著者
小原 勝敏 春間 賢 入澤 篤志 貝瀬 満 後藤田 卓志 杉山 政則 田辺 聡 堀内 朗 藤田 直孝 尾崎 眞 吉田 雅博 松井 敏幸 一瀬 雅夫 上西 紀夫
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.55, no.12, pp.3822-3847, 2013 (Released:2013-12-27)
参考文献数
83
被引用文献数
4

近年,内視鏡診療における鎮静の需要が増加傾向にあるが,内視鏡時の鎮静に対する保険適用の承認を取得している薬剤はなく,主にベンゾジアゼピン系の薬剤が適応外で使用されている現状であり,安全な鎮静を支援する体制作りが求められているところである.この度,日本消化器内視鏡学会は日本麻酔科学会の協力の下“内視鏡診療における鎮静に関するガイドライン”を作成した.本ガイドラインは鎮静が必要な状況下で適切な使用法を推奨したものであり,クリニカルクエスチョン11項目に対してステートメントは14項目あり,そのうちエビデンスレベルIが5項目で,エビデンスレベルIIが3項目あったが,ほとんどが国外のデータに準拠したものであり,推奨度は定まっていない.また,本ガイドラインは,内視鏡診療時の鎮静を強く勧めるものではなく,消化器内視鏡診療上,鎮静が必要と考えられる局面においてはどのような鎮静の方法が良いかの指針を示したものである.実際の診療において鎮静を実施するかの最終決定は,必要性に関する十分なインフォームド・コンセントの下,患者の意思を尊重して行うことが前提であり,医師側の誘導に基づくものであってはならない.
著者
藤本 一眞 藤城 光弘 加藤 元嗣 樋口 和秀 岩切 龍一 坂本 長逸 内山 真一郎 柏木 厚典 小川 久雄 村上 和成 峯 徹哉 芳野 純治 木下 芳一 一瀬 雅夫 松井 敏幸
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.54, no.7, pp.2075-2102, 2012 (Released:2012-07-26)
参考文献数
66
被引用文献数
7

日本消化器内視鏡学会は,日本循環器学会,日本神経学会,日本脳卒中学会,日本血栓止血学会,日本糖尿病学会と合同で“抗血栓薬服用者に対する消化器内視鏡診療ガイドライン”を作成した.従来の日本消化器内視鏡学会のガイドラインは,血栓症発症リスクを考慮せずに,抗血栓薬の休薬による消化器内視鏡後の出血予防を重視したものであった.今回は抗血栓薬を持続することによる消化管出血だけでなく,抗血栓薬の休薬による血栓塞栓症の誘発にも配慮してガイドラインを作成した.各ステートメントに関してはエビデンスレベルが低く推奨度が低いもの,エビデンスレベルと推奨度が食い違うものがあるのが現状である.
著者
武田 輝之 平井 郁仁 矢野 豊 高田 康道 岸 昌廣 寺澤 正明 別府 剛志 小野 陽一郎 久部 高司 長浜 孝 八尾 建史 松井 敏幸 植木 敏晴
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.163-168, 2018-02-25

要旨●現在,潰瘍性大腸炎を評価するための内視鏡スコアは多数存在するが,スコアの統一化についての一定のコンセンサスはない.これまでのスコアは検者内・検者間一致率などの信頼性評価が十分ではなかったことがその要因の一つである.2012年に提唱されたUCEISはその問題を指摘し検討した上で作成された内視鏡スコアである.今回,筆者らは現在汎用されているMESとUCEISの両者に関して検者間一致率を検討した.その結果,UCEISはMESと比較し,検者間一致率が高い傾向にあった.今後の課題として,UCEISによる粘膜治癒の定義や長期予後との検討などが挙げられるが,妥当性の検証結果からは今後の臨床研究などで使用するスコアとしてより適したものであると考えられた.
著者
大津 健聖 松井 敏幸 西村 拓 平井 郁仁 池田 圭祐 岩下 明徳 頼岡 誠 畠山 定宗 帆足 俊男 古賀 有希 櫻井 俊弘 宮岡 正喜
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.111, no.1, pp.61-68, 2014 (Released:2014-01-05)
参考文献数
26

