著者
中野 峰生 五十嵐 敦 李 俊〓 大橋 一之 門脇 淳
出版者
Japanese College of Surgeons
雑誌
日本外科系連合学会誌 (ISSN:03857883)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.82-86, 2003-02-28 (Released:2009-08-13)
参考文献数
10

当院に受診した騎手候補生の馬による外傷を集計し, 受傷機転・部位・原因などとその事故防止対策について検討した。当院を受診した騎手候補生は43名で, 提示した2症例以外は外来治療が可能な軽症例だった。受傷原因は落馬 (55%) が最も多かったが, 次いで乗馬中以外での馬の取り扱い時の事故 (31%) であった。受傷部位は下肢 (41%) および頭部・顔面 (20%) が多く, 乗馬外傷を繰り返して起こす者 (21%) も比較的多かった。また, 騎手候補生は入校後6カ月以内に受傷していることが圧倒的に多かったことから, 馬に関する安全教育を入校直後から指導徹底し, 防護用の服や靴を使用すべきであると考えられた。
著者
伊藤 元博 熊澤 伊和生 西尾 公利 森川 あけみ
出版者
Japanese College of Surgeons
雑誌
日本外科系連合学会誌 (ISSN:03857883)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.132-135, 2011
被引用文献数
2 1

患者は40歳,男性.2日前より発熱,食欲低下,頸部腫脹にて他院通院中であった.意識レベル低下が出現し,救急車にて来院.救急外来で突然呼吸停止し,経鼻挿管を施行した.両頸部に発赤,腫脹を認め,入院時CTにて全頸部にガス像を認めた.ガス産生を伴う深頸部膿瘍による敗血症性ショックと診断しノルエピネフリンを0.3~0.9γ投与して全身管理し,全身状態が安定した入院後3日目の造影CTにて椎前間隙に膿瘍を認めたため,入院後3,5日目に切開排膿術を施行した.起炎菌は緑膿菌,嫌気性グラム陰性球菌の混合感染で,DRPM,CLDMを使用し,32日目まで洗浄処置を要した.64日目に右下顎智歯抜歯術を施行した.自験例は右下顎智歯の歯性感染症が原因で生じたガス産生を伴う深頸部膿瘍で,造影CT検査にて膿瘍形成を早期に発見し,至適な切開,抗菌薬の使用にて救命することができた.
著者
鵜瀞 条 関 英一郎 権田 厚文
出版者
Japanese College of Surgeons
雑誌
日本外科系連合学会誌 (ISSN:03857883)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.712-716, 2006-08-01 (Released:2010-02-09)
参考文献数
6

症例は57歳, 男性。食欲低下と立ちくらみを主訴に当院を受診した。来院時はHb値4.6g/dlであり, 上部消化管内視鏡にて胃切除後吻合部潰瘍が大腸に穿通し瘻孔形成している所見を認めた。待期的に手術を行い, 胃切除Roux-en-Y再建後吻合部潰瘍の横行結腸穿通による瘻孔形成の所見であった。吻合部切除および横行結腸部分切除を行い, 再びRoux-en-Y法にて再建した。胃切除後吻合部潰瘍の横行結腸穿通による瘻孔形成は比較的稀ではあるが外科的な根治術を要することが多く, また吻合部潰瘍を繰り返すことも多い。自験例においても術後に吻合部潰瘍の再発をみたがproton pump inhibitor (PPI) 投与にて治癒しえた。胃切除後吻合部潰瘍の外科的治療においては慎重な術式の選択と術後PPIの投与を組み合わせることが重要と思われた。
著者
Yutaka KOJIMA Toshiki KAMANO Kazuhiro SAKAMOTO Yuichi TOMIKI Masahiko SUGANO Tomoo WATANABE Atsushi OKUZAWA Shinji KASAMAKI Naohito TAKITA
出版者
Japanese College of Surgeons
雑誌
Nihon Gekakei Rengo Gakkaishi (Journal of Japanese College of Surgeons) (ISSN:03857883)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.648-651, 2005-08-30 (Released:2009-08-13)
参考文献数
18
被引用文献数
4 6

