著者
町田 樹
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集 第68回(2017) (ISSN:24241946)
巻号頁・発行日
pp.38_2, 2017 (Released:2018-02-15)

フィギュアスケートは、氷上においてジャンプやスピン、ステップなどの卓越した「身体技術」に加え、思想や感情、物語を体現するための「表現技術」を競うスポーツである。基本的に「滑る」、「跳ぶ」、「回る」等の動作で構成されるフィギュアスケートだが、それらの動作を駆使して発揮される一連のパフォーマンスは、ときに「踊る」、「表現する」という動詞によって言い表される芸術的な動きの連続性として捉えられる。では、なぜ人はフィギュアスケーターの演技に美的な価値を見出すのであろうか。その理由の一つとしては、長い歴史の中で様式化されたフィギュアスケート特有の動作と音楽の間に、強力な相関関係が成立しているからであろう。本発表では、実際に発表者による自作振付の映像を用いながら、フィギュアスケーターの身体技術と音楽の密接な関係性を中心に、分析を試みていきたい。なお、発表者はフィギュアスケーターとしてのキャリアを23年間継続させており、現在プロフィギュアスケーターとしても活動を展開している。従って、本発表は研究者の観点と共に、フィギュアスケートの実演家および振付家の視点からも見解を提示するものである。
著者
川上 泰雄
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集 第68回(2017) (ISSN:24241946)
巻号頁・発行日
pp.37_2, 2017 (Released:2018-02-15)

トップアスリートや舞踊家、音楽家など、様々なジャンルで活躍するエリート達は、いずれも人間の身体能力を極めて高いレベルで達成している「達人」であるといえる。人々を驚嘆、感動させるこうした達人たちの動きに関して精力的に研究・実践活動を進めている4名の専門家を演者としてお招きし、本シンポジウムを企画した。「達人技」の域に達する動作の機序、音楽・リズムとの絶妙な協調を成し遂げる情報処理能力や身体制御方略、そして人々の感動を呼ぶ達人の動きのポイントなどについて、各氏より最新の研究成果をご披露いただく。会場では「達人技を科学する」というテーマのもと、各演者の話題を中心に議論を行い、領域横断的な考察を深めることを目指す。シンポジウムに割り当てられる合計時間の関係から、パネルディスカッションは最小限とし、各演者のご発表と質疑応答にできる限りの時間を充てる予定である。バイオメカニクス研究領域はもちろん、ご興味をもたれる様々な研究領域の皆様のご参加と、積極的な意見交換をお願いする次第である。芸術の域にまで高められた人間の究極の動きに迫り、身体能力の多様な可能性を探りたい。
著者
下代 昇平 谷本 道哉
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集 第68回(2017) (ISSN:24241946)
巻号頁・発行日
pp.128_1, 2017 (Released:2018-02-15)

背景・目的:近年運動において、体幹の剛体化は、四肢の土台としての働き、下肢から上肢への力の伝達等の観点から注目されている。体幹を剛体化させるトレーニング(TR)としてプランクなどの体幹TRが注目されており、実施の際には腹圧の上昇を伴うことが重要といわれている。本研究では体幹TRをはじめ、各種運動時の腹圧を調べることを目的とした。なお、腹腔の構造上、腹圧の上昇は体幹を伸展させるトルクが生じる。この観点からの検証、考察も行うこととした。方法:プランク・バックブリッジ等の体幹TR、スクワット・ベンチプレス等の各種筋力TR、ジャンプ・投打動作等のダイナミックな競技動作を実施し、運動中の腹圧を肛門よりカテーテル式圧力計を挿入して測定した。結果:腹圧の上昇の程度は「体幹TR(3~10%)<<筋力TR(7~47%程度)<ダイナミックな競技動作(38~61%:いずれもバルサルバを100%とする)」であり、体幹TRは小さい値であった。また、体幹伸展トルクを生じるような動作において特に腹圧が高まる様子は観察されなかった。
著者
矢野 裕介
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集 第68回(2017) (ISSN:24241946)
巻号頁・発行日
pp.70_2, 2017 (Released:2018-02-15)

