著者
杉崎 幸子 大河原 悦子 峯岸 喜子
出版者
日本生活体験学習学会
雑誌
生活体験学習研究 (ISSN:13461796)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.73-78, 2008-02

食の外部化が進み、中食産業が盛んになった今日、子どもたちの食生活が大きく変化した。台所から子どもたちの姿が消え、自ら食事作りをするチャンスが減少し、食に関した知識を家族から学ぶことが少なくなった。平成17年の食育基本法の制定を受け、食育の大切さが提唱され、いろいろな分野で食に関する体験学習が展開されているが、筆者らは千葉県の郷土料理である太巻き祭りずしを用いた体験学習を、小学生、発育成長期の幼児の母親、親子を対象に12年ほど積極的に実施している。更に障害の有無に関わらず郷土料理を学ぶ権利は平等だという理念に基づき、知的障害を有する人々を対象に3年連続で実施しているのでその内容を報告する。
著者
原口 サトミ
出版者
日本生活体験学習学会
雑誌
生活体験学習研究 (ISSN:13461796)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.99-106, 2004-01

『自然と遊ぼう「ありんこクラブ」』は活動を始めて4年目を迎えました。保育士、学童保育指導員の経験の中から ①多くの子ども達に自然の中で体を存分に使って遊ぶ楽しさを知って欲しい②大人たちに子どもの遊びの大切さを思い出してほしい③遊び文化を絶やしたくない④地域で遊ぶことによりやがては地域の環境保全につながってほしい⑤大人たちに現在の生活や生き方を見つめなおしてほしい このような願いから夫や仲間達とつくったクラブです。月一回の活動ですが、毎月発行している「ありんこ新聞」を読んで、都合のつく人が参加するというゆるやかな活動です。野外活動が主な為、保険の関係で会員制度にしていますが、一般の方への参加を呼びかけて環境教育学習や、上映会などにも取り組んでいます。本稿はクラブを始めた経緯から現在までの実践報告と、活動の広がりなどをまとめてみました。
著者
川上 利香
出版者
日本生活体験学習学会
雑誌
生活体験学習研究 (ISSN:13461796)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.51-57, 2007-03

宇美町子育て支援センター・ゆうゆうは、住民の要望がきっかけとなり生まれ、行政と住民が協働で運営にも関わっている子育て支援センターである。各地の子育て支援の取り組みを参考に、多くの方にご協力頂きながら「地域の子育てコミュニティー施設」として、親子が主体的に過ごすことができ、「見よう見まねで子育てができる」場所を目指して、平成15年4月に開館後、3年9ヶ月が経過し、本稿はその実践活動をまとめたものである。
著者
高山 静子
出版者
日本生活体験学習学会
雑誌
生活体験学習研究 (ISSN:13461796)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.73-79, 2004-01

「地域ぐるみの子育てをすすめるひだまりの会」は、乳幼児とその親子のための子育てサロンを地域で運営・推進している。NPO「子どもとメディア」は、子どもとメディアの関係について調査・研究を行う団体である。はじめに、二つの団体の活動と調査から、乳幼児の生活の現状について報告を行う。家庭で育つ乳幼児の現状は、ビデオ・テレビ視聴の早期化・長時間化と家庭内への引きこもりが広がっており、子どもが遊びと人との関わりを体験する機会が減っている。乳幼児の映像メディア漬けと親子の引きこもりには、遊ばせる場所の少なさ、遊び環境の質の貧しさ、親が遊びの必要性を知らないという3つの要因が考えられる。解決策として、①乳幼児のメディア漬けの危険性を広く知らせる。②遊びの重要性を乳幼児の親に知らせる。③遊びの場をつくるという3つの活動について報告を行う。
著者
井上 豊久
出版者
日本生活体験学習学会
雑誌
生活体験学習研究 (ISSN:13461796)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.13-28, 2006-03

研究では質問紙調査と重ね合わせ、子どもの生活を変容させることで学びを変容させようという取り組みのモデル事業を実施・検討した。具体的には昼休みを中心とした遊びを充実させることで人間関係づくりの能力や学ぶ意欲を増大させようとしている福岡県F小学校(1学年2クラス)、子どもの生活をメディアとのよりよい関係づくりを基本に変容させていくことで学びも変えていこうという埼玉県A小学校(1学年3クラス)等に関するものである。本研究では最初にテーマの概観を文献研究により行い、次に質問紙調査による学習理解度に関する分析とインタビュー調査による具体的なケース・過程を考察することにより今後の学びの変革への現実的な提案を示した。具体的に検討した内容としては1つは、子どもの生活と学びに関する経緯と課題を明らかにした。2つ目は質問紙調査結果を基に因子分析による総合的考察、学習理解度と子どもの生活意識・自己イメージとのクロス分析から子どもの生活と「学び」の構造を明確にし、最後にインタビュー調査から子どもの生活や学びの変容過程に関する試行的考察を行い、子どもに対する遊びやメディアとの主体的な関係づくりの取り組みの有効性及びその課題を動的に把握した。
著者
大村 綾
出版者
日本生活体験学習学会事務局
雑誌
生活体験学習研究 = The Journal of life needs experience learning : 日本生活体験学習学会誌 (ISSN:13461796)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.33-42, 2018-07

