著者
大月 和宣
出版者
一般社団法人 日本消化器がん検診学会
雑誌
日本消化器集団検診学会雑誌 (ISSN:13454110)
巻号頁・発行日
vol.40, no.6, pp.542-546, 2002-11-15 (Released:2012-12-11)
参考文献数
16

非肥満者の脂肪肝例 (F群98例) と生活習慣病の関連について非脂肪肝例 (N群213例) と比較検討した。男性ではF群はほぼ正常値内ながらも総コレステロール, LDL-コレステロール, 中性脂肪, 空腹時血糖, 尿酸値が有意に高値であり, HDL-コレステロールは有意に低値を示し, 女性ではF群は HDL-コレステロールのみN群より有意に低値であった。男性において高脂血症, 耐糖能異常の割合もそれぞれF群70.0%, N群349% (p<0.0001), F群32.2%, N群17.8% (p=0.01) とF群は高率であった。脂肪肝発症を目的変数とし背景因子を説明変数としたロジスティック回帰分析ではBMIのみが有意で (p<0.0001), 相対危険度は1.76であった。以上より非肥満者における脂肪肝例は, 普通体重でもより適正な体重調節が必要と考えらた。
著者
圷 尚武 丸山 通広 大月 和宣 石田 健倫 齋藤 友永 西郷 健一 長谷川 正行 青山 博道 剣持 敬 野口 洋文
出版者
一般社団法人 日本臓器保存生物医学会
雑誌
Organ Biology
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.175-179, 2017

1型糖尿病に対する膵島移植が国内で始まったものの,依然として大きな問題はドナー不足である.その解決手段のひとつとして,心停止下ドナーのような,条件の悪いいわゆるマージナルドナーより採取された膵臓の有効な利用である.LifePort<sup>TM</sup>(LP)はOrgan Recovery Systems社により開発された臓器搬送用の持続冷却灌流装置であり,現在欧米において障害を伴った腎臓の搬送に臨床応用され,その有効性が確認されている.本装置はマージナルドナーから採取された臓器移植,特に虚血再潅流障害を受けやすい膵臓の保存に有用で,膵島移植の安全性や成績の向上に有効であると考えられる.本研究では,ビーグル犬を使用し,障害膵モデルより膵臓を摘出し,LPにより持続冷却灌流保存することにより,膵臓の障害が最小限に抑えられ,従来法であるUW液や2層法による浸漬保存に比べて分離膵島の収量や機能が改善でき,臨床膵島移植に応用し,成績向上に寄与することを目的とした.[方法]ビーグル犬から30分の温阻血時間をおいて全膵を摘出し,LPにて24時間持続冷却灌流保存(LP群),UW液にて24時間冷却浸漬保存(UW群),2層法にて24時間冷却浸漬保存(2層法群)し,膵島分離を行い,その形態・機能を比較検討した.[結果]形態的には,LP群でより大きく,形の良い膵島が分離できた.また,膵島収量については,純化前後でLP群においてUW群や2層法群に比べて良好であった.また,分離膵島のインスリン分泌能を評価するStatic Incubationの結果でも,LP群でUW群や2層法群に比べて良好な結果であった.[結論]心停止下ドナーよりの膵島移植を想定したモデルにおいて,LPによる障害膵の持続冷却灌流保存は,UW液や2層法による冷却浸漬保存に比べて,分離膵島の収量や機能保持に優れていることが示唆された.しかし,臨床応用のためには,さらなる保存条件や膵島分離法の改善が必要であると考えられた.