著者
中田 博 大澤 智徳 横山 勝 石田 秀行
出版者
Japanese College of Surgeons
雑誌
日本外科系連合学会誌 (ISSN:03857883)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.198-203, 2006-04-30
参考文献数
16
被引用文献数
3

クローン病に肝膿瘍・下大静脈血栓を合併した稀な1例を経験したので報告する。症例は20歳, 男性。5年前より小腸大腸型クローン病と診断されていた。今回, 小腸-小腸間の瘻孔に対する手術目的で入院した。術前CTで右下腹部に腹腔内膿瘍と, 肝S6-7に大きさ5.3cm×6.0cmの肝膿瘍が疑われた。また, 腎下極の下大静脈に造影されない部位を認めた。クローン病に伴う肝膿瘍・下大静脈血栓と診断した。手術を延期し, 抗菌薬投与とヘパリンによる抗凝固療法を行ったところ, 4週間後のCTで肝膿瘍・腹腔内膿瘍は著明に縮小し, 下大静脈血栓も消失した。開腹所見では, 回腸末端と口側回腸との間に瘻孔形成を認めるのみで, 肝膿瘍や腹腔内膿瘍は確認できなかった。回盲部切除を施行した。術後6カ月経過した現在, 腹痛・発熱の症状を認めていない。