(背景)腸間膜静脈硬化症(以下MP)は比較的まれな大腸疾患である.その原因として,近年漢方薬との関連が注目されている.(対象と方法)本検討では,自験例と報告例を合わせた42例を対象に,MPと漢方薬の関連を検討した.(結果)自験例の約9割の症例に漢方薬内服歴を認めた.特に,加味逍遥散と黄連解毒湯が多数例で内服されていた.生薬成分では,大部分の症例が山梔子を含む漢方薬を内服していた.(考察)MP症例の多くは漢方薬の内服歴があり,MP発症後も漢方薬の継続内服により症状増悪をきたした症例が存在し,同じ漢方薬の長期内服を行った夫婦にMPを発症したことから,漢方薬成分山梔子がMP発症に強く関与すると推測した.
著者
松井 敏幸 飯田 三雄 末兼 浩史 富永 雅也 八尾 恒良 櫻井 俊弘 瀬尾 充 岡田 光男 野見山 祐次 渕上 忠彦 中野 元 吉永 一彦
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.90, no.2, pp.134-143, 1993 (Released:2007-12-26)
参考文献数
25
被引用文献数
6

潰瘍性大腸炎症例のうち10年以上経過例124例の長期予後を分析した. 最近数年間の臨床経過より長期予後を良好, 中等, 不良の3段階に分けると, その比率は約2:1:1であった. 初発時より経年的に活動年を有する頻度をみると, 次第に減少する傾向が観察され, 長期予後3群別にみると, 3群間に有意差がみられた. また初回治療前未治療期間の長いこと, 初発時重症度が重いこと, および高齢発症は予後不良の因子であった. 手術例は26例 (21.0%) あり, 発症10年後の累積手術率は16.5%で, 10年以後も手術率は上昇した. 悪性腫瘍併発例は3例, 異型上皮巣併発例は1例にみられた. 死亡例は6例であった. 累積生存率は期待生存率と有意差がなかった.
著者
梅野 淳嗣 江﨑 幹宏 平野 敦士 冬野 雄太 小林 広幸 河内 修司 蔵原 晃一 渡邉 隆 青柳 邦彦 安川 重義 平井 郁仁 松井 敏幸 八尾 恒良 北園 孝成 松本 主之
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.1411-1422, 2017-10-25

要旨●遺伝学的に確定診断された非特異性多発性小腸潰瘍症45例の臨床像を検討した.本症は女性に多いこと,貧血は必発するが肉眼的血便はほぼみられないこと,炎症所見は比較的低値にとどまること,約30%に血族結婚を認めることが確認された.また,終末回腸を除く回腸を中心に,輪走ないし斜走する比較的浅い開放性潰瘍が腸間膜付着側と無関係に多発することが小腸病変の形態学的特徴と考えられた.性別による比較では,胃病変は女性に有意に多く,ばち指,骨膜症や皮膚肥厚といった肥厚性皮膚骨膜症の所見は男性に有意に多かった.本症の診断に際しては,小腸病変の評価に加えて,上部消化管病変や消化管外徴候の評価,SLCO2A1遺伝子変異の検索も必須と考えられた.
著者
松井 敏幸
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.104, no.8, pp.1172-1182, 2007 (Released:2007-08-06)
参考文献数
66
被引用文献数
3

炎症性腸疾患(IBD)の自然史あるいは長期経過をreviewし,その時代的な改善の有無をみた.その理由は,IBDに対する治療が進み,その自然史が改善されたと推定されるからである.しかし,実際の欧米からの報告をみると手術率や死亡率などの指標の改善は確実でない.その理由として,強力な治療法のうち,緩解維持に使われる薬物や経腸栄養療法がまだ徹底していないことが挙げられる.緩解維持の目標にも,粘膜治癒をもたらすまで強力に推し進めることが重要とされつつある.その際には粘膜病変治癒を評価するための画像診断を活用することが求められよう.さらに,緩解導入剤を適切に選択し,開始する時期の決定,緩解維持療薬の投与量の調節など改善の余地は大きいと考えられた.
著者
山本 博徳 緒方 晴彦 松本 主之 大宮 直木 大塚 和朗 渡辺 憲治 矢野 智則 松井 敏幸 樋口 和秀 中村 哲也 藤本 一眞
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.57, no.12, pp.2685-2720, 2015 (Released:2015-12-25)
参考文献数
282
被引用文献数
13