1937年の日中戦争突入により国家総動員法が公布され、国内体制が戦時体制に移行していく中で、武道は1939年に設置された武道振興委員会の答申にみられるように、その戦技化を要求された。それがために、剣道においては斬撃姿勢による基本的な技が採用され、竹刀についても長さを3尺6寸とする真刀に近いものが使用されたように、より実戦的(軍事的)な内容へと改変された。また剣道の訓練で培った技術を氷上戦にも即すべく、剣道とスケートを融合させた「氷上剣道」なるものも考案、実施されるようになった。とはいえ、従前の武道史研究では氷上剣道に焦点をあてた研究は見受けられず、その存在について語られることはこれまで全くといっていいほどなかった。そこで本研究では、前廣節夫・岡部直己(1940)の『氷上剣道教育指導法』(筆者蔵)を中心に採り上げ、分析を行うことを通して、氷上剣道の実際について明らかにしていくことを目的としている。本書は、氷上剣道を統括していたとみられる日本氷上剣道会が発行したもので、その「使術ノ要領」、「教育一般ノ要領」(基本動作、応用動作、試合教習、試合)、「審判」法等が詳説されているからである。
著者
波戸 謙太 木野村 嘉則
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集 第68回(2017) (ISSN:24241946)
巻号頁・発行日
pp.235_2, 2017 (Released:2018-02-15)

本研究は、野球初心者が全力投球を反復した際の球質の動態を明らかにすることで、その際に内在する諸問題について検討し、特にスピードトレーニングの投球練習における適正反復投球数について検討することを目的とした。実験試技は、野球初心者である男性2名に対して、屋内において捕手方向に各々の最大努力度によって、フォーシームの握りでストレートを投球させた。投球数は20球1セットとし、合計5セットの計100球の投球を行わせた。その結果、投球数の増加に伴い、ボール速度が減少した。その際、セット内における球速および回転数の変動が大きかった。さらに、野球経験者と比較すると、球速が低く回転数が少なかった。よって、野球初心者はボール速度を増大することに加え、回転数を増大させること、球質を安定させることもトレーニング課題となりえることが想定される。また、野球初心者では、21~40球目にボール速度の大きな減少がみられたことから、スピードトレーニングの投球数は20球までを適正反復回数の目安とすることで、より効率よく球速をはじめとした球質の向上への効果を期待できる可能性が示唆された。
著者
鈴木 秀人
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集 第67回(2016) (ISSN:24241946)
巻号頁・発行日
pp.106_1, 2016 (Released:2017-02-24)

我が国の運動部に見られる「体罰」や「しごき」といった暴力的行為のルーツとして従来語られてきた所謂「軍隊起源説」には、1930年代にミリタリズムの影響で運動部が変容していったとする戦前起源説と、戦後に軍隊経験者が運動部に軍隊の行動様式を持ち込んだとする戦後起源説がある。本研究者による戦前・戦後期の運動部経験者に対するインタビュー調査等では、その2つとも当てはまらない旧制高校、2つとも当てはまる私立大学予科、戦前説のみ当てはまる師範学校等々、その実相は多様で複雑である。本研究では、「軍隊起源説」のように歴史上のある時点に起源を設定し、その一点から現在の問題状況が生起したと把握する理解を退け、かかる俗説による説明を日本の社会はなぜ共有、或いは許してきたのかを、戦後から高度経済成長期における「戦中派」の意識の変容を焦点に考察する。そこでは、軍隊経験に積極的な意味が見出されていく時期に、「戦中派」のスポーツ指導者が自身の軍隊経験とスポーツを結びつける言説が表明されていくことに注目する。
著者
関 巴瑠花 三浦 哲都 向井 香瑛 工藤 和俊
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集 第69回(2018) (ISSN:24241946)
巻号頁・発行日
pp.111_2, 2018 (Released:2019-01-18)

緊張や不安を感じながらも大観衆の前で美しく踊るバレリーナには、どのような心理生理学的な反応が生じているのだろうか。これまでパフォーマンス不安による心理生理学的な反応は、主に実験室での模擬的な環境内で測定されてきており、実環境におけるパフォーマンス本番での測定は極めて少ない。また、パフォーマンス不安に関する研究は楽器演奏をする音楽家や低強度運動時のスポーツ選手を対象にしたものが多く、同様の結果が中から高強度で運動をする人にも当てはまるかどうかは不明である。そこで本研究ではパフォーマンス不安が、中から高強度運動時の心拍数にどのような影響を与えるのか検討した。実際の観衆(400名以上)の前で踊るプロのバレリーナ1名が、中から高強度の運動強度で踊っている最中のR-R間隔を心拍計により計測した。心拍数はR-R間隔より算出した。舞台上でのリハーサルと本番での心拍数を比較した。その結果、本番での最大心拍数は180拍/分を超えており、リハーサル時よりも本番中の方がおよそ10拍/分心拍数が高かった。これらの結果から、中から高強度運動時においても、パフォーマンス不安により心拍数が増加することが明らかになった。
著者
工藤 龍太
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集 第69回(2018) (ISSN:24241946)
巻号頁・発行日
pp.71_2, 2018 (Released:2019-01-18)

