著者
針谷 毅 平尾 哲二 勝山 雅子 市川 秀之 相原 道子 池澤 善郎
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.49, no.6, pp.463-471, 2000-06-30 (Released:2017-02-10)
参考文献数
15
被引用文献数
4

アトピー性皮膚炎(AD)は心理的, 身体的ストレスによって皮膚症状が悪化することが臨床の場で知られている.本研究ではAD患者の皮膚症状を2週間毎の外来受診時にスコア化して記録すると共に, 皮膚生理指標や常在菌叢, 心理, 気分指標を患者毎に経時的に測定・検査し, それらの関連性について検討した.心理・気分指標としてはPOMS(profile of mood states)を用い, さらに患者には毎日VAS(visual analogue scale)を用いて疲労やストレス度合い, 主観的な肌の状態などを記録させた.同一患者で2ヶ月以上, 上記について検討可能であった患者18名を対象に各指標間の相関性を中心に解析した結果, POMSの抑うつ-落ち込みや緊張-不安の得点と皮膚症状スコア, 角層水分量, 総菌数との相関性が高い傾向にあり, VASによる患者のストレスの程度とかゆみなどの皮膚症状も相関する傾向を示した.以上の検討からAD患者では抑うつや緊張傾向が高まるなどの心理的なストレスや疲労などの身体的なストレスの有無と皮膚炎の増悪寛解とが互いに関連していることが示された.
著者
種子島 智彦 池田 信昭 井上 雄介 相原 道子
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.207-210, 2014-03-01

要約 26歳,男性.5年前より口唇に疼痛を伴う水疱形成を繰り返していた.2008年8月中旬,左口唇に小水疱が出現した.近医にて口唇ヘルペスを疑われバラシクロビルを処方されたが改善しなかったため,当科を受診した.肛門,亀頭部にもびらんがみられTzanckテストを施行したが陰性であった.その後,自然軽快した.以後2回ほど同様の皮疹が出現し,下顎,両手背に有痛性の紅斑も出現するようになったが自然軽快した.2011年4月中旬,同症状が再度出現し,詳細な問診の結果,トニックウォーターを含むカクテルの摂取後に症状が出現していたことが明らかになった.ジントニック1杯に含まれるトニックウォーターの半量(60ml)による誘発試験を施行したところ,摂取2時間後に症状が出現し,トニックウォーターによる固定疹と診断した.薬剤内服歴のない若年者に同部位に繰り返す皮疹を認めた場合,トニックウォーターによる固定疹も鑑別に挙げることが重要であると考えた.
著者
中村 和子 相原 道子 三谷 直子 田中 良知 池澤 善郎
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.115, no.12, pp.1779-1790, 2005-11-20 (Released:2014-12-10)
被引用文献数
4

本邦でDrug-induced hypersensitivity syndrome(DIHS)として報告された症例94例(8カ月~89歳,平均48.2歳,男性50例,女性44例)について臨床的特徴およびウイルスの再活性化について検討した.94例中,DIHS診断基準(案)による典型DIHSが34例,非典型DIHSが50例,HHV-6の再活性化はみられたが,診断基準の1から5のいずれか一つを満たさない症例が10例であった.原因薬剤では抗痙攣薬が62例(63.2%)を占め,なかでもカルバマゼピンが40例と最も多かった.その他塩酸メキシレチン,アロプリノール,DDSなどが多かったが,これまで原因薬剤として注目されていない抗菌薬やシアナマイドなどによるものが10例みられた.投薬から発症までの期間は平均34.5日であり,2カ月を超えるものが8例みられた.皮疹は紅斑丘疹型と紅皮症型が多くを占めた.顔面の腫脹や膿疱,水疱を伴う症例がみられた.経過中の症状再燃は43.3%にみられた.検査異常の出現率は肝障害96.8%,白血球増多86.7%,好酸球増多69.7%,異型リンパ球出現78.9%であった.腎障害5例,呼吸器障害,心筋障害がそれぞれ2例みられた.Human herpesvirus 6(HHV-6)の再活性化は94例中77例でみられ,投薬期間が長い症例でHHV-6の再活性化の頻度が高かった.HHV-7は19例中10例で,Cytomegalovirusは15例中8例で,Epstein-Barr virusは7例中1例で再活性を認め,多くはHHV-6の再活性化を伴っていた.死亡例は4例で,全例HHV-6の再活性化を認め,心筋炎や多臓器障害,敗血症などで死亡した.HHV-6の再活性化と臨床像の関係については,活性化の証明された症例とされなかった症例の間に,発症までの投薬期間を除き有意な差はみられなかった.
著者
大川 智子 山口 由衣 石田 修一 堀田 亜紗 藤田 浩之 相原 道子
出版者
日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
雑誌
皮膚の科学 (ISSN:13471813)
巻号頁・発行日
vol.12, no.3, pp.212-218, 2013 (Released:2013-10-05)
参考文献数
39

