著者
大泉 伝 斉藤 和雄 Le DUC 伊藤 純至
出版者
Meteorological Society of Japan
雑誌
気象集誌. 第2輯 (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.98, no.6, pp.1163-1182, 2020 (Released:2020-12-17)
参考文献数
34
被引用文献数
5

数値気象予測モデルの要素が豪雨のシミュレーションに与える影響を調べるため、広い領域を対象とした超高解像度実験を2014年8月の広島の豪雨事例で行った。本研究はPart 1 の2013年10月伊豆大島での研究に続くものであり同様の実験を行った。これらの研究から豪雨のシミュレーションにおいて広い領域で高解像度モデル(解像度500m以下)を用いる有用性を示した。 広島の事例では降水帯の位置や強度はモデルの解像度に影響を受けることがわかった。解像度2kmの実験では降水帯は再現されたがその位置は北東にずれていた。解像度500mと250mの実験ではこの降水帯の位置ずれは軽減された。最も降水帯の位置と強度をよく再現したのは解像度250mの実験であった。降水帯に対する境界層スキームの影響は小さく、この点は伊豆大島の事例と異なっていた。 本研究では対流コア数のモデル解像度依存性についても調査した。モデルの解像度に対する対流コア数の変化率は解像度500mで小さくなる事がわかった。この結果は、対流コア数は解像度500mより高解像度になると収束する可能性を示す。
著者
大泉 伝 斉藤 和雄 伊藤 純至 レ デュック
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会研究発表会要旨集
巻号頁・発行日
vol.29, 2016

本研究では、「京」コンピュータに最適化した気象庁非静力学モデル(JMA-NHM)を用いて、広域を対象とした超高解像度実験を行い、それによって豪雨の予測が向上するかを調べた。豪雨の数値予報に影響を与える次の3つの要因について調べた:(1)解像度(5, 2 km, 500, 250 m)、(2)乱流クロージャモデル:Mellor-Yamada-Nakanishi-Niino(MYNN)とDeardorff(DD)スキーム、(3)島の地形。 MYNNを用いた解像度2kmと500mの実験では、強い降水帯が実況より北西に位置し、島を完全に覆わなかった。DDを用いた実験では、実況と同様に降水帯が完全に島を覆い、再現性が良かった。高精度な地形を用いた解像度250mで実験が、降水帯の位置と伊豆大島内の降水分布を最もよく再現した。本研究の結果から、数値モデルによる豪雨の予報では、広い領域を高解像度で計算する事によって、降水の再現性が良くなることを示した。