講道館柔道創始者の嘉納治五郎は様々な武術を研究し、「武術としての柔道」を生涯にわたり探求し続けた。柔道が競技スポーツとして普及していく一方で、柔道の武術性が失われていくことを危惧した嘉納は、修行者に形と乱取稽古の併修を説いた。昭和2(1927)年までに嘉納が完成させた精力善用国民体育の形(以下「精力善用の形」)は、2人で行う相対動作に加えて1人で行う単独動作が含まれている点で、柔道の形としては画期的なものであり、集団体操としても採用されるなどの展開があった。先行研究では、この形が国民体育の実施と当身技の習得といった体育的・武術的観点から、柔道をより優れたものにするために嘉納が創案したものであり、嘉納にとって理想の柔道の形であったことが指摘されてきた。本発表では、嘉納の理想的な柔道を具現化した精力善用の形が戦前の体育や武道の世界に与えた影響や、様々なレベルの実践者たちの反応がどのようなものであったかを資料に基づき調査しながら、戦前の精力善用体育の形の展開過程を明らかにしたい。
著者
佐々木 良輔
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集 第67回(2016) (ISSN:24241946)
巻号頁・発行日
pp.283_3, 2016 (Released:2017-02-24)

●近年、子どもの保健室利用数が増え、その訴求内容も多様化・深刻化している。そのため、養護教諭を複数配置にする等、定数増員が社会から要請されている。一方、男性の養護教諭の配置数が最近徐々に増えてきた。今後予想される養護教諭の採用数拡大に対し、男性もその需要に応えていく必要がある。●そこで本研究では、学校において子どもたちには絶好の保健指導の機会となりえる、救急処置(傷病の応急手当等)に焦点を当てる。中でも、男性養護教諭の救急処置に対する意識を明らかにし、今後、女性だけではなく男性ももっと積極的に養護教諭という職業として子どもの身体教育に携われるような学校環境を推進・構築するための資料の獲得を目的とした。●方法は、「第5回男性養護教諭友の会(2014年)」の参加者を対象に、“一次救命処置”・“応急手当”・“その他の対応”等を内容とした質問紙を用いて、集合調査を行うこととした。●まとめると、養護教諭に男女は関係なく、専門職として幅広い知識と技術を持つため研修を受け学び実践するべきであって、その上で、男性養護教諭は「父性」等といった“男性性”を活かし、児童生徒対応を行うべきであるとの結論に至った。
著者
荒木 達雄
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集 第67回(2016) (ISSN:24241946)
巻号頁・発行日
pp.62_1, 2016 (Released:2017-02-24)

内田良氏の提言で組(立)体操がクローズ・アップされ、文科省の指針発表にまで発展した。この問題は、体育の授業内ではなく「体育祭」という「スポーツ・イベント」内での事故が多発しているためである。もともとは体操領域に「組(立)体操」は位置しているわけであるが、指導要領にその種目の文言が戦後、一度明記されたのみであり、現在の「体つくり運動」でも明記されていない。また、名称の不徹底も問題となっている。それは「組立体操」、「組体操」の区別の仕方である。「組立体操」は、人間が2段、3段に積み上げて造形美を表現する「静的」な運動形態である。「組体操」は、2人以上で互いの力を利用し合って動く、「動的」な運動形態である。体育の指導者であれば、この違いを理解したうえでこれらの運動種目を指導すべきであろう。また、普段の授業内での練習した種目を厳選したうえで、体育祭での発表作品として選択すべきと考える。今回は、「組立体操」、「組体操」の目的を明確にして実践例を参加者に体験してもらい、発表作品にまで発展させていく企画である。
著者
中澤 篤史
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集 第69回(2018) (ISSN:24241946)
巻号頁・発行日
pp.81_3, 2018 (Released:2019-01-18)

発表者は、日本の学校運動部活動が歴史的にどのように形成され、拡大してきたのか、そして現在においてどのように維持されているか、というその形成・拡大・維持過程を探究している。本発表の目的は、その一環として、日本中学校体育連盟の財務状況の推移を、とくに1989年の財団法人化のプロセスに注目しながら明らかにすることである。日本中学校体育連盟(中体連)は、中学校運動部活動の競技大会を運営する団体である。では中体連は、競技大会に必要な資金をどのように集めたのか、その財務状況はどのように変遷してきたのか。また中体連は、1989年に任意団体から財団法人へと変わったが、そのプロセスで財政的基盤をどのように整えたのか。先行研究が十分に検討できていないこの問いに、本発表は取り組む。資料は、日本中学校体育連盟の年度報告書『会報』などを用いる。
著者
日野 克博
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集 第69回(2018) (ISSN:24241946)
巻号頁・発行日
pp.53_1, 2018 (Released:2019-01-18)

