著者
大津 健聖 平井 郁仁
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.670, 2017-05-24

定義 腸間膜静脈硬化症(mesenteric phlebosclerosis ; MP)は,1993年にIwashitaら1)が新しい疾患概念として提唱した.基本的な病態は,腸壁から腸間膜静脈における石灰化に伴う腸管循環不全による虚血と考えられており,右側結腸を中心に炎症反応を伴わない慢性虚血性変化とされている.近年,MPと漢方薬長期内服との関連性が報告されている.なかでも,漢方薬で頻用される生薬である山梔子は8割以上の症例で内服されており,強い関連が考えられる2).MPを疑う症例には,特に薬剤内服歴などの詳細な病歴聴取が必要である.
著者
大津 健聖 松井 敏幸 西村 拓 平井 郁仁 池田 圭祐 岩下 明徳 頼岡 誠 畠山 定宗 帆足 俊男 古賀 有希 櫻井 俊弘 宮岡 正喜
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.111, no.1, pp.61-68, 2014 (Released:2014-01-05)
参考文献数
26

(背景)腸間膜静脈硬化症(以下MP)は比較的まれな大腸疾患である.その原因として,近年漢方薬との関連が注目されている.(対象と方法)本検討では,自験例と報告例を合わせた42例を対象に,MPと漢方薬の関連を検討した.(結果)自験例の約9割の症例に漢方薬内服歴を認めた.特に,加味逍遥散と黄連解毒湯が多数例で内服されていた.生薬成分では,大部分の症例が山梔子を含む漢方薬を内服していた.(考察)MP症例の多くは漢方薬の内服歴があり,MP発症後も漢方薬の継続内服により症状増悪をきたした症例が存在し,同じ漢方薬の長期内服を行った夫婦にMPを発症したことから,漢方薬成分山梔子がMP発症に強く関与すると推測した.
著者
金光 高雄 八尾 建史 宮岡 正喜 小島 俊樹 中馬 健太 長谷川 梨乃 池園 剛 大津 健聖 小野 陽一郎 植木 敏晴 太田 敦子 田邉 寛 原岡 誠司 岩下 明德
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.215-220, 2019-02-25

要旨●乳頭腺癌は管状腺癌と比べ,病理学的に生物学的悪性度が高いと報告されている.しかし,従来の通常内視鏡観察では乳頭腺癌を診断することは不可能であった.筆者らは,拡大内視鏡観察において円形の腺窩辺縁上皮で囲まれた円形の窩間部上皮下の間質に血管が存在する特徴的な所見を“vessels within epithelial circle(VEC)pattern”と呼称し,乳頭状の分化腺癌に特徴的な所見であると報告した.以前筆者らの報告した症例対照研究より,術前に分化型癌と診断された早期癌において,NBI併用拡大内視鏡により視覚化されるVEC patternが組織学的乳頭状構造を診断するうえで有用であったと報告した.さらに,VEC pattern陽性の早期胃癌の約1/4の病変に未分化型癌の混在や粘膜下層浸潤を認め,VEC patternが術前に癌の高い悪性度を予測するうえで有用なマーカーとなる可能性が考えられた.
著者
武田 輝之 宗 祐人 森光 洋介 大津 健聖 岸 昌廣 八坂 太親 辛島 嘉彦 寺部 寛哉 佐々木 英 下河邉 正行
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.59, no.11, pp.2614-2620, 2017 (Released:2017-11-20)
参考文献数
36

症例は74歳,女性.主訴は貧血と黒色便.貧血の原因検索目的に施行した腹部造影CT検査で,空腸に限局性の壁肥厚・周囲のリンパ節腫脹を認めた.経口的ダブルバルーン小腸内視鏡検査では,空腸に全周性の潰瘍を認めた.潰瘍辺縁はやや厚みがあり,辺縁は整で,壁伸展も良好であった.潰瘍底には露出血管を伴っており,クリッピングによる止血術を行った.生検病理組織所見よりT細胞性リンパ腫と診断した.小腸部分切除術より得られた切除標本から,腸管症関連T細胞リンパ腫Ⅱ型と診断した.消化管出血を契機に診断しえた腸管症関連T細胞リンパ腫の一例を経験したので報告する.