著者
兄井 彰
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集 第70回(2019) (ISSN:24241946)
巻号頁・発行日
pp.126_1, 2019 (Released:2019-12-20)

本研究は、野球において重いバットでの素振りが、後続する標準の重さのバットでの打撃パフォーマンスに及ぼす影響を検討した。大学野球選手20名を対象に、基準運動として、900gの標準のバットで3球を実打させ、その後すぐに、先行運動として、重さの異なるいずれかのバット(900g、1050g、1200g)で5回素振りをさせ、さらに、後続運動として、900gの標準のバットで3球を実打させた。投球は、ストライクゾーンの中央付近にボールが集まるようにバッティングマシーンを調整し、球種はストレートで球速は、125km/hと105km/hとした。基準運動と後続運動での打撃について、打球の質(ヒット性のあたり)とインパクトの質(バットの軌道との一致)、スイングの質(フォロースルーの大きさ)という観点で、野球経験が10年以上の者3名が主観的に得点化した。その結果、両球速において、標準よりも重いバットでの素振り後では、主観的にバットを軽く、ボールを打ちやすく感じており、スイングの質が向上していた。しかし、早い球速では、打球の質、インパクトの質とも低下していた。また、遅い球速においては、打球の質及びインパクトの質に差は見られなかった。
著者
黒須 朱莉
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集 第70回(2019) (ISSN:24241946)
巻号頁・発行日
pp.103, 2019 (Released:2019-12-20)

本研究の「IOCにおける国歌国旗廃止案」とは、オリンピック競技大会における国歌や国旗を用いた儀礼を廃止しようとする案のことを指す。これまで、1953年から1974年までのIOC関連会議では、国歌国旗の廃止を求める提案が審議されてきたことが明らかになっている。この間の廃止案の展開は、第1期(1953-1957)国歌廃止案の提起、第2期(1960-1963)国歌廃止案に対するIFの賛同とIOC総会での支持の広がり、第3期(1965-1968)国歌国旗廃止案の提起とIOC総会での支持の広がり、第4期(1973-1974)IOC総会における国歌国旗廃止案の消滅に区分することができる。その後の国歌国旗廃止に関わる諸事実は、オリンピックを対象とした文献や研究の中で断片的に触れられているものの、廃止案の連続性という観点からの検討は行われていない。以上のことから、本発表では1974年に総会の審議事項から消滅した廃止案のその後の展開を、1975年から1981年までに定め、この間のIOC関連会議における国歌国旗廃止に関する提案の有無、及び提案と審議の内容を整理し、1974年以前との連続性を検討することを目的とする。
著者
藤田 恵理 清水 美穂 跡見 友章 長谷部 由紀夫 跡見 順子
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集 第70回(2019) (ISSN:24241946)
巻号頁・発行日
pp.155_3, 2019 (Released:2019-12-20)

身体は細胞と細胞が分泌する細胞外マトリクスからなる。老化や慢性炎症状態にある組織ではコラーゲンなどの細胞外マトリクスが沈着・線維化する。線維化した固い皮膚は身体の移動性を制限し日常の不活動の原因になりうるので、身体運動にとって重要である。卵殻膜は古くから東洋において皮膚治療への民間薬として使用されてきた。そこで我々は、可溶化卵殻膜を女性の皮膚に塗布したところ、腕の弾力性や顔のしわを有意に改善することを見出し、可溶化卵殻膜を塗布したマウス皮膚ではIII型コラーゲンが有意に増加した。さらに、特殊なMPCポリマーに結合した可溶化卵殻膜を付けた培養皿上でヒト皮膚線維芽細胞を培養する実験系を設計し、可溶化卵殻膜環境ではIII型コラーゲンなどの若い乳頭真皮を促進する遺伝子が誘導された。若い皮膚と同様のIII型/I型コラーゲン比(80%:20%)のゲルはI型コラーゲン100%ゲルよりも高い弾性をもたらし、そのゲル上のヒト皮膚線維芽細胞は高いミトコンドリア活性を示した。卵殻膜はIII型コラーゲン等の細胞外マトリクスの発現を誘導し、組織弾性の喪失を減少させることにより、身体活動を改善するために使用することができると考えられる。
著者
田中 彰吾
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集 第70回(2019) (ISSN:24241946)
巻号頁・発行日
pp.10_2, 2019 (Released:2019-12-20)

