著者
武田 輝之 平井 郁仁 矢野 豊 高田 康道 岸 昌廣 寺澤 正明 別府 剛志 小野 陽一郎 久部 高司 長浜 孝 八尾 建史 松井 敏幸 植木 敏晴
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.163-168, 2018-02-25

要旨●現在,潰瘍性大腸炎を評価するための内視鏡スコアは多数存在するが,スコアの統一化についての一定のコンセンサスはない.これまでのスコアは検者内・検者間一致率などの信頼性評価が十分ではなかったことがその要因の一つである.2012年に提唱されたUCEISはその問題を指摘し検討した上で作成された内視鏡スコアである.今回,筆者らは現在汎用されているMESとUCEISの両者に関して検者間一致率を検討した.その結果,UCEISはMESと比較し,検者間一致率が高い傾向にあった.今後の課題として,UCEISによる粘膜治癒の定義や長期予後との検討などが挙げられるが,妥当性の検証結果からは今後の臨床研究などで使用するスコアとしてより適したものであると考えられた.
著者
大津 健聖 平井 郁仁
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.670, 2017-05-24

定義 腸間膜静脈硬化症(mesenteric phlebosclerosis ; MP)は,1993年にIwashitaら1)が新しい疾患概念として提唱した.基本的な病態は,腸壁から腸間膜静脈における石灰化に伴う腸管循環不全による虚血と考えられており,右側結腸を中心に炎症反応を伴わない慢性虚血性変化とされている.近年,MPと漢方薬長期内服との関連性が報告されている.なかでも,漢方薬で頻用される生薬である山梔子は8割以上の症例で内服されており,強い関連が考えられる2).MPを疑う症例には,特に薬剤内服歴などの詳細な病歴聴取が必要である.
著者
大津 健聖 松井 敏幸 西村 拓 平井 郁仁 池田 圭祐 岩下 明徳 頼岡 誠 畠山 定宗 帆足 俊男 古賀 有希 櫻井 俊弘 宮岡 正喜
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.111, no.1, pp.61-68, 2014 (Released:2014-01-05)
参考文献数
26

(背景)腸間膜静脈硬化症(以下MP)は比較的まれな大腸疾患である.その原因として,近年漢方薬との関連が注目されている.(対象と方法)本検討では,自験例と報告例を合わせた42例を対象に,MPと漢方薬の関連を検討した.(結果)自験例の約9割の症例に漢方薬内服歴を認めた.特に,加味逍遥散と黄連解毒湯が多数例で内服されていた.生薬成分では,大部分の症例が山梔子を含む漢方薬を内服していた.(考察)MP症例の多くは漢方薬の内服歴があり,MP発症後も漢方薬の継続内服により症状増悪をきたした症例が存在し,同じ漢方薬の長期内服を行った夫婦にMPを発症したことから,漢方薬成分山梔子がMP発症に強く関与すると推測した.
著者
梅野 淳嗣 江﨑 幹宏 平野 敦士 冬野 雄太 小林 広幸 河内 修司 蔵原 晃一 渡邉 隆 青柳 邦彦 安川 重義 平井 郁仁 松井 敏幸 八尾 恒良 北園 孝成 松本 主之
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.1411-1422, 2017-10-25

要旨●遺伝学的に確定診断された非特異性多発性小腸潰瘍症45例の臨床像を検討した.本症は女性に多いこと,貧血は必発するが肉眼的血便はほぼみられないこと,炎症所見は比較的低値にとどまること,約30%に血族結婚を認めることが確認された.また,終末回腸を除く回腸を中心に,輪走ないし斜走する比較的浅い開放性潰瘍が腸間膜付着側と無関係に多発することが小腸病変の形態学的特徴と考えられた.性別による比較では,胃病変は女性に有意に多く,ばち指,骨膜症や皮膚肥厚といった肥厚性皮膚骨膜症の所見は男性に有意に多かった.本症の診断に際しては,小腸病変の評価に加えて,上部消化管病変や消化管外徴候の評価,SLCO2A1遺伝子変異の検索も必須と考えられた.
著者
平井 郁仁
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.707, 2021-05-24

本稿では,主にCrohn病(Crohn's disease ; CD)の小腸狭窄に対する内視鏡的バルーン拡張術(endoscopic balloon dilation ; EBD)について解説する.
著者
久部 高司 松井 敏幸 宮岡 正喜 二宮 風夫 石原 裕士 長浜 孝 高木 靖寛 平井 郁仁 池田 圭祐 岩下 明徳 東 大二郎 二見 喜太郎
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.54, no.8, pp.2269-2277, 2012 (Released:2012-10-22)
参考文献数
29
被引用文献数
1