44歳,男性。両側精巣腫瘍,S状結腸癌の既往がある。上腹部に激痛が生じた翌日に,顔面,体幹部に発赤を伴う小丘疹と小水疱,および口腔内水疱が出現した。Tzanck 試験は陽性であった。激烈な腹痛を伴うことから,内臓播種性水痘・帯状疱疹ウイルス (VZV) 感染症を疑い,アシクロビル (acyclovir; ACV) 750mg/day 開始したが,症状の改善は乏しく,肝機能の悪化,DICを合併した。第4病日より ACV 1,500mg/day に増量,Intravenous immunoglobulin (IVIG) 5,000mg/day(5日間)を追加し,症状は次第に改善した。経過中,血中 VZV-DNA 量が髙値であり,内臓播種性 VZV 感染症と診断した。本疾患は急速に進行し,ときに致死的である。水痘に腹部症状を伴う場合,本疾患を疑い,早期に大量の ACV や IVIG による治療をおこなうことが重要と考えた。(皮膚の科学,12: 212-218, 2013)
著者
篠田 純子 松倉 節子 久田 恭子 守田 亜希子 中村 和子 山川 有子 相原 道子 蒲原 毅
出版者
一般社団法人 日本皮膚アレルギー・接触皮膚炎学会
雑誌
日本皮膚アレルギー・接触皮膚炎学会雑誌 (ISSN:18820123)
巻号頁・発行日
vol.10, no.3, pp.225-231, 2016-07-30 (Released:2016-09-01)
参考文献数
12

柑橘類によるアレルギーの4例を経験した。すべて柑橘類単独でなく,他の果物野菜のoral allergy syndromeを伴っていた。感作花粉はさまざまで,4例中スギが3例,シラカンバ・ハンノキは2例,イネ科花粉は1例,ほかにブタクサ1例,ヨモギ1例であった。プリックテストでは,施行した3例全例においてBet v2が陽性であったことから,プロフィリンの関与が強く示唆された。柑橘類アレルギー患者においてプロフィリン抗体陽性の場合,海外ではイネ科花粉感作の報告が多くみられるが,自験例ではイネ科花粉感作は1例のみであり,シラカンバ・ハンノキ花粉やヨモギ,ブタクサとの交叉反応の可能性が考えられた。また,スギ花粉は3例で陽性であったことや過去の報告から,スギとの交叉反応の可能性も否定できないと考えられた。また,1例については,花粉症はみられたものの,アナフィラキシー症状がみられ重篤であったことから,LTPの関与も否定できないと考えられた。
著者
髙橋 沙希 和田 秀文 白田 阿美子 渡邊 友也 蒲原 毅 向井 佑希 小池 泉 相原 道子
出版者
日本皮膚悪性腫瘍学会
雑誌
Skin Cancer (ISSN:09153535)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.179-184, 2019 (Released:2019-02-28)
参考文献数
18

症例1:66歳,男性。26歳時に菌状息肉症と診断されるも通院を中断。65歳時より紅斑が隆起しエトレチナート内服と紫外線照射を開始したが改善乏しく当科を受診。顔面と上肢に結節,潰瘍があり閉眼困難な状態。症例2:66歳,男性。21歳時に乾癬と診断。ステロイド外用・内服治療したが,緑内障を契機に中断。61歳時に体幹の皮疹が隆起し,潰瘍を形成し当科を受診。2例とも菌状息肉症腫瘍期と診断。低用量エトポシド内服と腫瘤病変への局所電子線照射の併用で潰瘍・腫瘤は数ヵ月で上皮化・平坦化した。治療に伴う重大な副作用は認めず,比較的短期間で患者のQOL向上を得た。近年,菌状息肉症に対する複数の新規治療薬が本邦でも発売され全身療法の選択肢が広がりつつある。一方でエトポシドのような古典的な抗癌剤でも電子線との併用で本報告のように著効が期待できる症例もある。併用療法が効果を示す機序はまだ不明であり,今後,症例数を蓄積する必要があると考える。
著者
泉 佳菜子 相原 道子 池澤 善郎
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.58, no.12, pp.1629-1639, 2009-12-31 (Released:2017-02-10)
参考文献数
42
被引用文献数
3

