著者
黒田 泰弘 山下 進 中村 丈洋 河北 賢哉 西山 佳宏 河井 信行 内野 博之
出版者
一般社団法人 日本救急医学会
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.17, no.5, pp.167-176, 2006

ヒト蘇生後脳症においてKety-Schmidt法,washout法,positron emission tomographyにより測定された脳循環代謝量と,Safarの蘇生後脳循環障害の時間的stageをまとめ,予後との関係を述べる。臨床では,蘇生直後-1時間後における脳循環代謝量を測定できないので,stage I (no reflow)およびstage II (early postischemic hyperemia)の存在は不明である。蘇生後24時間以内のstage III (delayed postischemic hypoperfusion)では脳血流量は正常もしくは低下する。しかし,「hypoperfusionにもかかわらず脳酸素消費量の増加状態」を特徴とするSafarの報告と異なり,とくに予後不良の症例においては,実際に脳酸素消費量は低値で,脳酸素消費量の低下が脳血流量の低下よりも相対的に著明である。蘇生後24時間以後のstage IVでは,一過性のsecondary hyperemiaを呈する場合,持続するhypoperfusionを呈する場合,極度の脳代謝量低値が持続する場合,は予後不良と関係する可能性がある。意識回復例では蘇生後7日以降に脳酸素代謝が回復してくるので,蘇生後7日以内では予後を脳酸素消費量の値から推定することは難しい。