カプセル内視鏡・バルーン内視鏡の開発・普及により,小腸領域においても内視鏡が疾患の診断・治療に重要な役割を果たすようになった.小腸内視鏡の適応として最も頻度が高いのは,いわゆる原因不明の消化管出血(obscure gastrointestinal bleeding:OGIB)である.その他には小腸狭窄,腫瘍,炎症性腸疾患などにおいて小腸内視鏡の有用性が確認されている.小腸内視鏡の有用性が認識された今,臨床現場で安全かつ効率的に使用し,最大限の効果を得るためには一定の指針が必要となる.そこで,日本消化器内視鏡学会では,日本消化器病学会,日本消化管学会,日本カプセル内視鏡学会の協力を得て,現時点で得られるだけのエビデンスに基づく「小腸内視鏡診療ガイドライン」を作成した.しかし,まだ比較的新しい内視鏡手技であり,エビデンスが不十分な部分に関しては専門家のコンセンサスに基づき推奨度を決定した.本ガイドラインは小腸疾患診療のガイドラインとしての疾患中心のまとめではなく,小腸内視鏡というモダリティを中心としたガイドラインとして作成し,小腸内視鏡としては臨床現場の実情に即して小腸カプセル内視鏡とバルーン内視鏡に絞り,指針を作成した.
著者
久部 高司 松井 敏幸 宮岡 正喜 二宮 風夫 石原 裕士 長浜 孝 高木 靖寛 平井 郁仁 池田 圭祐 岩下 明徳 東 大二郎 二見 喜太郎
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.54, no.8, pp.2269-2277, 2012 (Released:2012-10-22)
参考文献数
29
被引用文献数
1

【背景】潰瘍性大腸炎(UC)は,大腸病変のみならず回腸嚢炎など他臓器に様々な合併症を引き起こすことがある.その中で大腸病変に類似したびまん性の胃十二指腸炎がまれながら報告されている.【目的】UCに関連した上部消化管病変の定義を試み,その頻度と臨床経過を検討する.【方法】上部消化管内視鏡検査が施行されたUC 322例を対象とした.大腸病変に類似したびまん性胃十二指腸炎のうち,他疾患が否定され以下の定義に合致するものをUCに関連したulcerative gastroduodenal lesion(UGDL)と定義した.1)UCの治療により胃十二指腸病変が改善する.and/or 2)病理組織学的所見がUCに類似する.【結果】この定義に合致したUGDLは322例中15例(4.7%)で,15例の大腸病変の病型は全大腸炎型または大腸全摘出術後だった.病型別では全大腸炎型146例中9例(6.2%),大腸全摘術後81例中6例(7.4%)に認められ,大腸全摘出術後のうち4例は回腸嚢炎を合併していた.【結論】今後UCの診断治療に際してはUGDLの存在も考慮しなければならない.またUGDLは回腸嚢炎との関連も示唆された.
著者
植木 敏晴 松村 圭一郎 丸尾 達 畑山 勝子 土居 雅宗 永山 林太郎 伊原 諒 野間 栄次郎 光安 智子 松井 敏幸
出版者
日本膵臓学会
雑誌
膵臓 (ISSN:09130071)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.116-122, 2015-02-25 (Released:2015-03-24)
参考文献数
18
被引用文献数
2

