著者
河井 信行 畠山 哲宗 田宮 隆
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.185-194, 2016 (Released:2017-03-25)
参考文献数
17
被引用文献数
1

脳外傷後の身体障害が軽い患者では, 外見からは高次脳機能障害が時にわかりにくく, 「見えない障害, 隠れた障害」 などと称される. 外見上は良好に回復しているものの, 社会生活への適応が障害されており, 実際の生活や社会に帰って初めて問題が顕在化し, 結果的に元の学校や職場に戻ることができないこともしばしばある. 本稿では, 脳神経外科医が知っておくべき脳外傷後高次脳機能障害の特徴と診断として, ①急性期の意識障害の正確な記載と早期の画像診断の重要性, ②診断困難例における頭部SPECTやPETなどの機能的画像診断法の有用性, ③自動車運転再開における脳神経外科医の役割について概説する. 脳外傷後高次脳機能障害の病態を正しく理解し診断や治療方針を決めるとともに, 社会参加への適切な判断や指導における脳神経外科医の役割が今後さらに高まると思われる.
著者
河井 信行 畠山 哲宗 三宅 啓介 田宮 隆
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.1084-1092, 2021-09-10

Point・頭部外傷患者の急性期診療にあたり,高次脳機能障害に関して下記の点に留意する.・意識は「意識清明度(覚醒状態)」と「意識内容」の2つの要素で構成されており,覚醒状態のみで「意識清明」と判断しない.・早期にCTのみならずMRI(急性期には拡散強調像やFLAIR像,亜急性〜慢性期にはT2*像や磁化率強調像)を行い,微細な損傷を含め器質性病変の検出に努める.・急性症候性発作とてんかんを混同して「脳外傷後てんかん」と安易に診断しない.・軽症を含め,すべての頭部外傷患者に高次脳機能障害が発症する可能性について,患者・家族に説明する.
著者
黒田 泰弘 山下 進 中村 丈洋 河北 賢哉 西山 佳宏 河井 信行 内野 博之
出版者
一般社団法人 日本救急医学会
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.17, no.5, pp.167-176, 2006

ヒト蘇生後脳症においてKety-Schmidt法,washout法,positron emission tomographyにより測定された脳循環代謝量と,Safarの蘇生後脳循環障害の時間的stageをまとめ,予後との関係を述べる。臨床では,蘇生直後-1時間後における脳循環代謝量を測定できないので,stage I (no reflow)およびstage II (early postischemic hyperemia)の存在は不明である。蘇生後24時間以内のstage III (delayed postischemic hypoperfusion)では脳血流量は正常もしくは低下する。しかし,「hypoperfusionにもかかわらず脳酸素消費量の増加状態」を特徴とするSafarの報告と異なり,とくに予後不良の症例においては,実際に脳酸素消費量は低値で,脳酸素消費量の低下が脳血流量の低下よりも相対的に著明である。蘇生後24時間以後のstage IVでは,一過性のsecondary hyperemiaを呈する場合,持続するhypoperfusionを呈する場合,極度の脳代謝量低値が持続する場合,は予後不良と関係する可能性がある。意識回復例では蘇生後7日以降に脳酸素代謝が回復してくるので,蘇生後7日以内では予後を脳酸素消費量の値から推定することは難しい。