パフォーマンスの速さと正確性、チームワーク、他者との身体的相互作用などが競われる点で、eスポーツはそれ以外のスポーツと多くの共通点を持っている。ただし、すべてのパフォーマンスがコンピュータに媒介されている点(computer-mediatedness)は、他とは異なるeスポーツの顕著な特徴である。コンピュータ媒介性は、次の2点で競技者の身体活動のあり方に変化をもたらすと思われる。第一は「道具使用」である。競技中のほぼすべての活動は、手元のデバイスと眼前のモニターを利用してなされる。ボールゲームや体操における道具使用と比べて、eスポーツにおけるそれは、目と手の協調を限定的かつ極端に推進する。第二は「仮想現実」である。競技が行われる場所は、現実のフィールドではなくモニター上に展開される仮想現実である。競技者は一人称視点でフィールドに入り込んだり、俯瞰しつつフィールド全体にかかわったりするが、いずれにしても、仮想現実における仮想身体を利用しつつパフォーマンスが行われる。当日の報告では、以上の2点について、現象学的な観点からさらに踏み込んで読み解いてみたい。
著者
長谷川 伸
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集 第70回(2019) (ISSN:24241946)
巻号頁・発行日
pp.185_1, 2019 (Released:2019-12-20)

本研究では大学野球投手24名を対象として、投球側と非投球側の他動的肩関節可動域(外旋可動域、内旋可動域、総回旋可動域)とその両側差、および投球速度(最高速度、平均速度)の測定を行い、投球側と非投球側の肩関節可動域の特性、および肩関節可動域と投球速度の関係を明らかにすることを目的とした。その結果、投球側と非投球側の比較において、肩関節の外旋可動域では投球側が非投球側に対して有意に高い値を示し(p<0.001)、内旋可動域では非投球側が投球側に対して有意に高い値を示した(p<0.001)。また、肩関節可動域と投球速度の関係では、投球側の肩関節外旋可動域(p<0.05)と外旋可動域の両側差(p<0.05)、総回旋可動域(p<0.01)と総回旋可動域の両側差(p<0.05)の4つの指標と最高球速および平均球速との間に有意な正の相関関係が認められた。このことから、肩関節の外旋可動域、およびそれに伴う総回旋可動域の大きさは投球速度を決定する要因の1つとなりうることが示唆された。
著者
跡見 順子 清水 美穂 藤田 恵理 跡見 綾 東 芳一 跡見 友章
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集 第70回(2019) (ISSN:24241946)
巻号頁・発行日
pp.155_1, 2019 (Released:2019-12-20)

本発表では、講義と実践を組み合わせた運動生理学的教育プログラムの開発について報告する。地球重力場で進化した動物の仲間であり直立二足歩行を獲得した人の姿勢・身体運動は、他の動物と異なり、すべてを反射で行うことはできない。立位の重心に相応する部位は「丹田」と呼ばれ、武術では体幹コントロールのポイントとする。身体重心のトレーニングは、生理学的には随意運動により体幹の筋群をコントロールすることが可能である。しかし、体幹の深部筋を対象にした研究は方法上難しいので少ない。また体幹・脚・足・の連携制御により軽減される膝や腰等の関節痛予防のための姿勢やバランスの体育教育プログラムはきわめて少ない。本研究では、高校生70名、大学生・大学院生総勢50名を対象に、運動の脳神経系の連携機序や力学応答する細胞の基本特性などについての講義および仰臥位で自分自身の手で腹部を触り、触覚を感知し、自ら行う腹側の筋群・脚・足のエクササイズを毎日実践してもらった。その結果、身体的要素(姿勢、上体起こし回数、ジグザグ歩行回数等)の有意な増加や改善、および意識的要素(目覚め・寝つきのよさ、前向き)の改善がみられた。
著者
中塚 義実
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集 第70回(2019) (ISSN:24241946)
巻号頁・発行日
pp.36_2, 2019 (Released:2019-12-20)

「附属学校のオリンピック教育の取りまとめ役をやってくれないか」と附属学校教育長から2010年秋に打診された際、私は乗り気ではなかった。折角スポーツが教育から解放されつつあるのに、また教育の手段に逆戻りするのかとの懸念を氏にお伝えした覚えがある。翌2011年、「国際ピエール・ド・クーベルタン・ユースフォーラム」に高校生を引率し、世界で展開されるオリンピック教育を体験した。何のことはない、日本では体育の授業や体育的行事、運動部活動等を通して100年も前からやっていることばかりである。本来の日本の学校体育をきちんとやっていればよい!しかし現実的にみて、日本の学校体育では「スポーツを通した人間教育」が為されていると言えるか。また日本の教育は「知徳体のバランスのとれた人間」を育てていると言えるか。クーベルタンや嘉納治五郎の思想に立ち返り、オリンピズムを教育に位置づけることこそが2020のレガシーとして求められることではないか。体育実技サッカーでの「自由と責任を考える」授業や体育理論の実践、高校生対象の「クーベルタン-嘉納ユースフォーラム」等、当事者として考え実践していることを紹介しながら皆さんと議論したい。
著者
柴崎 雛子 大木 雄太 國部 雅大
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集 第70回(2019) (ISSN:24241946)
巻号頁・発行日
pp.125_2, 2019 (Released:2019-12-20)

