著者
久永 真央 津田 孝雄 大桑 哲男 伊藤 宏
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.57-61, 2011 (Released:2012-02-13)
参考文献数
10
被引用文献数
2 4

労働環境や生活環境において,生体内に取り込まれた化学物質の皮膚からの放出に関する研究は少ない.そこで皮膚ガスを採取し,ガスクロマトグラフィー/質量分析(GC/MS)で分析を行い,生体内への化学物質の取込みを推定することを目的として本研究を行った.皮膚ガスの採取は,労働環境や生活環境の異なる被験者10名(男性7名,女性3名)の左手から行った.被験者の皮膚ガス中に,ベンゼン,トルエン,キシレン,2-エチル-1-ヘキサノール,p-ジクロロベンゼンなどを確認した.有機化学実験をしている異なる2 つの研究室の被験者間に,2-エチル-1-ヘキサノールの濃度平均値の有意差を認めた.またトルエン濃度が,他の被験者に比べ有意(P<0.05)に高い被験者がいた.この被験者がガス関連事業所で働いていたことから,職場での暴露によると推測された.労働環境や生活環境の違いにより,皮膚ガスに含まれる化学物質には,人により差があることが示唆された.
著者
大桑 哲男 宮村 実晴
出版者
THE PHYSIOLOGICAL SOCIETY OF JAPAN
雑誌
The Japanese Journal of Physiology (ISSN:0021521X)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.553-556, 1984 (Released:2006-07-28)
参考文献数
12
被引用文献数
3 4

Peak blood lactate following 400m sprinting was determined in 8 sprinters and 8 long-distance runners. The mean velocity of 400m run and peak blood lactate were significantly higher in the sprinters than in the long-distance runners. It was suggested that peak blood lactate may be a useful indication of anaerobic work capacity in long-distance runners, but not in sprinters.
著者
大桑 哲男
出版者
名古屋工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010-04-01

高齢ラット、肥満ラット及び糖尿病ラットを対象に運動トレーニング及びL-アルギニン投与が血液の凝固・線溶に及ぼす影響をタンパク質酸化及び脂質過酸化から検討した。本実験においてL-アルギニン摂取と運動トレーニング群のプラスミノゲン活性化因子は正常ラットに比べ有意に増大し、血液凝固マーカー(トロンボキサンB2)は有意に減少した。またL-アルギニン摂取と運動トレーニング群のタンパク質酸化及び脂質過酸化は対照群に比較し有意に減少し、還元型グルタチオン及びグルタチオンレダクターゼ活性は有意に増大した。これらの結果から運動とL-アルギニン摂取は酸化ストレス軽減させ、血栓予防に有効であることが示唆された。
著者
久永 真央 津田 孝雄 大桑 哲男 伊藤 宏
出版者
The Japan Society for Analytical Chemistry
雑誌
分析化学 = Japan analyst (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.57-61, 2012-01-05
被引用文献数
4

労働環境や生活環境において,生体内に取り込まれた化学物質の皮膚からの放出に関する研究は少ない.そこで皮膚ガスを採取し,ガスクロマトグラフィー/質量分析(GC/MS)で分析を行い,生体内への化学物質の取込みを推定することを目的として本研究を行った.皮膚ガスの採取は,労働環境や生活環境の異なる被験者10名(男性7名,女性3名)の左手から行った.被験者の皮膚ガス中に,ベンゼン,トルエン,キシレン,2-エチル-1-ヘキサノール,<i>p</i>-ジクロロベンゼンなどを確認した.有機化学実験をしている異なる2 つの研究室の被験者間に,2-エチル-1-ヘキサノールの濃度平均値の有意差を認めた.またトルエン濃度が,他の被験者に比べ有意(<i>P</i><0.05)に高い被験者がいた.この被験者がガス関連事業所で働いていたことから,職場での暴露によると推測された.労働環境や生活環境の違いにより,皮膚ガスに含まれる化学物質には,人により差があることが示唆された.
著者
大桑 哲男 直井 信
出版者
名古屋工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

平成10年度はラットにおいて、一日の自由運動での走行距離は大きな個体差を認め、肝臓の水酸化ラジカルレベルは走行距離と負の相関関係を認めてきた(r=-0.533,p<0.05)。さらに水酸化ラジカルを除去する還元型グルタチオンは、肝臓、心臓および脳において、走行距離と有意な正の相関関係を認めてきた(肝臓ではr=0.532,p<0.05;心臓ではr=0.462,p<0.05;脳ではr=0.760,p<0.001)。平成11年度は、還元型グルタチオンは肝臓において、グルタチオン酸化還元酵素と高い相関関係があることを認めてきた。しかし、正規分布を逸脱する群では、有意な相関関係は認められなかった。さらに一日の運動量は、抗酸化能力と密接に関係していることが明らかとなった。今年度(平成12年度)は、成長期である5週齢ラットのWistar系ラットに3,6,12週間の自発的運動を課し、週齢と運動期間が抗酸化能に及ぼす影響について検討した。成長に伴い自発的運動量は11週まで増加した。しかし肝臓における水酸化ラジカル濃度は安静群と運動群ともに有意な変化は見られなかった。この水酸化ラジカルレベルに有意な変化が認められなかった理由として、成長と運動に伴い肝臓の還元型グルタチオン濃度が増加したことが考えられる。特に肝臓の還元型グルタチオン濃度の増大は、還元型グルタチオン生合成系酵素(γ-グルタミルトランスフェラーゼ、γ-グルタミルシステインシンターゼ)活性ではなく、還元型グルタチオン酸化還元系酵素活性(グルタチオンペルオキシダーゼ、グルタチオンリダクターゼ)が増加したことによることが示唆された。また、自発的運動を課することにより、成長期においてさらに抗酸化能の誘導が促進することが明らかとなった。さらに本年度では、人を対象にビタミンE投与が筋組織への損傷に及ぼす影響を明らかにした。4週間にわたるビタミンEの投与(1200IU/日)と、その後の6日間の激しい走行トレーニング(48.3±5.7km/日)中のビタミンEの投与は血清の過酸化脂質の生成を抑制した。激しい走行トレーニング群におけるビタミンE投与は、対照群(擬似薬群)に比べ、血清中のクレアチンキナーゼおよび乳酸脱水素酵素活性が低下した。これらの結果から、ビタミンE投与は、長期間の激しい走行トレーニングによって増大する活性酸素の生成を抑え、筋損傷を抑制したものと考えられる。