【背景・目的】食物依存性運動誘発アナフィラキシー(FDEIA)においてNSAIDsは症状の誘発や悪化に関与することが知られている.食物アレルギーにおけるNSAIDsの影響を検討する.【方法】1999年〜2008年におけるNSAIDsの増強効果がみられた即時型食物アレルギー患者の本邦論文報告例の臨床的解析を行った.【結果】全47例中食物摂取のみで症状が誘発されるもの5例,FDEIA33例,食物摂取にNSAIDs投与が加わって症状が誘発されるが食物摂取に運動負荷を加えても発症しないもの9例の報告がみられた.原因食物はいずれの群も小麦が最多であり,グルテン特異的IgE抗体の存在が示されたことからグルテンはNSAIDsの影響を最も受けやすい食物アレルゲンと考えられた.【結語】食物アレルギー反応による症状誘発の閾値がNSAIDsにより低下することが示唆された.FDEIAの一部は食物とNSAIDsで誘発されるが,食物とNSAIDsによる発症に運動の関与しない症例の存在が示された.
著者
田中 理子 猪又 直子 松浦 みどり 石田 修一 鈴木 亜希 蘇原 瑞恵 相原 道子
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.63, no.9, pp.1258-1264, 2014-11-01 (Released:2017-02-10)

20歳女性.感冒のためジェルカプセルの市販感冒薬を内服開始後5日目に,ヨーグルト摂取後に同薬を内服し,その5分後より頸部に熱感や〓痒を自覚した.次第に全身の潮紅,腹痛,呼吸苦が出現し意識を消失したため,前医に救急搬送された.アナフィラキシーショックの疑いで当科に紹介受診となった.血液検査でImmunoCAP^[○!R]ではゼラチンがclass 4,牛乳は陰性であった.プリックテストでは牛乳は陰性で感冒薬が陽性となった.感冒薬の全成分のプリックテストではゼラチンのみ陽性であり,感冒薬のカプセル成分であるゼラチンによるアナフィラキシーと診断した.ゼラチンアレルギーは,日本では1994年〜2000年頃,乳児期のゼラチン含有DPTワクチン接種によりゼラチンに感作された症例が多く報告されたが,自験例はゼラチン含有DPTワクチン接種後もゼラチン食品摂取での誘発はなく,感冒薬内服による感作が疑われた.ワクチンのゼラチンフリー化が進みアレルギーの報告は著減しているが,薬剤への添加により発症の可能性があるため注意が必要である.
著者
小林 照子 山田 正子 相原 道子 池澤 善郎
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.126-133, 2006-02-28 (Released:2017-02-10)
参考文献数
19
被引用文献数
1

【目的】AD患者のカンジダ,マラセチアに対する即時型,遅延型反応の結果と抗真菌療法の効果について検討した.【方法】AD患者にカンジダ,マラセチアのプリックテスト(SPT)を施行し即時型および遅延型反応陽性者にアンフォテリシンB (AMPH),イトラコナゾール(ITCZ)による抗真菌療法を行い,前後の重症度スコアを検討した.【結果】40例中カンジダで28例,マラセチアで30例が即時型陽性,遅延型は測定し得た27例中それぞれ10例と4例が陽性であった.カンジダでは遅延型陽性例でRAST値が低く陰性例で高い傾向がみられた.SPT即時型陽性例に対するAMPH,ITCZの投与群全体では両剤ともにADの重症度スコアは有意差をもって改善された.ITCZ有効群は無効群に比べマラセチアに対するSPTの反応が強く認められ,マラセチアのみ陽性の群ではITCZは1例を除き全例で有効であった.【考察】真菌アレルギーはADの悪化因子の一つと考えられ,SPTは真菌アレルギーの評価と薬剤選択に際し有用な手段と考えられた.
著者
鹿毛 勇太 磯田 祐士 大川 智子 渡邉 裕子 金岡 美和 相原 道子
出版者
医学書院
雑誌
臨床皮膚科 (ISSN:00214973)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.31-35, 2017-01-01