症例は75歳, 男性。平成16年10月4日, 自慰行為で肛門にヨーグルトの瓶を挿入したところ, 抜去できなくなり10月6日近医受診。摘出困難で10月7日に当院紹介, 同日入院となった。腹部に圧痛, 腹膜刺激症状は認めず, 直腸指診で異物を触知した。腹部単純X線検査で直腸内に径5.7cm長さ10cm大の異物が認められた。入院後, 経肛門的に用手, また大腸内視鏡を用いて摘出を試みたが摘出できず, 腰椎麻酔下で児頭吸引器を使用し経肛門的に摘出した。術後経過良好で翌日退院となった。経肛門的直腸異物の摘出に, 今回用いた児頭吸引器は, 有用な一方法であると考えられた。
著者
小西 一朗 上田 順彦
出版者
Japanese College of Surgeons
雑誌
日本外科系連合学会誌 (ISSN:03857883)
巻号頁・発行日
vol.23, no.6, pp.1032-1034, 1998-12-25
参考文献数
7
被引用文献数
2

成人では稀な仙骨前部epidermoid cystの1例を経験し報告した。患者は42歳, 男性。主訴はなく, 尿管結石治療中のCT検査にて偶然仙骨前部の腫瘤が発見された。CT像では, 仙骨前面で直腸左後方に約4cmの腫瘤を認め, MRIではT1強調像で低信号, T2強調像でやや高信号の腫瘤像を認めた。直腸指診, 下部消化管検査で異常は認めなかった。経仙骨的に, 尾骨とともに腫瘤摘出術を施行した。内容物は灰白色のカニミソ状のもので, 細菌培養は陰性であった。組織学的に, 内壁は重層扁平上皮で構成され, 処々で異物巨細胞を伴う肉芽反応巣をみるが, 皮膚付属器などは認められず, epidermoid cystと診断された。術後3年を経て再発は認めていない。
著者
中田 博 大澤 智徳 横山 勝 石田 秀行
出版者
Japanese College of Surgeons
雑誌
日本外科系連合学会誌 (ISSN:03857883)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.198-203, 2006-04-30
参考文献数
16
被引用文献数
3

クローン病に肝膿瘍・下大静脈血栓を合併した稀な1例を経験したので報告する。症例は20歳, 男性。5年前より小腸大腸型クローン病と診断されていた。今回, 小腸-小腸間の瘻孔に対する手術目的で入院した。術前CTで右下腹部に腹腔内膿瘍と, 肝S6-7に大きさ5.3cm×6.0cmの肝膿瘍が疑われた。また, 腎下極の下大静脈に造影されない部位を認めた。クローン病に伴う肝膿瘍・下大静脈血栓と診断した。手術を延期し, 抗菌薬投与とヘパリンによる抗凝固療法を行ったところ, 4週間後のCTで肝膿瘍・腹腔内膿瘍は著明に縮小し, 下大静脈血栓も消失した。開腹所見では, 回腸末端と口側回腸との間に瘻孔形成を認めるのみで, 肝膿瘍や腹腔内膿瘍は確認できなかった。回盲部切除を施行した。術後6カ月経過した現在, 腹痛・発熱の症状を認めていない。
著者
Koji MATSUMOTO Minoru FUJISAWA Hiroyuki SUGO Kunimi SUZUKI Kuniaki KOJIMA Masaki FUKASAWA Tomoe BEPPU
出版者
Japanese College of Surgeons
雑誌
日本外科系連合学会誌 (ISSN:03857883)
巻号頁・発行日
vol.27, no.6, pp.874-879, 2002-12-30 (Released:2009-08-13)
参考文献数
14

