著者
小野澤 寿志 持木 彫人 福地 稔 熊谷 洋一 石橋 敬一郎 石田 秀行
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.76, no.10, pp.2433-2437, 2015 (Released:2016-04-29)
参考文献数
14

症例は66歳,男性.胃癌U,Post,cType2,cT2,N0,H0,P0,M0,cStage IBの診断にて,腹腔鏡下胃全摘術,D2(-10)郭清術,Roux-en-Y再建術を施行.術後,第3病日より39度台の発熱を認め,第7病日に施行した上部消化管造影検査で,吻合部から腹腔内への造影剤流出を認め,縫合不全の診断となった.第8病日,透視下内視鏡下に経鼻胃管による経鼻経食道的腹腔ドレナージを開始.第22病日(ドレナージ開始後12日目)に膿瘍腔の消失を認めたため,胃管抜去しドレナージ終了した.その後は症状再燃なく,第38病日に退院した.胃癌術後の縫合不全により生じる腹腔内膿瘍に対し,経腹的アプローチが困難な症例でも,本治療法は低侵襲的に治癒可能であり,有用と考えられる.
著者
中田 博 大澤 智徳 横山 勝 石田 秀行
出版者
Japanese College of Surgeons
雑誌
日本外科系連合学会誌 (ISSN:03857883)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.198-203, 2006-04-30
参考文献数
16
被引用文献数
3

クローン病に肝膿瘍・下大静脈血栓を合併した稀な1例を経験したので報告する。症例は20歳, 男性。5年前より小腸大腸型クローン病と診断されていた。今回, 小腸-小腸間の瘻孔に対する手術目的で入院した。術前CTで右下腹部に腹腔内膿瘍と, 肝S6-7に大きさ5.3cm×6.0cmの肝膿瘍が疑われた。また, 腎下極の下大静脈に造影されない部位を認めた。クローン病に伴う肝膿瘍・下大静脈血栓と診断した。手術を延期し, 抗菌薬投与とヘパリンによる抗凝固療法を行ったところ, 4週間後のCTで肝膿瘍・腹腔内膿瘍は著明に縮小し, 下大静脈血栓も消失した。開腹所見では, 回腸末端と口側回腸との間に瘻孔形成を認めるのみで, 肝膿瘍や腹腔内膿瘍は確認できなかった。回盲部切除を施行した。術後6カ月経過した現在, 腹痛・発熱の症状を認めていない。
著者
高山 哲治 五十嵐 正広 大住 省三 岡 志郎 角田 文彦 久保 宜明 熊谷 秀規 佐々木 美香 菅井 有 菅野 康吉 武田 祐子 土山 寿志 阪埜 浩司 深堀 優 古川 洋一 堀松 高博 六車 直樹 石川 秀樹 岩間 毅夫 岡﨑 康司 斎藤 豊 松浦 成昭 武藤 倫弘 冨田 尚裕 秋山 卓士 山本 敏樹 石田 秀行 中山 佳子
出版者
一般社団法人 日本遺伝性腫瘍学会
雑誌
遺伝性腫瘍 (ISSN:24356808)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.93-114, 2020 (Released:2020-09-25)
参考文献数
62

Cowden症候群/PTEN過誤腫症候群は,PTEN遺伝子の生殖細胞系列の病的バリアントを原因とする常染色体優性遺伝性の希少疾患である.消化管,皮膚,粘膜,乳房,甲状腺,子宮内膜,脳などに過誤腫性病変の多発を特徴とする.巨頭症および20歳代後半までに多発性皮膚粘膜病変を発症することが多い.ときに小児期に多発する消化管病変,自閉スペクトラム症,知的障害が診断の契機となる.また,がん遺伝子パネル検査によって診断される可能性がある.乳癌,甲状腺癌,子宮内膜癌,大腸癌,腎細胞癌などの悪性腫瘍を合併するリスクが高く,適切なサーベイランスが必要である. 本診療ガイドラインでは,小児から成人にかけてシームレスに,正確な診断と適切な治療・サーベイランスが行われるよう,基本的事項を解説し,4個のクリニカルクエスチョンと推奨を作成した.
著者
松本 主之 新井 正美 岩間 達 樫田 博史 工藤 孝広 小泉 浩一 佐藤 康史 関根 茂樹 田中 信治 田中屋 宏爾 田村 和朗 平田 敬治 深堀 優 江﨑 幹宏 石川 秀樹 岩間 毅夫 岡﨑 康司 斎藤 豊 松浦 成昭 武藤 倫弘 冨田 尚裕 秋山 卓士 山本 敏樹 石田 秀行 中山 佳子
出版者
一般社団法人 日本遺伝性腫瘍学会
雑誌
遺伝性腫瘍 (ISSN:24356808)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.79-92, 2020 (Released:2020-09-25)
参考文献数
52

