著者
直井 信久 中馬 秀樹 中崎 秀二 丸岩 太 新井 三樹 中野 徹
出版者
宮崎医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

本年度の研究は人体で計測した臨床電気生理学的実験とネコ、ニワトリ網膜を用いて行った動物網膜の電気生理学的実験を行った。臨床電気生理学的には正常者と網膜内層の異常があると考えられる緑内障眼において、多局所網膜電図(Sutterら)を測定した。緑内障眼では有意に多局所網膜電図各波の振幅の低下、頂点潜時の延長が認められたが、これが網膜内層の変化を反映しているのか、視細胞など外層の変化を反映しているのかは、来年度以降の基礎実験が必要である。基礎実験の内、M波については薬理学的手法を用いて行った。TTXを用いてナトリウム依存性活動電位を抑制するとM波は変化しないがERGのoff反応は減少した。M波のon反応はAPB投与により極性が反転し、この反転した波はaspartateによって消失した。また網膜電図のSustained negativer responseはAPBによって変化しなかった。この様にM波の臨床的ERGへの関与は小さいが、パターン刺激のように小さい刺激野で刺激する場合などでは関与する可能性が考えられた。Scotopic threshold response(STR)に関しては、微少電極でこの波のdepth profileを調べることができたが、STRは内網状層付近で最大となり、網膜中心付近(60%の深さ)で極性が逆転した。このことは、この点より近位側に電流のsinkが存在することが推定され、電流のsourceはさらに遠位側にあると考えられた。またカリウム選択性電極を用いてカリウム変化を測定した結果ではカリウム濃度の変化と網膜電図の変化に密接な関係がみとめられた。
著者
大桑 哲男 直井 信
出版者
名古屋工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

平成10年度はラットにおいて、一日の自由運動での走行距離は大きな個体差を認め、肝臓の水酸化ラジカルレベルは走行距離と負の相関関係を認めてきた(r=-0.533,p<0.05)。さらに水酸化ラジカルを除去する還元型グルタチオンは、肝臓、心臓および脳において、走行距離と有意な正の相関関係を認めてきた(肝臓ではr=0.532,p<0.05;心臓ではr=0.462,p<0.05;脳ではr=0.760,p<0.001)。平成11年度は、還元型グルタチオンは肝臓において、グルタチオン酸化還元酵素と高い相関関係があることを認めてきた。しかし、正規分布を逸脱する群では、有意な相関関係は認められなかった。さらに一日の運動量は、抗酸化能力と密接に関係していることが明らかとなった。今年度(平成12年度)は、成長期である5週齢ラットのWistar系ラットに3,6,12週間の自発的運動を課し、週齢と運動期間が抗酸化能に及ぼす影響について検討した。成長に伴い自発的運動量は11週まで増加した。しかし肝臓における水酸化ラジカル濃度は安静群と運動群ともに有意な変化は見られなかった。この水酸化ラジカルレベルに有意な変化が認められなかった理由として、成長と運動に伴い肝臓の還元型グルタチオン濃度が増加したことが考えられる。特に肝臓の還元型グルタチオン濃度の増大は、還元型グルタチオン生合成系酵素(γ-グルタミルトランスフェラーゼ、γ-グルタミルシステインシンターゼ)活性ではなく、還元型グルタチオン酸化還元系酵素活性(グルタチオンペルオキシダーゼ、グルタチオンリダクターゼ)が増加したことによることが示唆された。また、自発的運動を課することにより、成長期においてさらに抗酸化能の誘導が促進することが明らかとなった。さらに本年度では、人を対象にビタミンE投与が筋組織への損傷に及ぼす影響を明らかにした。4週間にわたるビタミンEの投与(1200IU/日)と、その後の6日間の激しい走行トレーニング(48.3±5.7km/日)中のビタミンEの投与は血清の過酸化脂質の生成を抑制した。激しい走行トレーニング群におけるビタミンE投与は、対照群(擬似薬群)に比べ、血清中のクレアチンキナーゼおよび乳酸脱水素酵素活性が低下した。これらの結果から、ビタミンE投与は、長期間の激しい走行トレーニングによって増大する活性酸素の生成を抑え、筋損傷を抑制したものと考えられる。
著者
長友 顕子 丸岩 太 直井 信久 澤田 惇
雑誌
日本眼科學会雜誌 (ISSN:00290203)
巻号頁・発行日
vol.100, no.5, pp.363-368, 1996-05-10
被引用文献数
13