともに体内冷却を併用し,ICU管理を行うことが望ましい.
著者
宮崎 雅仁 西條 隆彦 森 健治 田山 正伸 内藤 悦雄 橋本 俊顕 黒田 泰弘 埜中 征哉
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.65-70, 1991-01-01 (Released:2011-08-10)
参考文献数
20

Epilepsia partialis continuaを呈したmitochondrial myopathy, encephalopathy, lactic acidosis, and strokelike episodes (MELAS) の14歳1カ月男児例を報告した.本症例は8歳時に自家中毒様の反復する腹痛および嘔吐で発症し, 10歳7カ月, 10歳9カ月, 14歳1カ月の3回にわたりミオクロニー発作, 一過性の片麻痺などの脳卒中様症状を認めた.14歳1カ月時はepilepsia partialis continuaを呈し, 10日間にわたり, 脳波上, 右中心部に出現する棘波に同期する左前腕のミオクロニー発作が持続した.血液および髄液中の乳酸・ピルビン酸の上昇, 頭部CTでの両側側頭部の低吸収域, 生検筋ではragged-red fiberが認められた.
著者
藤井 良知 阿部 敏明 田島 剛 寺嶋 周 目黒 英典 森 淳夫 佐藤 肇 新納 憲司 砂川 慶介 横田 隆夫 秋田 博伸 岩田 敏 佐藤 吉壮 豊永 義清 石原 俊秀 佐野 友昭 中村 弘典 岩井 直一 中村 はるひ 宮津 光伸 渡辺 祐美 久野 邦義 神谷 齊 北村 賢司 庵原 俊昭 桜井 實 東 英一 伊藤 正寛 三河 春樹 久保田 優 百井 亨 細井 進 中戸 秀和 西村 忠史 杉田 久美子 青木 繁幸 高木 道生 小林 陽之助 東野 博彦 木野 稔 小林 裕 春田 恒和 黒木 茂一 大倉 完悦 岡田 隆滋 古川 正強 黒田 泰弘 武田 英二 伊藤 道徳 松田 博 石川 純一 貴田 嘉一 村瀬 光春 倉繁 隆信 森田 秀雄 森澤 豊 浜田 文彦 辻 芳郎 横尾 哲也 林 克敏 冨増 邦夫 木戸 利彦 上原 豊 森 淳子 森 剛一 内田 哲也 大塚 祐一 本廣 孝 半田 祥一 山田 秀二 沖 眞一郎 吉永 陽一郎 荒巻 雅史 織田 慶子 阪田 保隆 加藤 裕久 山下 文雄 今井 昌一 鈴木 和重 岡林 小由理 金子 真也 市川 光太郎 曽田 浩子 清水 透子 長田 陽一 木葉 万里江 石橋 紳作 高橋 耕一 杉山 安見児 三宅 巧 荒木 久昭 垣迫 三夫 前野 泰樹 下飛田 毅 高岸 智也 松隈 義則 平田 知滋 田中 信夫 永山 清高 安岡 盟 林 真夫 天本 正乃 津村 直幹 小野 栄一郎 神薗 慎太郎 中嶋 英輔 永光 信一郎 野正 貴予 松尾 勇作 樋口 恵美 長井 健祐 末吉 圭子 橋本 信男 弓削 健 久保田 薫 川上 晃 渡辺 順子 藤澤 卓爾 西山 亨 岩永 理香子 牛島 高介 山川 良一 山村 純一 富永 薫 臺 俊一 安藤 寛 久田 直樹 藤本 保 元山 浩貴 丸岡 隆之 伊達 是志 杉村 徹 西依 淳 朝木野 由紀 山田 克彦 是松 聖悟 早川 広史 佐々木 宏和 木村 光一 山田 孝
雑誌
The Japanese journal of antibiotics (ISSN:03682781)
巻号頁・発行日
vol.48, no.7, pp.921-941, 1995-07-01
被引用文献数
19