若年性ポリポーシス症候群は全消化管に過誤腫性ポリープである若年性ポリープが多発する,希少疾患である.SMAD4あるいはBMPR1A遺伝子の生殖細胞系列バリアントが原因として報告されている.約75%は常染色体優性遺伝形式を示すが,約25%は家族歴のない孤発例である.また,がん遺伝子パネル検査によって診断される可能性がある. ポリープの発生部位により全消化管型,大腸限局型,胃限局型に分けられ,胃限局型ではSMAD4の病的バリアントを原因とすることが多く,胃癌のリスクが高い.また,SMAD4の病的バリアントを有する症例では,遺伝性出血性毛細血管拡張症を高率に合併し,心大血管病変の定期検査も考慮する. 本診療ガイドラインでは,小児から成人にかけてシームレスに,正確な診断と適切な治療・サーベイランスが行われるよう, 基本的事項を解説し,3個のクリニカルクエスチョンと推奨を作成した.
著者
山本 博徳 阿部 孝 石黒 信吾 内田 恵一 川崎 優子 熊谷 秀規 斉田 芳久 佐野 寧 竹内 洋司 田近 正洋 中島 健 阪埜 浩司 船坂 陽子 堀 伸一郎 山口 達郎 吉田 輝彦 坂本 博次 石川 秀樹 岩間 毅夫 岡﨑 康司 斎藤 豊 松浦 成昭 武藤 倫弘 冨田 尚裕 秋山 卓士 山本 敏樹 石田 秀行 中山 佳子
出版者
一般社団法人 日本遺伝性腫瘍学会
雑誌
遺伝性腫瘍 (ISSN:24356808)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.59-78, 2020 (Released:2020-09-25)
参考文献数
88

Peutz-Jeghers症候群は,食道を除く全消化管の過誤腫性ポリポーシスと皮膚・粘膜の色素斑を特徴とする希少疾患である.STK11遺伝子の生殖細胞系列の病的バリアントを原因とし,常染色体優性遺伝形式をとる.また,がん遺伝子パネル検査によって診断される可能性がある. 本症候群でみられる過誤腫性ポリープは小腸に好発し,ポリープが大きくなると出血,腸閉塞,腸重積の原因となる.初回の消化管サーベイランスは症状がなくても8歳頃を目安に行い,10〜15mm以上の小腸ポリープは内視鏡的ポリープ切除術を行う.消化管,乳房,膵,子宮,卵巣,肺,精巣などに悪性腫瘍の発生が認められ,適切なサーベイランスが必要である. 本診療ガイドラインでは,小児から成人にかけてシームレスに,正確な診断と適切な治療・サーベイランスが行われるよう, 基本的事項を解説し,4個のクリニカルクエスチョンと推奨を作成した.
著者
近谷 賢一 石橋 敬一郎 近 範泰 幡野 哲 天野 邦彦 石畝 亨 福地 稔 熊谷 洋一 持木 彫人 石田 秀行
出版者
日本外科系連合学会
雑誌
日本外科系連合学会誌 (ISSN:03857883)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.167-175, 2019 (Released:2020-04-30)
参考文献数
11

【目的】実地医療における切除不能進行再発大腸癌に対するlate lineの治療成績を明らかにする.【対象・方法】2013年7月~2016年12月の間にlate lineとしてregorafenib,trifluridine / tipiracil(TFTD)の少なくとも1剤を使用した切除不能進行再発大腸癌41例を対象に,診療録からデータを抽出し,後方視的に解析した.【結果】Regorafenib先行群25例,TFTD先行群16例の間で無増悪生存期間,全生存期間ともに有意差を認めなかった.RegorafenibまたはTFTDのみが使用された22例より,2剤が使用された19例の方が全生存期間が延長していた(中央値20.8カ月vs.6.4カ月,p=0.02).【結語】大腸癌化学療法のlate lineにおいて,regorafenibとTFTDを使い切ることが,生存期間の延長に繋がる可能性が示唆された.
著者
山口 達郎 上野 秀樹 小泉 浩一 石田 秀行 岩間 毅夫
出版者
日本大腸肛門病学会
雑誌
日本大腸肛門病学会雑誌 (ISSN:00471801)
巻号頁・発行日
vol.68, no.10, pp.878-882, 2015

まれな疾患である家族性大腸腺腫症(FAP)の特徴を明らかにするためには,全国登録や多施設共同研究が必要である.本邦におけるFAPの最初の全国調査は1961年に開始され,1972年の第2回調査へと続いた.1976年からはFAPの登録事業が始まり,FAPに関する重要な疫学的・腫瘍学的知見が数多く得られた.それらは2012年に刊行された『遺伝性大腸癌診療ガイドライン』の基礎資料となっているが,海外からの引用文献が多く,本邦からの文献も2000年以前に集積された解析報告が多く,現状に即していない可能性がある.現在,大腸癌研究会の家族性大腸癌委員会内に組織されたFAPワーキンググループによる『FAPの多施設後方視的コホート研究』は,FAPの基礎データの集積と,我が国の診療実態の把握を行っている.また,次世代シークエンサーを用いた家族性腫瘍の遺伝子診断技術の確立と,新規原因遺伝子の探索が行われている.