著者
小坪 遊 大橋 和典 高藤 晃雄
出版者
日本ダニ学会
雑誌
日本ダニ学会誌 (ISSN:09181067)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.71-76, 2004 (Released:2005-06-15)
参考文献数
11
被引用文献数
6 6

近畿地方から発見され,新種として記載されたミツユビナミハダニの食性,発育速度および増殖能力を調べた.本種はナス科植物,特にナス属で高い生存率を示し,ナス科のスペシャリストであることが示唆された.また,卵から成虫までの雌の発育期間は8.85日,内的自然増加率は0.321/日であり,重要な農業害虫であるナミハダニやカンザワハダニを上回り,これまでに報告されたTetranychusの中で最も高い増殖力を有していた.これらは本種がナス科作物の重要害虫になる可能性があることを示唆している.
著者
亀崎 宏樹 大橋 和典 石原 圭朗 佐々木 義昭 高藤 晃雄
出版者
日本ダニ学会
雑誌
日本ダニ学会誌 (ISSN:09181067)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.145-151, 2007 (Released:2007-12-16)
参考文献数
17
被引用文献数
3 3

The lethal effects of two types of oxygen absorbers on the eggs of the house dust mites, Dermatophagoides farinae, D. pteronyssinus, and Tyrophagus putrescentiae were studied. For D. farinae, and D. pteronyssinus, the mortality obtained after 2 days in an air-tight container with iron (Fe)-type oxygen absorbers was 100%, while an ascorbic-acid-type oxygen absorber needed 5 days to obtain 100% mortality. On the other hand, the two types of oxygen absorbers showed no significant lethal difference on T. putrescentiae.
著者
河上 康子 山崎 一夫 大橋 和典 中浜 直之
出版者
大阪市立自然史博物館
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

ダンダラテントウは赤道地方から中緯度地域に広く分布し,1910年-1990年にかけて,気候の温暖化に伴い九州地方から関東・北陸地方へ分布を拡大した.本種は鞘翅の斑紋型に黒色から赤色の多型があり,分布北限に近い高緯度ほど黒い型が多く,低緯度ほど赤い型が多いクラインを示す.本研究では本種の21地域232個体のミトコンドリアCOI領域620bpを解読し,分布北限地域では遺伝的多様度がやや減少していること,遺伝的集団構造は2つの系統があることを解明した.ふたつの系統のうち片方は古くから分布している琉球以南で割合が高く,もう片方の系統は分布北上後の本州での割合が高かった.
著者
大橋 和典 小坪 遊 高藤 晃雄
出版者
日本ダニ学会
雑誌
日本ダニ学会誌 (ISSN:09181067)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.107-113, 2003-11-25
参考文献数
9
被引用文献数
1 6

近畿地方から発見され,新種記載されたミツユビナミハダニの発生分布および越冬能力を調査した.本種は,大阪府,京都府,兵庫県および東京都で発生が確認され,主にイヌホオズキを利用していた.冬期でも全てのステージが活動していたことから非休眠性種である考えられたが,冬期に生存している個体の割合は低く,本種は熱帯または亜熱帯に起源する侵入種であると考えられた.しかし,本種は2001 年に発見されてから少なくとも2 度の越冬に成功しており,すでに分布の拡大を始めているものと思われた.
著者
田島 隆宣 大橋 和典 高藤 晃雄
出版者
日本ダニ学会
雑誌
日本ダニ学会誌 (ISSN:09181067)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.21-27, 2007 (Released:2007-06-06)
参考文献数
19
被引用文献数
3 6

個体群間の交流が可能な同所的に植栽されたキョウチクトウ,アジサイおよびヤマブキに発生するカンザワハダニ個体群が,それらが発生している寄主植物に特異的に適応しているかどうかを明らかにするため,これらの寄主植物における各個体群の成虫化率と産卵数を比較した.その結果,すべての個体群における成虫化率は,各個体群が利用していた寄主において利用していない寄主よりもはるかに高かった.また,産卵数も寄主として利用していた寄主で高い傾向がみられた.特に,毒性の高いキョウチクトウとアジサイの個体群間では寄主利用能力が著しく異なり,キョウチクトウ個体群はアジサイ上で,アジサイ個体群はキョウチクトウ上で成虫化率,産卵数ともに著しく低かった.このことから,これら2個体群間には寄主利用能力に分化がみられ,同所的にホストレースが形成される可能性が示唆された.また,それぞれの個体群が一方の寄主に特異的に適応する結果,他方に対する利用能力を喪失するというトレードオフの存在が示唆された.