著者
中神 智和 土岐 彰 渡井 有 大橋 祐介 田山 愛 杉山 彰英 中山 智理 鈴木 孝明
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.252-257, 2017-04-20 (Released:2017-04-20)
参考文献数
31

【目的】多精巣症は,「同一固体に3 個以上の精巣が存在する先天奇形」と定義される稀な疾患である.われわれは多精巣症の臨床像,治療方針について検討した.【方法】対象は,昭和大学病院および関連病院3 施設において5 年間に経験した多精巣症の5 症例をもとに,後方視的に検討を行った.【結果】全例3 歳未満で,左側に存在し,停留精巣の手術を契機に診断した.1 例は片側に3 個の精巣を有し,内2 個は腹腔内に位置していた.4 例は,鼠径管内に2 個の精巣があった.いずれも温存し,精巣固定術を行った.術後,1 例は2 個の精巣すべてに発育を認めた.固定した 2 個の精巣中1 個の精巣に萎縮を認めたのは3 例あり,1 例はすべての精巣に萎縮を認めたため摘出した.【結論】余剰精巣は,腫瘍化と造精能の欠如を理由に摘出されることが多い.海外のレビュー140 例中,悪性腫瘍の合併は5.7%で,全例高位に位置していた.造精能の欠如例は26%で,多精巣の50%以上が造精能を有していた.文献的考察から,治療方針として精管との交通性がある小児例では温存し,成人例でも生検後に方針を決めるようにしたい.
著者
野村 由美子 野田 清仁 大橋 祐介 鹿野 真弓
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会 第48回日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
pp.S5-2, 2021 (Released:2021-08-12)

感染症予防ワクチンは、免疫反応の惹起を介して有効性を発揮する特徴があり、通常の医薬品を対象とした非臨床試験ガイドラインが適用可能とは限らない。日本では、「感染症予防ワクチンの非臨床試験ガイドラインについて」(2010年5月27日)により考え方が示されてきたが、近年はワクチンの開発環境が変化しており、ワクチンの改訂の必要性が認識された。 ワクチンの開発に係る困難な点を企業アンケートによって抽出したところ、非臨床試験に関して、投与経路追加時等の全身暴露毒性試験の要否や安全性薬理試験要否の判断基準等が指摘され、これらの課題について、開発品目における対応状況の調査や国内外のガイドラインの比較等を実施した。 投与経路追加に関しては、筋肉注射と皮下投与が可能な7品目について、いずれも反復毒性試験は一方の投与経路のみで実施し、局所刺激性試験を両方の投与経路で実施していた。また、WHOのガイドラインでは、経鼻投与に際しての脳神経系への影響など代替経路開発時の留意点が具体的に示されていた。 安全性薬理試験については、国内ガイドラインでは他の毒性試験であらかじめ安全性薬理のエンドポイントを評価できる必要があるのに対し、WHOガイドラインでは他の試験で生理機能への影響が懸念される場合に実施することとされていた。この違いを反映して、国内のみで開発されているワクチンの方が海外でも開発されているワクチンより、安全性薬理試験の実施率が高かった。 これらの結果に基づき、投与経路追加時等について全身暴露の毒性試験は必ずしも全投与経路で必要ないこと、安全性薬理試験については他の非臨床安全性試験で評価可能とする等の改訂を提案した。ワクチンについても、日本で遅滞なく新規ワクチンが導入されることが重要であり、ガイドラインの違いによる非臨床試験のやり直しを防ぐため、要求事項の国際整合性を踏まえた改訂の提案を行った。