【背景】潰瘍性大腸炎(UC)は,大腸病変のみならず回腸嚢炎など他臓器に様々な合併症を引き起こすことがある.その中で大腸病変に類似したびまん性の胃十二指腸炎がまれながら報告されている.【目的】UCに関連した上部消化管病変の定義を試み,その頻度と臨床経過を検討する.【方法】上部消化管内視鏡検査が施行されたUC 322例を対象とした.大腸病変に類似したびまん性胃十二指腸炎のうち,他疾患が否定され以下の定義に合致するものをUCに関連したulcerative gastroduodenal lesion(UGDL)と定義した.1)UCの治療により胃十二指腸病変が改善する.and/or 2)病理組織学的所見がUCに類似する.【結果】この定義に合致したUGDLは322例中15例(4.7%)で,15例の大腸病変の病型は全大腸炎型または大腸全摘出術後だった.病型別では全大腸炎型146例中9例(6.2%),大腸全摘術後81例中6例(7.4%)に認められ,大腸全摘出術後のうち4例は回腸嚢炎を合併していた.【結論】今後UCの診断治療に際してはUGDLの存在も考慮しなければならない.またUGDLは回腸嚢炎との関連も示唆された.
著者
久部 高司 松井 敏幸 二宮 風夫 佐藤 祐邦 大門 裕貴 武田 輝之 長浜 孝 高木 靖寛 平井 郁仁 八尾 建史 東 大二郎 二見 喜太郎 岩下 明德
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.471-478, 2013-04-25

要旨 潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis ; UC)にも小腸病変が存在することが明らかとなってきたが,その病態については不明である.今回,小腸用カプセル内視鏡を施行した活動期UC 30例,大腸全摘出後11例の内視鏡所見および臨床所見について検討した.小腸病変(浮腫,潰瘍)は41例中15例(36.6%)に認められ,このうち小腸の広範囲に多数存在する潰瘍は6例だった.小腸の広範囲に多数存在する潰瘍6例と,それ以外の35例の臨床背景の比較検討では,潰瘍を有する群では検査時平均年齢24.8±10.8歳,発症時平均年齢20.8±8.7歳と有意に若く(p<0.05),病型は6例とも全大腸炎型または回腸囊炎であり,有意に高い頻度だった(p<0.05).経過観察できた3例は全例小腸病変が消失し,うち2例はプレドニゾロンによる治療で比較的速やかに病変が消失した.さらに,6例のうち4例に上部消化管病変を伴っていたことはUCとの関連を示唆する所見と考えられた.今後,さらにUCにおける小腸病変の臨床的意義について詳細に検討する必要がある.
著者
松井 敏幸 久部 高司 矢野 豊 平井 郁仁
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.237-249, 2014 (Released:2014-02-26)
参考文献数
66

炎症性腸疾患(IBD)である潰瘍性大腸炎(UC)とクローン病(CD)はそれぞれ長期罹患者が増加し,種々の合併症が発症する.その中でも大腸癌(CRC)は最も重大な合併症であり,生命予後にも強く関与するため,その軽減に努力が重ねられてきた.本稿では,IBDにともなうCRCの近年の疫学的特徴について述べ,特に欧米とは異なったわが国独自の特徴にも触れた.CRC早期発見にはサーベイランス内視鏡(SC)の意義は高い.その適応などについて概要を解説する.
著者
平井 郁仁 高田 康道 佐藤 祐邦 高橋 晴彦 矢野 豊 高津 典孝 松井 敏幸 今村 健太郎 池田 圭祐 岩下 明德 宮岡 正喜
出版者
医学書院
雑誌
胃と腸 (ISSN:05362180)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.345-357, 2014-03-25

要旨 当科において診療したCrohn病(CD),潰瘍性大腸炎(UC),Behçet病患者(BD)を対象とし,生検および手術標本における病理組織学的所見の結果から,二次性アミロイドーシス(SA)合併の有無を検討した.CDに関してはデータベースを用いて患者数,臨床像,臨床経過および長期予後について解析し,さらにSA合併症例の詳細とSAの合併有無別の比較検討を加えた.IBD患者におけるSA合併率は1.1%(CD : 1.6%,UC : 0.3%,BD : 3.4%)であった.CD症例においては,(1) 診断では十二指腸病変の認識と生検が有用であること,(2) SA合併率は1.6%で,近年やや下降傾向であること,(3) 累積生存率はSA診断後50か月で79.5%,131か月で53.0%と生命予後が不良であること,(4) SA合併例は悪性疾患の既往の頻度が15.4%で非合併例より有意に高かったことが明らかとなった.