著者
大沢 啓子 大沢 夕志
出版者
公益財団法人 山階鳥類研究所
雑誌
山階鳥類学雑誌 (ISSN:13485032)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.253-262, 2022-12-15 (Released:2022-12-15)
参考文献数
11

アブラコウモリPipistrellus abramusは,国内では北海道南部から沖縄まで,都市やその郊外で最も普通に見られる種である.原則夜行性であるが,日没前後の明るい時間にも活動するため,昼行性の捕食性鳥類の餌となることがある.我々は2012年4月から2022年5月までの埼玉県川越市にある小畔川の河岸からの710日の観察で,飛翔中のアブラコウモリに対する昼行性鳥類の捕食行動を47件観察した.捕食行動を行った鳥類にはツミAccipiter gularis,チョウゲンボウFalco tinnunculus,ハヤブサFalco peregrinus,モズLanius bucephalus,ハシボソガラスCorvus coroneが含まれる.都市近郊にすむ昼行性の捕食者の鳥にとって,アブラコウモリが潜在的な餌となりうることを示している.
著者
安井 さち子 河合 久仁子 佐野 舞織 佐藤 顕義 勝田 節子 佐々木 尚子 大沢 夕志 大沢 啓子 牧 貴大
出版者
低温科学第80巻編集委員会
雑誌
低温科学 (ISSN:18807593)
巻号頁・発行日
vol.80, pp.453-464, 2022-03-31

尾瀬のコウモリ相を把握するため,2017~2019年の6~10月に,森林での捕獲調査とねぐら探索調査を行った.その結果,2科8属11種132個体が確認され,コキクガシラコウモリ,モリアブラコウモリ,ノレンコウモリが尾瀬で新たに確認された.過去の記録とあわせて,尾瀬で確認されたコウモリ類は2科9属14種になった.森林での捕獲調査で,捕獲地点数・個体数ともに最も多い種はヒメホオヒゲコウモリだった.尾瀬のヒメホオヒゲコウモリの遺伝的特徴を明らかにするため,分子生物学的な分析を行った.遺伝子多様度は0.82583,塩基多様度は0.00219だった.他地域の個体を含めたハプロタイプネットワークでは,複数のグループに分かれなかった.
著者
船越 公威 大沢 夕志 大沢 啓子
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳類科学 = Mammalian Science (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.29-34, 2006-06-30
参考文献数
6
被引用文献数
2

オリイオオコウモリ<i>Pteropus dasymallus inopinatus</i>について, 沖縄島周辺島嶼での1994~2005年にわたる直接観察, 食痕・ペリットの有無および聞き取り調査によって, 古宇利島, 伊江島, 水納島, 伊計島, 宮城島, 平安座島, 浜比嘉島, 津堅島および久高島に生息することを確認した. 与論島のオオコウモリに関して, 入手された標本・資料の検討結果からオリイオオコウモリと同定し, 与論島が本亜種の新分布地として追加された. さらに同島では詳細な生態的調査も行い, 2004年9月と2005年2月に少なくとも5頭の生息を確認した. 特に夏~秋季には親子も見られた. 食物としては, 春季にはアコウ<i>Ficus superba</i>やモモタマナ<i>Terminalia catappa</i>の果実, 夏~秋季にはシマグワ<i>Morus australis</i>やフクギ<i>Garcinia subelliptica</i>の果実, 冬季にはガジュマル<i>F. microcarpa</i>やアコウの果実が利用されていた. 以上の観察結果からオリイオオコウモリは, 個体数が少ないながらも, 一年を通して与論島に定住し繁殖しているものと考えられる.
著者
船越 公威 大沢 夕志 大沢 啓子
出版者
The Mammal Society of Japan
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.179-184, 2012-12-30

これまで沖永良部島においてはオオコウモリの分布記載がなく,また生息についても断片的な情報しか得られておらず,生息の有無を確定することができなかった.しかし,住民への聞き取りおよび記録写真等で2003年3月にオリイオオコウモリ<i>Pteropus dasymallus inopinatus</i>の生息が判明した.また,2011年6月に本種の成獣雄個体が捕獲された.同年10月と12月,2012年1月に本種が目撃された.加えて,2012年2月における精査で,少なくとも4頭の生息を確認し,この時期の食物としてギョボク<i>Crataeva religiosa</i>,オオバイヌビワ<i>Ficus septica</i>,モモタマナ<i>Terminalia catappa</i>およびアコウ<i>Ficus superba</i>の果実が利用されていた.以上の観察結果等から,オリイオオコウモリは沖永良部島において個体数は極めて少ないものの,1年を通じて他の島への季節的な移動もなく定住しうると考えられた.<br>
著者
船越 公威 大沢 夕志 大沢 啓子
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.29-34, 2006 (Released:2007-06-26)
参考文献数
6
被引用文献数
2

オリイオオコウモリPteropus dasymallus inopinatusについて, 沖縄島周辺島嶼での1994~2005年にわたる直接観察, 食痕・ペリットの有無および聞き取り調査によって, 古宇利島, 伊江島, 水納島, 伊計島, 宮城島, 平安座島, 浜比嘉島, 津堅島および久高島に生息することを確認した. 与論島のオオコウモリに関して, 入手された標本・資料の検討結果からオリイオオコウモリと同定し, 与論島が本亜種の新分布地として追加された. さらに同島では詳細な生態的調査も行い, 2004年9月と2005年2月に少なくとも5頭の生息を確認した. 特に夏~秋季には親子も見られた. 食物としては, 春季にはアコウFicus superbaやモモタマナTerminalia catappaの果実, 夏~秋季にはシマグワMorus australisやフクギGarcinia subellipticaの果実, 冬季にはガジュマルF. microcarpaやアコウの果実が利用されていた. 以上の観察結果からオリイオオコウモリは, 個体数が少ないながらも, 一年を通して与論島に定住し繁殖しているものと考えられる.
著者
船越 公威 大沢 夕志 大沢 啓子
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.179-184, 2012 (Released:2013-02-06)
参考文献数
16

これまで沖永良部島においてはオオコウモリの分布記載がなく,また生息についても断片的な情報しか得られておらず,生息の有無を確定することができなかった.しかし,住民への聞き取りおよび記録写真等で2003年3月にオリイオオコウモリPteropus dasymallus inopinatusの生息が判明した.また,2011年6月に本種の成獣雄個体が捕獲された.同年10月と12月,2012年1月に本種が目撃された.加えて,2012年2月における精査で,少なくとも4頭の生息を確認し,この時期の食物としてギョボクCrataeva religiosa,オオバイヌビワFicus septica,モモタマナTerminalia catappaおよびアコウFicus superbaの果実が利用されていた.以上の観察結果等から,オリイオオコウモリは沖永良部島において個体数は極めて少ないものの,1年を通じて他の島への季節的な移動もなく定住しうると考えられた.