学習指導要領改訂を契機として、教職課程の質保証や教員の資質能力の向上を意図した教職課程の見直しが図られている。教員養成系大学では、教職課程コアカリキュラムに基づく再課程認定の手続きが進められており、学習指導要領の理解や具体的な授業場面を想定した授業設計等の知識や技能を身に付けるなど、「教科の指導法」科目の充実が期待されている。そこでは、「学習指導要領」「教材研究」「指導案作成」「模擬授業」等の内容をバランスよく指導することが求められており、その指導にあたっては、学問領域として「体育科教育学」が基盤になっていること、「体育科教育学」の種々の研究成果が指導内容に反映されていることが重要になってくる。しかし、「体育科教育学」の知見や成果をどのように反映させればいいか、各授業科目での達成基準との整合性、授業時間数等の条件、具体的な授業展開の方法など実践上の課題も少なくない。そこで、本シンポジウムでは、教職課程の見直しについて概説し、愛媛大学での「保健体育科教育法」の実践事例を紹介しながら、教員養成における「体育科教育学」の役割や指導のあり方について提案する。
著者
勝亦 陽一
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集 第68回(2017) (ISSN:24241946)
巻号頁・発行日
pp.170_3, 2017 (Released:2018-02-15)

本研究は、大学生を対象に運動有能感に対する相対年齢効果の性差を明らかにすることを目的とした。対象はスポーツ実技科目を選択履修した男子1326名および女子1479名とし、質問紙により調査を行った。被検者には、運動有能感(17項目)、過去の体育に対する意識(5項目)について、「非常にそう思う」(5点)から「まったくそう思わない」(1点)の5段階で評価させた。生まれ月は、4群(4–6、7–9、10–12、1–3月)に分けた。運動有能感について、因子分析により共通要因を算出した。その結果、「身体的有能さの認知」、「統制感」および「受容感」に分類された。各因子得点を算出し二元配置(性別×生まれ月)を行ったところ、「身体的有能さの認知」においてのみ交互作用が示された(男子>女子、女子のみ4–6月>1–3月)。また、過去の体育に対する意識のうち、「球技種目が得意だった」について交互作用が示された(男子>女子、女子のみ4–6月>1–3月)。以上の結果から、大学生の運動有能感に対する相対的年齢効果には性差があること、その原因は過去の体育における球技種目にある可能性が示唆された。
著者
兄井 彰
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集 第70回(2019) (ISSN:24241946)
巻号頁・発行日
pp.126_1, 2019 (Released:2019-12-20)

本研究は、野球において重いバットでの素振りが、後続する標準の重さのバットでの打撃パフォーマンスに及ぼす影響を検討した。大学野球選手20名を対象に、基準運動として、900gの標準のバットで3球を実打させ、その後すぐに、先行運動として、重さの異なるいずれかのバット(900g、1050g、1200g)で5回素振りをさせ、さらに、後続運動として、900gの標準のバットで3球を実打させた。投球は、ストライクゾーンの中央付近にボールが集まるようにバッティングマシーンを調整し、球種はストレートで球速は、125km/hと105km/hとした。基準運動と後続運動での打撃について、打球の質(ヒット性のあたり)とインパクトの質(バットの軌道との一致)、スイングの質(フォロースルーの大きさ)という観点で、野球経験が10年以上の者3名が主観的に得点化した。その結果、両球速において、標準よりも重いバットでの素振り後では、主観的にバットを軽く、ボールを打ちやすく感じており、スイングの質が向上していた。しかし、早い球速では、打球の質、インパクトの質とも低下していた。また、遅い球速においては、打球の質及びインパクトの質に差は見られなかった。
著者
宮原 祥吾 原田 健次 新海 陽平 稲葉 泰嗣 荒牧 勇
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集 第68回(2017) (ISSN:24241946)
巻号頁・発行日
pp.111_1, 2017 (Released:2018-02-15)

