著者
大川 智子 山口 由衣 石田 修一 堀田 亜紗 藤田 浩之 相原 道子
出版者
日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
雑誌
皮膚の科学 (ISSN:13471813)
巻号頁・発行日
vol.12, no.3, pp.212-218, 2013 (Released:2013-10-05)
参考文献数
39

44歳,男性。両側精巣腫瘍,S状結腸癌の既往がある。上腹部に激痛が生じた翌日に,顔面,体幹部に発赤を伴う小丘疹と小水疱,および口腔内水疱が出現した。Tzanck 試験は陽性であった。激烈な腹痛を伴うことから,内臓播種性水痘・帯状疱疹ウイルス (VZV) 感染症を疑い,アシクロビル (acyclovir; ACV) 750mg/day 開始したが,症状の改善は乏しく,肝機能の悪化,DICを合併した。第4病日より ACV 1,500mg/day に増量,Intravenous immunoglobulin (IVIG) 5,000mg/day(5日間)を追加し,症状は次第に改善した。経過中,血中 VZV-DNA 量が髙値であり,内臓播種性 VZV 感染症と診断した。本疾患は急速に進行し,ときに致死的である。水痘に腹部症状を伴う場合,本疾患を疑い,早期に大量の ACV や IVIG による治療をおこなうことが重要と考えた。(皮膚の科学,12: 212-218, 2013)
著者
大川 智子
出版者
横浜市立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究は、アトピー性皮膚炎におけるコラーゲントリペプチドの効果を検討した。申請者はこれまで、乾燥肌モデルマウスにおいてコラーゲントリペプチドが真皮のヒアルロン酸のヒアルロン酸産生を促し、乾燥にともなう痒みを改善することを明らかにした。その機序を明らかにするために本研究では、炎症性サイトカインであるIL-13、TNF-α、IFN-γを添加したヒト表皮角化細胞にコラーゲントリペプチドを添加し、TARC、TSLPの産生を測定することにより、コラーゲントリペプチドが炎症時の表皮角化細胞に与える影響について解析を行った。TARCの産生をRT-PCRで測定した結果、コラーゲントリペプチドを添加していない表皮角化細胞と比べて、TARCの産生が抑制されていた。また、TSLPについても同様の結果が得られた。ELISA法でTARCの蛋白定量を行った結果、コラーゲントリペプチドにより表皮角化細胞のTARCが低下する傾向がみられたが、有意差はみられなかった。同様に、TSLPをウエスタンブロット法で確認したところ、コラーゲントリペプチドの添加によりTSLPのタンパク量が減少することが明らかになった。さらに、13人のアトピー性皮膚炎患者に対して、コラーゲントリペプチド(7人)、コラーゲンペプチド(6人)を12週間投与し、SCORAD、角質水分量、痒みの評価、血清中のTARC、IgE、LDHおよび好酸球数を測定した。その結果、コラーゲントリペプチド投与群でのみ、内服投与開始前と比べて皮疹面積、SCORAD、TEWLが改善していた。コラーゲントリペプチド群では投与前と比べてTARCの減少がみられた。血清中のIgE、LDHおよび好酸球数についてはいずれの群でも投与前後で有意差は認めなかった。
著者
鹿毛 勇太 磯田 祐士 大川 智子 渡邉 裕子 金岡 美和 相原 道子
出版者
医学書院
雑誌
臨床皮膚科 (ISSN:00214973)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.31-35, 2017-01-01

要約 70歳,男性.右上顎洞悪性黒色腫術後に全身の紅斑が出現した.皮疹出現より4日目に発熱と皮疹が急速に増悪し,Stevens-Johnson症候群と診断した.被疑薬はすべて中止し,ベタメタゾン8mg/日の点滴を開始し,翌日よりステロイドパルス療法を施行したが病勢が進行し,表皮剝離が進行したため,中毒性表皮壊死症(toxic epidermal necrolysis:TEN)と診断した.集中治療室に転棟し,全身処置を行いながら血漿交換療法,大量免疫グロブリン静注療法を併用した.最大表皮剝離面積は80%に及んだが,16日目より皮疹の改善がみられ,32日目には完全に上皮化し,後遺症を残さず治癒した.TENの急速進行期では,各種の免疫調整効果を組み合わせた治療が有効であると考えた.