ラクロスの大きな特徴はクロスを用いてボールを扱うことにある。本研究では捕球技能に着目し、クロスを用いた捕球の特徴と競技レベルによる違いを検討することを目的とした。女子ラクロス選手13名(上位群6名、下位群7名)が、20m前方から投げられたボールをクロスおよび野球グローブを用いて捕球する課題を各条件10試行行った。捕球率・歩数・捕球地点までの動き方・頭頂部を基準とした捕球位置の高さなどの観点から分析した。その結果、捕球率はクロス条件で上位群88%・下位群70%、グローブ条件で上位群80%・下位群51%となり、下位群はグローブ条件で捕球率が下がる傾向にあった。更にクロス条件・グローブ条件いずれでも下位群の歩数は上位群より有意に多く、捕球位置までの動き方をみると1歩目を落下地点と逆方向に踏み出す傾向がみられた。頭頂部を基準とした捕球位置の高さは下位群が上位群に比べて有意に高く、頭上で捕球する傾向があることが分かった。以上のことから、下位群は上位群に比べ落下地点への到達に多くの歩数を要しており、ボールの軌道・落下地点の予測能力が低いことが示唆された。
著者
榎屋 剛 平野 智也 野澤 巧 尹 鉉喆 藤戸 靖則 柏木 悠 船渡 和男
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集 第70回(2019) (ISSN:24241946)
巻号頁・発行日
pp.185_2, 2019 (Released:2019-12-20)

【目的】異なる投球速度に対するタイミング調節の鍵となる野球打撃動作の局面を検討すること。【方法】屋外の野球場において、5名の大学生選手が1名の投手から投球されたボールを打撃した。この際の球種はストレート(球速:約110~135km/h)であり、投手はランダムに緩急をつけた投球を行った。投手と打者の動作は、同期した2台の高速度カメラ(300fps)を用いて撮影し、投手のリリースの時刻に対する打者の各動作(前足のつま先離地、つま先接地、踵着地、インパクト)の時刻を算出した。【結果および考察】投球速度と打者の前足つま先離地およびつま先接地時刻には有意な相関関係が示されなかった。一方、投球速度の増加に伴い、打者の前足踵着地時刻が短くなった。また、投球速度と打者の前足つま先接地から踵着地の局面間の時間に有意な負の相関関係が示された。従って、打者の前足つま先接地から踵接地の局面間の時間は、異なる投球速度に対する打者のタイミング調節にとって重要であることが示唆された。
著者
林 忠男 奥山 瑞樹 角田 貢
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集 第70回(2019) (ISSN:24241946)
巻号頁・発行日
pp.337_1, 2019 (Released:2019-12-20)

近年コンピュータ上でおこなう対戦型ゲームがeSports競技として急速に普及してきている。eSportsは身体全体を用いるphysicalスポーツと異なり身体的障害がハンディにならない場合も多く、健常者と対等におこなえる競技という点でパラリンピック競技以上に障害者および健常者がお互いに高いモチベーションを得られる可能性がある競技である。中でも世界的普及率が高く2022年杭州アジア大会でも採用の可能性が高いゲームがネットワーク対戦ゲームの一つLoLである。しかしながらインターネットをはじめとするネットワークを用いることから大学等の教育機関で実施するためにはセキュリティをはじめとする様々な環境条件を明らかにすることが重要である。大学内LANにおいてセキュリティを確保するためにVPNを構築し、IPsec方式の暗号化を施したネットワーク環境からLoL日本サーバーに接続した。結果、応答速度は28~32msecであった。eSports実施においては十分に高速とは言えない値であったが推奨動作環境の約2倍以上の処理能力のコンピュータ端末であればストレスなくゲームが遂行できることがわかった。
著者
篠原 康男 上田 憲嗣 島崎 崇史
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集 第70回(2019) (ISSN:24241946)
巻号頁・発行日
pp.83_3, 2019 (Released:2019-12-20)

学士課程における教養体育では、「体育」ではなく、「スポーツ」が科目名に含まれていることが多い(梶田ほか、2018)。これは、当該科目で扱うスポーツ種目に関して、ルールや技術だけでなく、その成り立ちをも含めた幅広い知識を学ぶことが期待されているからであろう。そのため、学士課程における教養体育とは、ただそのスポーツ種目を実践するだけでなく、自分たちが生きる社会とスポーツのかかわりを「学び、考える場」ともいえよう。そこで本研究では、自然科学・人文科学・社会科学など様々な観点からスポーツ種目を捉えたコラムを配布教材として作成・配布し、学生の教養体育での学びに与える効果を検討した。対象はR大学における「スポーツ方法実習Ⅰ」でバドミントンを選択した2クラスとし、コラムを配布する介入クラスと、コラムを配布しない非介入クラスに分けた。介入クラスに対しては、第1回目から第14回目の各授業内で「バドミントン×○○」というテーマのコラムを配布し、内容の解説を行った。これらのクラスに対し、授業の学習に関するものや身体活動量(IPAQ)、健康度と生活習慣に関するアンケートを実施し、コラムの配布効果を検討した。