自己免疫性膵炎(autoimmune pancreatitis:AIP)の国際分類における2型(type 2)の頻度は,北アメリカ(14%)やヨーロッパ(13%)に比し,アジア(4%)では低値である.本邦における炎症性腸疾患に合併するtype 2 AIPは,国際調査によるtype 2 AIPと異なり,黄疸がなく,腹痛の頻度が高かった.膵頭部腫大例は約半数で,下部胆管狭窄例は10%程度であった.膵管狭細化は多くが全膵管の2/3以上の長さで,膵石の合併はなかった.炎症性腸疾患以外の膵外病変の頻度は低かった.ステロイド投与例は約半数で,約1/3が保存的に経過観察されていた.切除例は少なかった.本邦のtype 2 AIPは,膵のコア生検による十分な膵組織と,臨床医と病理医との緊密な連携によりさらに解明されるであろう.
著者
久部 高司 松井 敏幸 二宮 風夫 佐藤 祐邦 大門 裕貴 武田 輝之 長浜 孝 高木 靖寛 平井 郁仁 八尾 建史 東 大二郎 二見 喜太郎 岩下 明德
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.471-478, 2013-04-25

要旨 潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis ; UC)にも小腸病変が存在することが明らかとなってきたが,その病態については不明である.今回,小腸用カプセル内視鏡を施行した活動期UC 30例,大腸全摘出後11例の内視鏡所見および臨床所見について検討した.小腸病変(浮腫,潰瘍)は41例中15例(36.6%)に認められ,このうち小腸の広範囲に多数存在する潰瘍は6例だった.小腸の広範囲に多数存在する潰瘍6例と,それ以外の35例の臨床背景の比較検討では,潰瘍を有する群では検査時平均年齢24.8±10.8歳,発症時平均年齢20.8±8.7歳と有意に若く(p<0.05),病型は6例とも全大腸炎型または回腸囊炎であり,有意に高い頻度だった(p<0.05).経過観察できた3例は全例小腸病変が消失し,うち2例はプレドニゾロンによる治療で比較的速やかに病変が消失した.さらに,6例のうち4例に上部消化管病変を伴っていたことはUCとの関連を示唆する所見と考えられた.今後,さらにUCにおける小腸病変の臨床的意義について詳細に検討する必要がある.
著者
松井 敏幸 久部 高司 矢野 豊 平井 郁仁
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.237-249, 2014 (Released:2014-02-26)
参考文献数
66

炎症性腸疾患(IBD)である潰瘍性大腸炎(UC)とクローン病(CD)はそれぞれ長期罹患者が増加し,種々の合併症が発症する.その中でも大腸癌(CRC)は最も重大な合併症であり,生命予後にも強く関与するため,その軽減に努力が重ねられてきた.本稿では,IBDにともなうCRCの近年の疫学的特徴について述べ,特に欧米とは異なったわが国独自の特徴にも触れた.CRC早期発見にはサーベイランス内視鏡(SC)の意義は高い.その適応などについて概要を解説する.
著者
平井 郁仁 高田 康道 佐藤 祐邦 高橋 晴彦 矢野 豊 高津 典孝 松井 敏幸 今村 健太郎 池田 圭祐 岩下 明德 宮岡 正喜
出版者
医学書院
雑誌
胃と腸 (ISSN:05362180)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.345-357, 2014-03-25

要旨 当科において診療したCrohn病(CD),潰瘍性大腸炎(UC),Behçet病患者(BD)を対象とし,生検および手術標本における病理組織学的所見の結果から,二次性アミロイドーシス(SA)合併の有無を検討した.CDに関してはデータベースを用いて患者数,臨床像,臨床経過および長期予後について解析し,さらにSA合併症例の詳細とSAの合併有無別の比較検討を加えた.IBD患者におけるSA合併率は1.1%(CD : 1.6%,UC : 0.3%,BD : 3.4%)であった.CD症例においては,(1) 診断では十二指腸病変の認識と生検が有用であること,(2) SA合併率は1.6%で,近年やや下降傾向であること,(3) 累積生存率はSA診断後50か月で79.5%,131か月で53.0%と生命予後が不良であること,(4) SA合併例は悪性疾患の既往の頻度が15.4%で非合併例より有意に高かったことが明らかとなった.
著者
真武 弘明 内藤 説也 小河原 悟 飯田 三雄 松井 敏幸 岡部 信郎 山本 勉 藤田 晃一 岡田 光男 八尾 恒良
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.86, no.7, pp.1448-1454, 1989 (Released:2007-12-26)
参考文献数
42