The surgical technique for idiopathic thrombocytopenic purpura (ITP) and hereditary spherocytosis (HS) has been changing from conventional open splenectomy (OS) to laparoscopic splenectomy (LS).In this study, we evaluated the usefulness of LS in comparison with OS. The subjects were 15 patients (14 with ITP and 1 with HS) who underwent surgery at our department. OS was performed in 5 patients (OS group), and LS was performed in 10 patients (LS group), of whom 2 underwent hand-assisted surgery. The perioperative parameters evaluated were : operative time, blood loss during operation, splenic weight, accessory spleens identified during operation, and conversion to open splenectomy.The postoperative parameters evaluated were : frequency of pain medication, duration until oral dietintake (days), interval of drainage (days), postoperative stay (days), residual accessory spleens, and complications. Conversion to open splenectomy was not observed in any patient. Blood loss was similar between the OS and LS groups.The operative time was significantly longer (p<0.05) in the LS group (mean, 232 ± 57 minutes) than in the OS group (mean, 155 ± 55 minutes), and the splenic weight was significantly lower (p<0.05) in the LS group (114 ± 86 g) than in the OS group (221 ± 76g). Accessory spleens were identified during operation in only 1 patient in the OS group. The frequency of pain medication was significantly lower (p<0.05) in the LS group (mean, 2.3 ± 1.3 vials) than in the OS group (7.4 ±1.1 vials), and the postoperative stay was significantly shorter (p<0.05) in the LS group (13.0 ± 5.4 days) than in the OS group (22.0 ± 7.1 days).Evaluation of long-term results 1 year or more after operation showed no change in 3 patients, but no significant differences were observed between LS and OS. LS may be more useful than OS because of better aesthetic results, less invasion, and shorter hospital stay despite some problems such as differences in surgical skills among surgeons and a longer operative time.
著者
今村 幹雄 三上 幸夫 山内 英生
出版者
Japanese College of Surgeons
雑誌
日本外科系連合学会誌 (ISSN:03857883)
巻号頁・発行日
vol.23, no.5, pp.856-860, 1998-10-25
参考文献数
16

当科で扱ったクローン病症例27例中3例 (11%) で高アミラーゼ血症がみられたので, これらの症例につき検討した。症例1は23歳・男性, 小腸大腸型で胃・十二指腸病変も有し, 十二指腸狭窄に対し胃空腸吻合術がなされた。術前, S-Amy 281IU/lと高値を示したが, 上部消化管造影ではバリウムの膵管への逆流は認めなかった。症例2は34歳・女性, 大腸型で, 手術は難治性痔瘻に対しseton法によるドレナージ術を施行した。術後, 外来通院中, 妊娠時にS-Amy 264~273IU/lと高値を呈した。症例3は28歳・女性, 小腸大腸型で, 8年前, 狭窄に対し回腸部分切除と右半結腸切除を受け, 今回, 再燃による吻合部狭窄に対し吻合部切除がなされた。術前, S-Amy 293IU/l, リパーゼ131IU/l, トリプシン2830IU/l, 膵ホスホリパーゼA2 1230ng/dlといずれも高値を呈し, Caは8.1mg/dlと低値を示したが, CTおよびERCPでは異常所見はなかった。全例で腹痛など膵炎の臨床症状はみられなかった。
著者
川崎 篤史 三松 謙司 大井田 尚継 久保井 洋一 加納 久雄 天野 定雄
出版者
Japanese College of Surgeons
雑誌
日本外科系連合学会誌 (ISSN:03857883)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.249-252, 2006-04-30 (Released:2009-08-13)
参考文献数
5
被引用文献数
1

鼠径部に発生したガングリオンの1例を経験したので報告する。症例は16歳の女性。左下腹部から左大腿部前面の痛みを主訴に来院した。触診上, 左鼠径部に圧痛を伴う膨隆を認め, 画像診断で大腿ヘルニアの疑いで緊急手術となった。手術は恥骨筋内に径5cm大の嚢胞性病変を認め切除摘出した。病理組織学的所見は嚢胞壁の線維性肥厚を認め, 内容物は無色透明の粘液様物質でガングリオンの診断であった。経過は良好で再発は認めていない。鼠径部腫瘤の鑑別診断として, 発生頻度は低いものの, ガングリオンも念頭に置き適切な診断・治療をする必要があると考えられた。
著者
本山 覚望 望月 愼介 竹内 聡 赤山 由起 山辺 晋吾 丸尾 猛
出版者
Japanese College of Surgeons
雑誌
日本外科系連合学会誌 (ISSN:03857883)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.61-65, 2000-02-29 (Released:2009-08-13)
参考文献数
20