要約 70歳,男性.右上顎洞悪性黒色腫術後に全身の紅斑が出現した.皮疹出現より4日目に発熱と皮疹が急速に増悪し,Stevens-Johnson症候群と診断した.被疑薬はすべて中止し,ベタメタゾン8mg/日の点滴を開始し,翌日よりステロイドパルス療法を施行したが病勢が進行し,表皮剝離が進行したため,中毒性表皮壊死症(toxic epidermal necrolysis:TEN)と診断した.集中治療室に転棟し,全身処置を行いながら血漿交換療法,大量免疫グロブリン静注療法を併用した.最大表皮剝離面積は80%に及んだが,16日目より皮疹の改善がみられ,32日目には完全に上皮化し,後遺症を残さず治癒した.TENの急速進行期では,各種の免疫調整効果を組み合わせた治療が有効であると考えた.
著者
相原 道子 相原 雄幸 池澤 善郎
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.115, no.2, pp.135-143, 2005-02-20 (Released:2014-12-10)

Stevens-Johnson症候群(SJS)の本邦報告例を小児例と成人例に分けて集計し,検討した.1981年から2004年2月までに報告された症例のうち小児123例(11カ月~15歳,男女比1:0.6),成人208例(16歳~79歳,男女比1:1.5)を調査対象とした.SJSの原因と考えられたものは,小児では薬剤が48.8%,感染症が39.8%,成人では薬剤が76.9%,感染症が12.5%であり,小児で感染症の比率が高かった.小児,成人ともに原因薬剤は抗けいれん薬が,感染症はマイコプラズマ感染が最も多く,小児ではマイコプラズマ感染がSJS全体の原因の27.6%を占め,成人の5.7%より多かった.臓器障害は小児,成人とも肝障害,呼吸器障害が多くその頻度に差はみられなかった.遷延化した病変は小児,成人ともに眼病変(小児13.8%,成人12.0%),呼吸器障害(小児5.7%,成人5.3%)の順に多く,小児に特徴的なものとしては歯牙の形成障害がみられた.死亡率は小児0.8%,成人8.2%であり,マイコプラズマ感染によるSJSで中毒性表皮壊死症(TEN)に移行した症例はみられなかった.治療はステロイド剤の全身投与が83.9%に行われ,有効であった.以上より,小児のSJSは成人SJSよりマイコプラズマ感染症が原因となることが多く,臓器障害や遷延化病変の発症率は成人と比較して低くはないが,死亡率は低いことが明らかとなった.
著者
渡邉 裕子 蒲原 毅 佐野 沙織 白田 阿美子 小野田 雅仁 池澤 善郎 相原 道子
出版者
Japanese Dermatological Association
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.122, no.9, pp.2321-2327, 2012

58歳,男性.25歳時に尋常性乾癬が発症し,33歳時に霧視の自覚と共に非肉芽腫性前部ぶどう膜炎がみられ乾癬性ぶどう膜炎と診断された.シクロスポリン内服で加療されたが治療に難渋し,58歳時に膿疱性乾癬が発症した.シクロスポリンを中止しインフリキシマブを開始後,皮膚症状と共に眼症状の著明な改善が得られた.再発性,難治性の乾癬性ぶどう膜炎に対しインフリキシマブは有効な治療法と考えられた.自験例および本邦における乾癬性ぶどう膜炎のまとめでは,初発症状は,視力低下が最も多く,次いで霧視,充血,眼痛の順に多くみられた.ぶどう膜炎発症時の乾癬の臨床病型は,関節症性乾癬が31例中13例(42%)と最も多く,次いで尋常性乾癬が31例中10例(32%),膿疱性乾癬が31例中7例(23%)であった.乾癬性ぶどう膜炎患者の25例中23例(92%)で関節症状がみられ,23例中22例(96%)でHLA-A2がみられた.ぶどう膜炎に対し皮疹出現の先行例が約90%にみられ,皮疹出現から長期経過後にぶどう膜炎が生じている例が多かった.関節症状とHLA-A2を有する乾癬では,ぶどう膜炎を合併する危険性があり注意が必要と考えられた.