著者
大木 雄太
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.155, no.3, pp.145-148, 2020 (Released:2020-05-01)
参考文献数
22
被引用文献数
3 3

アルコールは,身近に存在する嗜癖性を有する物質であり,多量飲酒はアルコール依存症の発症につながりうる.アルコールをはじめ依存症形成に共通して重要と考えられているのは,脳内の報酬系回路といわれる中脳腹側被蓋野から側坐核に投射するドパミン神経系の活性化であり,側坐核におけるドパミンの遊離により快の情動が生じる.アルコール依存症においては,内因性オピオイドとその受容体であるオピオイド受容体が報酬系回路の制御に重要な役割を果たす.アルコールを摂取すると,腹側被蓋野や側坐核においてβ-エンドルフィンやダイノルフィンなどの内在性オピオイドペプチドが遊離される.β-エンドルフィンはμオピオイド受容体を活性化し,報酬系回路を賦活することで,正の強化効果を生じさせる.一方で,ダイノルフィンはκオピオイド受容体を活性化し,負の強化効果を生じさせる.アルコールによるオピオイド受容体を介したこれらの作用が,アルコールの摂取欲求を高め,アルコール依存症に関与すると考えられている.ナルメフェンはオピオイド受容体調節薬であり,オピオイド受容体に作用することで,報酬系回路を制御し,アルコール依存症患者における飲酒量低減効果を示すと考えられている.アルコール依存症の治療の原則は,断酒の継続であるが,近年は,ハームリダクションの概念が提唱され,ヨーロッパでは2013年からナルメフェンが飲酒量低減薬として使用されてきた.日本においても,アルコール依存症治療における飲酒量低減を治療目標に加えることが,2018年の治療ガイドラインにより示された.本総説では,最初に,アルコール依存症における脳内報酬系回路とオピオイド受容体との関連についてまとめ,次に,ナルメフェンの薬理学的作用について,非臨床試験及び臨床試験の結果をまとめる.
著者
柴崎 雛子 大木 雄太 國部 雅大
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集 第70回(2019) (ISSN:24241946)
巻号頁・発行日
pp.125_2, 2019 (Released:2019-12-20)

ラクロスの大きな特徴はクロスを用いてボールを扱うことにある。本研究では捕球技能に着目し、クロスを用いた捕球の特徴と競技レベルによる違いを検討することを目的とした。女子ラクロス選手13名(上位群6名、下位群7名)が、20m前方から投げられたボールをクロスおよび野球グローブを用いて捕球する課題を各条件10試行行った。捕球率・歩数・捕球地点までの動き方・頭頂部を基準とした捕球位置の高さなどの観点から分析した。その結果、捕球率はクロス条件で上位群88%・下位群70%、グローブ条件で上位群80%・下位群51%となり、下位群はグローブ条件で捕球率が下がる傾向にあった。更にクロス条件・グローブ条件いずれでも下位群の歩数は上位群より有意に多く、捕球位置までの動き方をみると1歩目を落下地点と逆方向に踏み出す傾向がみられた。頭頂部を基準とした捕球位置の高さは下位群が上位群に比べて有意に高く、頭上で捕球する傾向があることが分かった。以上のことから、下位群は上位群に比べ落下地点への到達に多くの歩数を要しており、ボールの軌道・落下地点の予測能力が低いことが示唆された。