著者
長谷 康二 竹腰 隆男 藤井 彰 馬場 保昌 武本 憲重 加来 幸夫 清水 宏 小泉 浩一 尾形 悦郎 太田 博俊 西 満正 柳沢 昭夫 加藤 洋
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会 関東支部
雑誌
消化器内視鏡の進歩:Progress of Digestive Endoscopy (ISSN:03899403)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.252-255, 1993-06-18 (Released:2015-07-15)
参考文献数
17

生検で十二指腸球部の腺癌と診断し,切除標本に癌巣を認めなかった症例を経験したので報告する。症例は49歳男性。上部消化管X線検査で十二指腸球部後壁に小隆起性病変を認めた。内視鏡検査で同部に発赤調の約7mmの隆起性病変を認めた。生検では正常十二指腸上皮に囲まれ,粘膜内に限局した腺癌を認めた。第2,3回の内視鏡検査時には,病変は約3mmと縮小していた。外科的に縮小手術を施行した。切除標本では術前の点墨の肛門側に接して3mmの発赤した隆起性病変を認め,病理組織学的に連続的切片を作成して検討した。粘膜筋板の乱れ,線維化を伴うBrunner腺の過形成と再生上皮を認めるのみで,癌巣は認めず,生検により摘除されたと考えた。早期十二指腸癌は1991年までに122例123病変の報告があるが,生検で癌と診断し,切除標本で癌が消失していた報告は本例が1例目である。
著者
安西 春幸 高木 国失 太田 博俊 大橋 一郎 高橋 知之 中島 聰聰
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.21, no.8, pp.2094-2098, 1988 (Released:2011-08-23)
参考文献数
19
被引用文献数
5 4

未分化型腺癌の組織型を示す隆起型早期胃癌は少く, 単発早期胃癌手術症例1, 150例中10例であった. 性別, 占居部位, 深達度は分化型腺癌の隆起型に比較し, 明らかな差はないが, 平均年齢でやや若い傾向にあった.組織学的に隆起形態を3型に分類した. A: 表層粘膜の癌発育によるもの一6例8B: 表層粘膜のみならず, 粘膜下層への癌浸潤を認めるもの-3例. C: 粘膜層より, 粘膜下層での癌浸潤が著明であるもの-1例. Aはsignet-ring cell carcinoma (sig), Bはpoorly differentiateded enocarcinoma (por), Cはmuconodular adenocarcinoma (muc) がそれぞれ多い傾向にあった. 予後は隆起型分化型腺癌同様, 良好であった.
著者
火爪 健一 関 誠 十亀 徳 上野 雅資 太田 博俊 柳澤 昭夫
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科医学会雑誌 = The journal of the Japanese Practical Surgeon Society (ISSN:03869776)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.873-877, 1997-04-25
参考文献数
10
被引用文献数
3

脾よりかなり離れた大網に存在し,茎捻転によると思われる症状を呈した重複副脾の稀な1例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.症例は35歳女性.人間ドックの腹部USで左側腹部に腫瘤を指摘され精査目的で入院となった.腹部USでは左腎尾側に充実性腫瘤が存在し,腹部CTでは腎下極に始まり下行結腸を前方より圧排する均一な充実性腫瘤が見られた.血管造影では左胃大網動脈より栄養されるhypervascularな腫瘍像が見られ,他に脾下極よりに径2cmのhypervascularな多発病変が見られた.以上より副脾を疑ったが,他の悪性疾患を否定できず,また間歇的な腹部仙痛発作を認めたため,開腹術を施行した.<br> 大網前面に胃大網動静脈につながる長さ90mmの茎を有する径40mm大の副脾と,長さ25mmの茎を有する径21mm大の副脾を認めた.ともに茎の起始部で切除した.組織学的に2個とも副脾と診断した.
著者
太田 博俊 高木 国夫 大橋 一郎 田村 聡 久野 敬二郎 梶尾 鐶 加藤 洋
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.14, no.10, pp.1399-1408, 1981-10-01
被引用文献数
10

当外科において手術された1978年10月までの1000例の単発早期胃癌に対して肉眼分類を中心に時代的変貌を加味しつつ, その臨床像を検討した. 最近は手術胃癌の3例に1例は早期癌で, 陥凹型早期癌が多く, 占居部位では隆起型は胃下部, 陥凹型は, 胃中部に多い. 年齢分布はピークは隆起型は60歳代の山型, 陥凹型は50歳代の丘型を示した. 症例数では隆起型と陥凹型は, 1対4の比率で, 深達度 m と sm ではほぼ同率であった. 早期胃癌のリンパ節転移率は 12.7%, m 癌は 21.7%. 隆起型では, 20.9% その内 m 癌は 1%, sm 癌は, 33.3%, 陥凹型では, 10% その内 m 癌は 3.9%, sm 癌は 16.7% であった. 治癒切除例の5生率は 93.8% 非治癒切除例で 56.5% であった.