日本人 Crohn 病患者108例のHLA-A, -B, -C, -DRおよびDQの検索を行ない, 日本人 Crohn 病とHLAとの関連性について検討した. 日本人 Crohn 病患者ではDR4が有意に高率であり, そのsubtype であるDR4.1の出現頻度が有意に高率であつた. B51, Bw54, DRw12, DRw13, DRw52は対照群に比べ出現頻度が高い傾向を示したが, 有意差は認めなかつた. DR2, DQw1, DQw3は有意に低率であり, B7は低い傾向を示した. 日本人 Crohn 病患者においては, DR4特にDR4.1, またはそれに連鎖している部位に疾患感受性遺伝子があることを推測した.
著者
長浜 孝 櫻井 俊弘 古賀 有希 蒲池 紫乃 平井 郁夫 佐藤 茂 真武 弘明 松井 敏幸 八尾 恒良
出版者
The Japan Society of Coloproctology
雑誌
日本大腸肛門病学会雑誌 (ISSN:00471801)
巻号頁・発行日
vol.56, no.6, pp.273-278, 2003-06-01
参考文献数
17

Crohn病 (CD) に対するprednisolone (Predonine<SUP>®</SUP>; PSL) の適切な初回投与量を検討した.<BR>対象 : 外来通院中にPSLが投与されたCD患者45例, 84回のPSL治療.<BR>方法 : 症状別に初回1日投与量と経時的累積症状消失率を算出した.<BR>成績 : 下痢ではPSL初回投与量0.5mg/kg以上 (初回投与量 : 28.3±6.0mg/日) の群が有意に高率, 早期に症状が消失したが (p<0.006), 0.75mg/kg以上投与しても有意差はなかった (p=0.140). 腹痛では0.75mg/kgから1.03mg/kg(30.0±5.8mg/日)の群が有意に高率, 早期に症状が消失していた. 食欲不振・全身倦怠感, 発熱, 関節痛・結節性紅斑は0.24mg/kgから0.49mg/kg未満(30.0±5.8mg/日)の群とそれ以上の量の群とで累積症状消失率に差はなかった (p=0.818).<BR>上記成績に考察を加え, PSLの初回1日投与量は, 下痢に対しては30mg, 腹痛には35mg, 食欲不振・全身倦怠感, 発熱, 関節痛・結節性紅斑には15~20mgを目安とし, 体重, 活動指数によって増減するのが適切と考えた.
著者
八尾 建史 長浜 孝 松井 敏幸 岩下 明徳
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.1063-1075, 2011 (Released:2011-06-14)
参考文献数
25

光学的拡大機能を有する上部消化管電子内視鏡が早期胃癌診断に応用できるようになった.さらに狭帯域光観察narrow-band imaging(NBI)を胃拡大内視鏡観察に併用すると,さまざまな解剖学的構造が視覚化される.これらの新しい方法について内視鏡医が知っておく必要がある基本的な原理は,拡大倍率と分解能の違い,NBIの原理,胃における観察法・観察条件である.また,NBI併用拡大内視鏡を胃粘膜に応用した場合,何がどのように視覚化されるかを正確に理解しておく必要がある.具体的に視覚化される解剖学的構造は,微小血管構築像(V)については,上皮下の毛細血管・集合細静脈・病的な微小血管であり,表面微細構造(S)については,腺窩辺縁上皮・粘膜白色不透明物質である.筆者らは,NBI併用拡大内視鏡による早期胃癌の診断体系として,VとSの解剖学的構造を指標に用い,それぞれをregular/irregular/absentと分類し,一定の診断規準に当てはめて診断するVS classification systemを開発した.現在,さまざまな臨床応用が報告されているが,白色光拡大に加えNBI併用拡大内視鏡の有用性は充分に検討されているとは言い難く,現在進行中の研究結果を待ち再度評価する必要がある.