著者
鹿毛 勇太 磯田 祐士 大川 智子 渡邉 裕子 金岡 美和 相原 道子
出版者
医学書院
雑誌
臨床皮膚科 (ISSN:00214973)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.31-35, 2017-01-01

要約 70歳,男性.右上顎洞悪性黒色腫術後に全身の紅斑が出現した.皮疹出現より4日目に発熱と皮疹が急速に増悪し,Stevens-Johnson症候群と診断した.被疑薬はすべて中止し,ベタメタゾン8mg/日の点滴を開始し,翌日よりステロイドパルス療法を施行したが病勢が進行し,表皮剝離が進行したため,中毒性表皮壊死症(toxic epidermal necrolysis:TEN)と診断した.集中治療室に転棟し,全身処置を行いながら血漿交換療法,大量免疫グロブリン静注療法を併用した.最大表皮剝離面積は80%に及んだが,16日目より皮疹の改善がみられ,32日目には完全に上皮化し,後遺症を残さず治癒した.TENの急速進行期では,各種の免疫調整効果を組み合わせた治療が有効であると考えた.
著者
渡邉 裕子 蒲原 毅 佐野 沙織 白田 阿美子 小野田 雅仁 池澤 善郎 相原 道子
出版者
Japanese Dermatological Association
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.122, no.9, pp.2321-2327, 2012

58歳,男性.25歳時に尋常性乾癬が発症し,33歳時に霧視の自覚と共に非肉芽腫性前部ぶどう膜炎がみられ乾癬性ぶどう膜炎と診断された.シクロスポリン内服で加療されたが治療に難渋し,58歳時に膿疱性乾癬が発症した.シクロスポリンを中止しインフリキシマブを開始後,皮膚症状と共に眼症状の著明な改善が得られた.再発性,難治性の乾癬性ぶどう膜炎に対しインフリキシマブは有効な治療法と考えられた.自験例および本邦における乾癬性ぶどう膜炎のまとめでは,初発症状は,視力低下が最も多く,次いで霧視,充血,眼痛の順に多くみられた.ぶどう膜炎発症時の乾癬の臨床病型は,関節症性乾癬が31例中13例(42%)と最も多く,次いで尋常性乾癬が31例中10例(32%),膿疱性乾癬が31例中7例(23%)であった.乾癬性ぶどう膜炎患者の25例中23例(92%)で関節症状がみられ,23例中22例(96%)でHLA-A2がみられた.ぶどう膜炎に対し皮疹出現の先行例が約90%にみられ,皮疹出現から長期経過後にぶどう膜炎が生じている例が多かった.関節症状とHLA-A2を有する乾癬では,ぶどう膜炎を合併する危険性があり注意が必要と考えられた.