著者
日根野谷 一 道田 将章 池本 直人 吉田 悠紀子 落合 陽子 大橋 一郎 片山 浩
雑誌
第46回日本集中治療医学会学術集会
巻号頁・発行日
2019-02-04

【背景】急性感染性電撃性紫斑病(acute infectious purpura fulminans; AIPF)とは感染症により、四肢遠位部の虚血性壊死が、二肢以上で同時に侵され、近位の動脈閉塞を伴わない病態である。原因菌では髄膜炎菌が最も多いがA群β溶連菌(group A streptococci: GAS)や真菌、ウイルスなど様々である。AIPFの死亡率は約40%で、さらに敗血症性DICに至った症例の死亡率は約50%と報告があり、AIPFは最重点に置くべき病態である。【臨床経過】(患者)84歳、女性(主訴)右足背の違和感(現病歴)来院前日の夜間から右足背の違和感と疼痛、水泡形成を自覚、近医受診した。しかし、収縮期血圧約70mmHg、SpO2 85%(room air)、呼吸数30回/分以上と急変。前医へ紹介受診されるが、さらに悪寒戦慄と右下肢の水泡と新たに発赤の拡大を認め当院へ救急搬送(入院時現症)意識レベル:E4V5M6、SpO2:89%(10L/min O2マスク)、血圧:90/54(ドパミン、ノルアドリナリンそれぞれ最大量)、脈拍:110回/分、体温:38.6℃、両足背から下腿遠位にかけて有意な腫脹、発赤、水泡形成を認めた。両足背および後脛骨動脈の触知は不可だったが膝窩動脈の触知は可能(既往歴)発症1週間前に右第1足趾の外傷(入院後経過)初日、全身麻酔下で筋膜切開術を施行。術後はICUにて人工呼吸管理を行なった。抗菌薬は、ABPC 8g/日およびCLDM 2400mg/日投与を開始した。急性期DICスコアが6点より、AT-3製剤1500単位/日、トロンボモジュリン製剤19200単位/日の投与を第6病日まで行ない、その後適宜スコアを見ながら投与を行った。第2病日、急性腎傷害より持続的腎代替療法を導入。第3病日、第1病日の血液培養よりGASが検出、届出を行なった。その後壊死範囲の拡大により第5病日、膝上右下腿切断術を施行。第10病日、断端部陰圧閉鎖療法を開始した。第13病日、非閉塞性腸管虚血症が発症。パパベリンの持続投与を行なった。また、創部よりCandidaが検出。MCFG 100mg/日の投与を開始した。第20病日、AMPH 200mg/日に切り替えた。その後も治療の再検討を行なうが、DICの進行、敗血症性ショックにより第41病日、永眠。【結語】AIPFの死亡率は高く、さらに敗血症性DIC合併例の救命は困難である。本症例も救命できなかったが、AIPFの死亡例の大半は発症後2日以内であることより、救命できた可能性はあった。しかし、重大な合併症を発症した場合救命はさらに厳しいので注意が必要である。
著者
安西 春幸 高木 国失 太田 博俊 大橋 一郎 高橋 知之 中島 聰聰
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.21, no.8, pp.2094-2098, 1988 (Released:2011-08-23)
参考文献数
19
被引用文献数
5 4

未分化型腺癌の組織型を示す隆起型早期胃癌は少く, 単発早期胃癌手術症例1, 150例中10例であった. 性別, 占居部位, 深達度は分化型腺癌の隆起型に比較し, 明らかな差はないが, 平均年齢でやや若い傾向にあった.組織学的に隆起形態を3型に分類した. A: 表層粘膜の癌発育によるもの一6例8B: 表層粘膜のみならず, 粘膜下層への癌浸潤を認めるもの-3例. C: 粘膜層より, 粘膜下層での癌浸潤が著明であるもの-1例. Aはsignet-ring cell carcinoma (sig), Bはpoorly differentiateded enocarcinoma (por), Cはmuconodular adenocarcinoma (muc) がそれぞれ多い傾向にあった. 予後は隆起型分化型腺癌同様, 良好であった.
著者
太田 博俊 高木 国夫 大橋 一郎 田村 聡 久野 敬二郎 梶尾 鐶 加藤 洋
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.14, no.10, pp.1399-1408, 1981-10-01
被引用文献数
10

当外科において手術された1978年10月までの1000例の単発早期胃癌に対して肉眼分類を中心に時代的変貌を加味しつつ, その臨床像を検討した. 最近は手術胃癌の3例に1例は早期癌で, 陥凹型早期癌が多く, 占居部位では隆起型は胃下部, 陥凹型は, 胃中部に多い. 年齢分布はピークは隆起型は60歳代の山型, 陥凹型は50歳代の丘型を示した. 症例数では隆起型と陥凹型は, 1対4の比率で, 深達度 m と sm ではほぼ同率であった. 早期胃癌のリンパ節転移率は 12.7%, m 癌は 21.7%. 隆起型では, 20.9% その内 m 癌は 1%, sm 癌は, 33.3%, 陥凹型では, 10% その内 m 癌は 3.9%, sm 癌は 16.7% であった. 治癒切除例の5生率は 93.8% 非治癒切除例で 56.5% であった.