- 著者
-
笹井 佐和子
坂東 春美
大林 賢史
山上 優紀
佐伯 圭吾
城島 哲子
- 出版者
- 日本公衆衛生学会
- 雑誌
- 日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
- 巻号頁・発行日
- vol.69, no.4, pp.262-272, 2022-04-15 (Released:2022-04-26)
- 参考文献数
- 34
目的 障害児の在宅生活は,健康管理や医療的ケアの役割を担う母親によって支えられている。昼夜を通して行うケアによる負担や,睡眠不足,体調の限界を感じているという母親の現状が報告されている。本研究の目的は1) 障害児に対するどのようなケアが母親の睡眠や心の健康に関連しているかを明らかにすること,2) 障害児の母親の睡眠を客観的に測定し,睡眠の実態を明らかにすることである。方法 A県特別支援学校在籍の障害児の母親180人に対し,自記式質問紙調査を行い,同意を得た9人に対し,アクチグラフィーによる客観的睡眠測定を行った。障害児と母親の生活背景,主観的睡眠(ピッツバーク睡眠質問票),心の健康状態(GHQ12)について質問紙調査を行った。ロジスティック回帰分析にて,睡眠と心の健康への影響する障害児の特性を分析した。結果 対象者180人中84人(46.7%)が有効回答した。主観的睡眠不良は52人(64.2%)にみられた。主観的睡眠不良に対する,酸素療法の粗オッズ比は,20.16(95%信頼区間:1.15-353.07)であった。夜間ケアのモデル1(調整因子:母親の年齢,配偶者同居)による調整オッズ比は,6.93(2.40-20.00),モデル2(調整因子:母親の年齢,経済的余裕)では4.76(1.68-13.50)であった。 心の健康不良は34人(42.0%)にみられた。心の健康不良に対して,酸素療法の調整オッズ比(モデル1)は,11.10(2.11-57.90),モデル2では12.00(2.18-65.90)であった。夜間ケアの調整オッズ比(モデル1)は,4.54(1.45-14.2),モデル2では2.74(0.96-7.81)であった。 客観的睡眠測定の結果(個人平均),有効睡眠時間は283分から381分,中途覚醒時間は36分から123分,睡眠効率は68.6%から90.9%,睡眠潜時0分から8分であった。人工呼吸器管理やてんかん発作,発熱など児の体調の変化は,母親の中途覚醒時間の延長や睡眠効率の変動につながることが示された。結論 睡眠および心の健康と有意に関連する要因は,障害児の酸素療法と夜間ケアの有無であった。酸素療法や夜間ケアを必要とする障害児の母親への支援が重要である。