近年、脳の局所的な構造が運動・認知スキルと関連するという報告が相次いでいるが、スポーツ選手を対象とした報告は少ない。そこで本研究は、野球熟練者の投球コントロール能力と関連する脳部位の構造的特徴を明らかにすることを目的とした。C大学野球部のピッチャー9名(右利き)に対し、的の中心点を狙った右投げ投球、左投げ投球をそれぞれ30球ずつ行わせた。それぞれの条件について的中心からの平均距離を計算した。すべての被験者のT1強調MRI脳画像を計測し、Voxel Based Morphometry解析により、それぞれの投球条件において、的中心からの距離と脳灰白質容積の相関のある脳部位を同定した。その結果、いずれの条件においても、的中心からの平均距離と右頭頂葉の灰白質容積に有意な正の相関関係が認められた。頭頂葉は、空間的な運動制御に重要な役割を果たす脳部位であり、投球コントロール能力に頭頂葉の構造的発達が重要であることが示唆された。
著者
池田 隼 熊谷 仁 畠山 廣之 井口 祐貴 島嵜 佑 内藤 久士 吉村 雅文 福 典之
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集 第68回(2017) (ISSN:24241946)
巻号頁・発行日
pp.132_1, 2017 (Released:2018-02-15)

【背景】αアクチニン3遺伝子(ACTN3)のR577Xやアンジオテンシン変換酵素遺伝子(ACE)のI/D多型は運動能力に関連する。サッカー選手において、瞬発的および持久的な能力はポジションごとに異なるが、遺伝子多型とポジションの関連は不明である。【目的】サッカー選手におけるACTN3 R577XおよびACE I/Dとポジションの関連について検討した。【方法】対象者は、日本のJリーグ、なでしこリーグおよび大学トップレベルチームに所属するフォワード(FW)、ミッドフィルダー(MF)およびディフェンダー(DF)とした(男子:159名、女子:75名)。唾液からDNAを抽出し、TaqMan法によりACTN3 R577X(rs1815739)およびACE I/D(rs4340)の遺伝子型を分析した。【結果】男子選手においてのみ、ACTN3多型の頻度はポジションごとに有意に異なり(P<0.05、カイ二乗検定)、FW>MF>DFの順にRR型が多く、XX型が少なかった。一方、ACE多型は、男女に関係なくポジションとの関連は認められなかった。【結論】男子サッカー選手において、ACTN3 R577X多型はポジション特性に関連する可能性が示された。
著者
黒須 朱莉
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集 第70回(2019) (ISSN:24241946)
巻号頁・発行日
pp.103, 2019 (Released:2019-12-20)

本研究の「IOCにおける国歌国旗廃止案」とは、オリンピック競技大会における国歌や国旗を用いた儀礼を廃止しようとする案のことを指す。これまで、1953年から1974年までのIOC関連会議では、国歌国旗の廃止を求める提案が審議されてきたことが明らかになっている。この間の廃止案の展開は、第1期(1953-1957)国歌廃止案の提起、第2期(1960-1963)国歌廃止案に対するIFの賛同とIOC総会での支持の広がり、第3期(1965-1968)国歌国旗廃止案の提起とIOC総会での支持の広がり、第4期(1973-1974)IOC総会における国歌国旗廃止案の消滅に区分することができる。その後の国歌国旗廃止に関わる諸事実は、オリンピックを対象とした文献や研究の中で断片的に触れられているものの、廃止案の連続性という観点からの検討は行われていない。以上のことから、本発表では1974年に総会の審議事項から消滅した廃止案のその後の展開を、1975年から1981年までに定め、この間のIOC関連会議における国歌国旗廃止に関する提案の有無、及び提案と審議の内容を整理し、1974年以前との連続性を検討することを目的とする。
著者
衣笠 泰介
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集 第68回(2017) (ISSN:24241946)
巻号頁・発行日
pp.44_2, 2017 (Released:2018-02-15)

独立行政法人日本スポーツ振興センター(JSC)と連携する地域タレント発掘・育成(TID)事業は、現在、24地域にまで拡大している。こうした中、平成25年度に立ち上げた全国規模のナショナルタレント発掘・育成(NTID)プログラムでは、将来性の豊かな人材と優れたコーチを出会わせるため、「発掘・検証・育成」の3つの段階がある。発掘においては、種目適性型、種目選抜型、種目最適(転向)型の3つのモデルがあり、コーチの眼のみならず、科学的分析を行っている。この段階では、エビデンスに基づいた測定項目の選定やワールドクラスの選考基準の設定が求められる。検証においては、成長率の算出等を通してポテンシャル(潜在力)を見極めている。育成においては、目標大会から逆算して設定した最低水準(ベンチマーク)に対するパフォーマンスを追跡している。平成28年度には、オリンピック・パラリンピック一体型発掘プログラムを開発し、クラス分けと科学的測定によるパラリンピック選手の発掘も開始した。最終的には、暦年齢よりも生物学的アプローチを通して、エビデンスを蓄積しながらオリンピック・パラリンピックパスウェイの構築を目指す。