本研究は一日保育士体験での親の気付きに着目し、親の子ども理解や子育てへの認識が如何になされてい くかについて把握することを目的とした。一日保育士体験に参加する親とそのクラス担当保育者の他、園長、主任へのインタビュー調査を実施し、結果を親の気付きの視点でカテゴリー分けした後、①安心感、②家での子どもの姿との違い、③専門的な知識を持った保育者の対応、④見えない配慮、⑤園の保育方針の理解、⑥保育者の 相互理解の6つの観点で整理を行った。また考察では、親と担当保育者との個人面談の時間が、一日保育士体験のふり返りの時間となり、体験の意味 付けの時間にもなっていること、さらには一日保育士体験による親の気付きが、単なる保育参観やプログラム化された保育参加による親の気付きとは質の異なる気付きとなっている点を特徴として明らかにした。
著者
本村 信幸
出版者
日本生活体験学習学会
雑誌
生活体験学習研究 (ISSN:13461796)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.73-75, 2002-07

テレビゲーム中心で会話のない我が子のあそびを目の当たりにして、これを現代的な課題ととらえ、生活体験のチャンスを設けることで、子どもの生きる力を育むことができるであろうと始めた事業である。日時を決めて「さあ出発!」とは行かない。地域や保護者の理解、子ども達の意欲の喚起、子どもだけの作戦会議、支援者の選定などなど事前の準備には相当の期間を費やした。なかでも「地域の人と共に学ぶPTA 研修」は人集めに苦労し、合宿対象となる保護者の意識高揚とまでは至らなかった。子どもは、家事のすべてを協力して行い、風呂は近所の高齢者宅へ「もらい風呂」に出向き、人の心の温かさにふれ苦しい中にも楽しい合宿であった。「人と人とのもみ合いがない今こそ、この試みは大事..」と強く実感しました。この取り組みをとおして、子離れできない親、地域と交流のない家庭、現代の家庭が抱えるさまざまな問題が見えると同時に関わった住民に笑顔が広がり、家庭・地域の教育力再生へ向けた試みであったように思います。
著者
猪山 勝利
出版者
日本生活体験学習学会
雑誌
生活体験学習研究 (ISSN:13461796)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.3-8, 2001-01

生活体験の現代的構成を明らかにしていく基本視角として、現代的生活創造性、こどもの生活主体性、創造的実働性、個・協同的関係性、こどもの生活構造を提起した。その視角から、生活体験の現代的構成として、身体性、食生活性、住生活性、ファッション性、仕事性、生活言語性、文化性、人間・社会関係性、情報・バーチャル性、生活行事性等10の生活体験領域を析出した。
著者
時田 純子
出版者
日本生活体験学習学会
雑誌
生活体験学習研究 (ISSN:13461796)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.59-69, 2001-01-01

本論文は、日々の生活体験を重視し、心と体のたくましい子を育てることを試みた大分県中津市如水保育園の取り組みを報告したものである。本園は、預かるだけの保育園ではなく、子どもをまん中にして、園と親、親同士が共に支え合う場としての保育園を目指すと同時に、1984年から保育のなかに①リズム運動など朝の運動、②雑巾がけ、畑仕事、配膳などの勤労体験、③描画による表現体験、④お泊まり保育や他園との交流保育による共同生活体験など、各種の体験活動を導入し、積極的に体験重視の保育をおこなってきた。また、保育園を中心に子育てに関わる親の学習活動や交流活動を活性化するようにした。その結果、①体力・運動能力のある子が育ってきた、②低体温児がいなくなった、③表現力と集中力が育った、④早寝早起きの子が増えた、⑤テレビの長時間視聴児が減った。
著者
兄井 彰 須﨑 康臣 横山 正幸
出版者
日本生活体験学習学会事務局
雑誌
生活体験学習研究 : 日本生活体験学習学会誌 (ISSN:13461796)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.43-50, 2013-01

平成20年から平成22年の3カ年にかけて、福岡県内の小学4年生、6年生、中学2年生、3年生、計44,806人を対象に実施した自尊感情(Rosenberg, M.(1965)の作成した質問紙の和訳)と生活実態(①就寝時間、②遊ぶ時間、③メディア視聴時間、④学習時間、⑤読書量、⑥友人の人数、⑦手伝いの頻度、⑧被叱責体験の頻度、⑨被称賛体験の頻度、⑩授業中の挙手・発言の頻度)について、調査を行ったデータを基に、要因間の因果関係を推定できる共分散構造分析を用いて、子どもの自尊感情と生活のあり方の関係について検討した。その結果、保護者から褒められることが子どもの自尊感情に影響を与えており、保護者が褒めることにより自尊感情は高まることが確かめられた。さらに、子どもの自尊感情は、就寝時間やお手伝い、挙手・発言行動に影響を与え、自尊感情が高いと早く寝るようになり、お手伝いを頻繁に行い、授業中に手を挙げたり、発言したりする行動が多くなることが確かめられた。
著者
南里 悦史 猪山 勝利 井上 豊久 永田 誠
出版者
日本生活体験学習学会
雑誌
生活体験学習研究 (ISSN:13461796)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.81-87, 2004-01-30 (Released:2009-04-22)

