著者
杉崎 幸子 大河原 悦子 峯岸 喜子
出版者
日本生活体験学習学会
雑誌
生活体験学習研究 (ISSN:13461796)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.73-78, 2008-02

食の外部化が進み、中食産業が盛んになった今日、子どもたちの食生活が大きく変化した。台所から子どもたちの姿が消え、自ら食事作りをするチャンスが減少し、食に関した知識を家族から学ぶことが少なくなった。平成17年の食育基本法の制定を受け、食育の大切さが提唱され、いろいろな分野で食に関する体験学習が展開されているが、筆者らは千葉県の郷土料理である太巻き祭りずしを用いた体験学習を、小学生、発育成長期の幼児の母親、親子を対象に12年ほど積極的に実施している。更に障害の有無に関わらず郷土料理を学ぶ権利は平等だという理念に基づき、知的障害を有する人々を対象に3年連続で実施しているのでその内容を報告する。
著者
阿部 愛波 大河原 悦子 柳澤 幸江 中島 肇
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.28, 2016

<br><br>【目的】千葉県の郷土食である「性学もち」は粳米から作られる。特徴として粘り気が少なく喉に詰まりにくい、汁物の中でも溶けにくいということが挙げられるが、製造過程においてどのような科学的変化が起きているのかは明らかになっていない。そこで本研究では性学もちを様々な条件で作成し、通常のレシピにある工程の意義や、性学もちの望ましい水分量等を明らかにすることを目的とした。<br><br>【方法】現在に伝わる性学もちの製造方法は、一晩浸水し10分程度蒸し、芯が残った状態で一度水洗いをし、再度芯がなくなるまで蒸し上げ、搗くというものである。本実験では伝承されている性学もちの製造方法と、対象群として一度蒸した後の水洗いの工程を30分浸水に変更したものとで、水分量と保形成について検討した。<br><br>【結果】通常の製造法で作成した性学もちは、水分量が50.24%~58.89%であったのに対し、水洗いを浸水に変更した群では、55.03%~64.41%であった。保形成は通常の製造方法群が高く、食感も好ましかった。対照群である水洗いを浸水へ変更した群では保形成は低く、食感はべたつきを感じる結果となった。これは浸水させたことにより吸水が高まり、その結果水分量に違いが出たからと考えられるが、アミロース、アミロペクチンの含量についても今後検討する必要がある。水分量やアミロース・アミロペクチン量を明らかにすることで、伝承されている製造方法にある二度蒸しや、水洗いの理由を明らかにすることができると考える。
著者
大河原 悦子 高梨 萌 阿部 愛波 中島 肇 柳澤 幸江 龍崎 英子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成28年度大会(一社)日本調理科学会
巻号頁・発行日
pp.68, 2016 (Released:2016-08-28)

【目的】】千葉県の東総地区(現在旭市)に江戸時代から伝わる粳米を用いた独特の製法で作られる性学もちがある。本研究は、粳米で作る性学もちが餅に比べ付着性が低く飲み込みやすいと言われている点に着目し、その性質及び物性を分析し飲み込みやすさを科学的に検討した。高齢者向け食品開発として、また、千葉県郷土食の伝承と米消費拡大という側面からの活用も目的とした。【方法】咀嚼機能の観点から女子大生による性学もちと市販切餅の官能評価検査及び .XTplusTEXTUREANALYAER(StableMicroSystens)を用いて性学もちと市販の切餅の硬さ・付着性・凝集性を測定し性学もちの郷土食歴史的背景の観点から地域住民による認知度アンケートを実施した。【結果】官能評価検査では、市販の切餅に比べ飲み込みやすいという項目で有意な差がでたが、おいしさについては差がみられなかった。テクスチャーアナライザー分析した結果、硬さと付着性には、性学もちと切餅には有意な差はみられなかった。一方、見かけの凝集性は性学もちには切餅には統計的な有意な差がみられた(p<0.05)。この結果から、性学もちは市販の切餅と比較して飲み込みやすいことが示唆された。一方、郷土史研究の視点から、千葉県市川市民10~70歳代(n=181)の認知度アンケート調査を行った所、性学もちを知っていると答えた人は全体の5.5%と低くかった。江戸時代の道学者大原幽学が考案した性学もちは農民の困窮生活の中で餅文化への強い信仰心から誕生した。大原幽学の特異かつ不幸な歴史的背景から性学もちに関する資料は少なく、認知度の低さにつながるのではないかと推察される。