目的 : 人工造腟術として, 酸化セルロース製の組織代用人工繊維布 (TC7) を新腟腔へ添付し, 腟本来の扁平上皮粘膜の新生誘導を検討した。方法 : 6例の先天性腟欠損症に対し, 腟前庭粘膜の十字切開により解剖学的腟経に沿い子宮下部に達する新腟腔を形成した。切開で生じた4点の腟前庭粘膜縁を新腟腔内壁へ縫合後, TC7で包まれた膣型を新腟腔へ充填し手術を終了した。成績 : 平均手術時間は25.8分, 平均出血量は14.2ml, 入院期間は2日, 合併症発生率は0%であった。全例において, 術後2~5カ月で添付TC7膜下で腟前庭粘膜縁より新生した重層扁平上皮で新腟腔全域は被覆された。また, 新生腟扁平上皮粘膜は正常腟粘膜と同様に卵巣周期に呼応した分泌能と形態の変化を示した。結論 : 本法は現行造腟法と比較して低侵襲性でDay Surgeryも可能であり, また, 本法の腟粘膜は腟本来の自然性を示すため, 患者QOLの向上に役立つものと思われる。
著者
Masakazu AOKI Natsuki TOKURA Tatsuo TERAMOTO Kazuo KOBAYASHI
出版者
Japanese College of Surgeons
雑誌
Nihon Gekakei Rengo Gakkaishi (Journal of Japanese College of Surgeons) (ISSN:03857883)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.113-117, 2004-02-28 (Released:2009-08-13)
参考文献数
17

肝嚢胞に対する手術は従来, 肝部分切除術, 嚢胞前壁切除術, 開窓術などが行われてきたが, 遺残する嚢胞内壁からの滲出液の分泌が術後の難治性腹水や再発の原因となり, しばしば問題となることがある。今回われわれは, 多発性肝腎嚢胞に対して, 従来の方法に加え, 嚢胞液の分泌能廃絶のためアルゴンビームコアギュレーター (argon beam coagulator : 以下ABC) を用いて嚢胞内壁に焼灼凝固を加え良好な結果を得ることができた。症例は44歳, 女性, 右上腹部痛と経口摂取困難を主訴に受診。腹部CT所見では, 肝全体に大小多数の嚢胞を認め, 肝外側区は胃を圧排していた。胃の圧排症状の軽減目的で, 開腹下に肝外側区域切除術, 嚢胞前壁切除術, 開窓術を施行。さらにABCを用いて嚢胞内壁に焼灼凝固を加えた。術後6カ月の腹部CT上も嚢胞液の再貯留や腹水も認めておらず, 術後1年半経過した現在も自覚症状の再発は認めていない。
著者
境 雄大
出版者
Japanese College of Surgeons
雑誌
日本外科系連合学会誌 (ISSN:03857883)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.145-149, 2008

症例は62歳,男性。全身倦怠感と腹痛を主訴に当院を受診し,内視鏡検査で胃体上部から幽門前庭部に不整形の腫瘍があり,生検で低分化腺癌と診断された。腹部CTで胃壁が著明に肥厚し,壁外性伸展を認めた。開腹すると胃体中部から前庭部に巨大な腫瘍があり,横行結腸間膜と膵臓に直接浸潤していた。腹水貯留と大網に結節性病変を認め,術中細胞診で癌性腹膜炎と診断した。胃全摘術を行った。T4,N1,H0,P1,CY1,M0,Stage IV,根治度Cであった。胃体部大彎を中心に18.5cmの壁外性発育を示す腫瘍があり,病理組織学的には裸核状の異型細胞がびまん性,充実性に増生し,ロゼッタ様の構築を認めた。免疫組織染色はシナプトフィジンとNSEが陽性,クロモグラニンが一部陽性で,神経内分泌細胞癌と診断した。術後,遺残腫瘍が急速に増大し,第52病日に死亡した。胃神経内分泌細胞癌は稀であり,他臓器浸潤を伴う壁外性発育の症例について文献的考察を加えて報告する。