本研究では、ドイツ・スウェーデンにおける生活体験学習の基本状況の概観とともに、平成2002年度の科学研究費による視察研究結果を示し、現時点でのドイツ・スウェーデンにおける生活体験学習の現状と課題について検討した。視察した事業は1. フィフティ・フィフティプログラム(ハンブルク) 2. 生物と環境教育センター(ハンブルク) 3. 子どもと有機農業プロジェクト(ハンブルク近郊) 4. ドイツの環境教育プロジェクト(ハンブルク) 5. 保育園での「ウォーレ・オックスキュール」(ヨーテボリ) 6. 野外教育推進協会(ヨーテボリ)、の6事業である。ドイツ・スウェーデンにおいては日本の生活体験学習そのものの事業はみられなかったが、体験学習全般に関して日本との比較研究から、1. 体験に基づく自己管理的な危機管理学習の重視、2. 体験活動のサイクルとして、計画・実施・評価、特に評価における振り返り・気づき・次回へのフィードバックの体系的組み入れ、3. 自己決定性を重視した自立への意図的な体験学習支援の視点の徹底、といった3点が顕著であった。
著者
兄井 彰
出版者
日本生活体験学習学会
雑誌
生活体験学習研究 (ISSN:13461796)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.25-34, 2004-01-30

本研究では、参加した不登校傾向を示す児童・生徒の各キャンプに対する事後の印象と自己有能感(コンピタンス)及び抑うつ傾向の調査から、さまざまな体験ができ、シリーズで年間通して行われるリフレッシュキャンプが持つ教育的効果を明らかにしようとした。その結果、成功体験が多いキャンプで楽しかったと答えた子どもが多かった。このことから、できるだけ多くの成功体験ができるキャンププログラムの工夫が示唆された。また、自己有能感と抑うつ傾向は、各キャンプ前後で、子どもにとって望ましい変化が認められた。このことから、キャンプ全体を通して考えると、本キャンプのようなさまざまな体験ができ、年間複数回行われるシリーズキャンプは、不登校児童・生徒に対して一定の教育的効果があると考えられる。しかし、期待した以上のキャンプの効果はみられなかった。これは、本キャンプの活動がどちらかといえば楽しさ中心の内容が多く、克服や達成を伴う活動をあまり多く体験できなかったためだと考えられる。あるいは、本キャンプは、複数年度にまたがって参加している児童・生徒が多く、初めて体験する活動が少なかったためだと推察される。
著者
松本 壽通
出版者
日本生活体験学習学会
雑誌
生活体験学習研究 (ISSN:13461796)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.89-92, 2001-01

21世紀を担う現在の子どもたちの心の問題が、すでに国家的な対応を迫られるほど深刻化しているが、その予防のためにも、乳幼児期から心の健康ほど大切なものはない。子どもの豊かな発達の為に欠くべからざる基本的体験について論述した。乳幼児期に心の健康のために必要な体験として、先ず新生児期より乳幼児期早期に関して、授乳、抱擁、声かけなど、児と母親との間の接続的な身体接触による母子の愛着行動の体験の必要性を強調し、同時に児の欲求が満たされることによって得られる児の基本的信頼感、及び欲求が満たされないことによる不信感などの体験が、児の将来の豊かな心の発達に深い影響を及ぼすこと。さらに乳幼児期後期には人見知りの必要性そして乳幼児期に異年齢集団による、外で思う存分遊べる自由に遊べる体験の大切さ、及び反抗期を経験することの重要性などについて述べた。
著者
田中 孝知
出版者
日本生活体験学習学会
雑誌
生活体験学習研究 (ISSN:13461796)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.89-98, 2004-01

中学生の心の健康は非常に悪い状況にある。福岡県(2002)がおこなった調査によると、「とても疲れたと思うことがある」に「よくある」「ときどきある」と答えた中学生は85.4%、「何もしたくないと思うことがある」に「よくある」「ときどきある」と答えた中学生は76.8%、「夜よく眠れないことがある」に「よくある」「ときどきある」と答えた中学生は46.8%であったと報告している。このような中学生の心の健康に影響を与えている原因の1つとして、生活のあり方が考えられる。先行研究でも、関連性を示しているが、具体的な1週間の生活時間との関係が示されていなかった。そこで本研究では、中学2年生283名を対象に、抑うつという指標での心の健康と一週間の生活のあり方を軸との関係を明らかにするために、実態調査をおこなった。その結果、抑うつ感情と睡眠時間との間に関連性がみられた。そこで、生活の中でも重要な位置にある睡眠に焦点をあて、起床時間・就寝時間・睡眠時間を中心に論及していく。