著者
大神 裕俊
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.C3P3376, 2009 (Released:2009-04-25)

【はじめに】日々の臨床の中で,舌の動きを促すことにより姿勢やアライメントに変化が出ることを体験している.また治療展開の中で頚部の関節可動域は,舌の動きによってさらに機能的になり安定する印象を受けている.そこで今回,舌の動きを促した前後での頚部の関節可動域を測定してみたところ変化がみられたので報告する.【対象と方法】当院に通院し,本研究の趣旨に理解を得られた患者12名(年齢55.2±14.10歳).方法は棒付きキャンディーを使用し,端座位にて検者が被検者の口腔内でキャンディーを左右5回ずつ回転させ,そのキャンディーの動きを舌体で追わせる事により舌の動きを促した.この工程を左右各2セット行いその前後での頚部の関節可動域(屈曲・伸展・左右側屈・左右回旋)を測定し比較した.介入前後の比較には対応のあるt-検定を用い有意水準は1%とした.また介入後に頚部を動かした感想を聞いた.【結果】介入前と比較して介入後では全ての頚部の関節可動域において平均10度以上の改善傾向が見られた.また全ての頚部の関節可動域で有意差を認めた.測定値以外において介入前と比較し介入後で頚部を楽に動かすことができるという訴えもあった.【考察】今回,舌の動きを促すことで頚部の関節可動域に変化がみられた要因として,舌筋・舌骨上筋・舌骨下筋の作用,舌骨の動きによる影響が考えられる.舌筋は舌自体の運動に作用し,舌骨上筋は下顎骨・舌骨・口腔底・舌に作用し,舌骨下筋は舌骨を下に引いて固定し舌骨上筋による舌の運動を助ける作用を持つ.口の開閉運動に関与する力学成分は,頚椎後方から前方のベクトルと前方から後方のベクトルが舌骨の後方で交差している.この交点は第三頚椎レベルにあたり,顎関節・頚椎の運動を機能的に行うための協調支点となる.舌骨はこの協調支点と同じ高さにあり,付着する筋群や動きから動滑車の機能を持っていると考えられている.舌骨は前・後傾に動くことで舌骨筋群のベクトル方向を変え,上述した協調支点が常に第三頚椎レベルにくるように調節している.第三頚椎は頚椎カーブの頂点にあり,この頂点が偏位すれば頚椎全体に波及していく.今回の研究で行った口腔内でキャンディーを回転させることで舌の運動・口の開閉運動が起こり,上述の作用がある舌筋・舌骨上筋・舌骨下筋により舌骨の位置を正中化し,顎関節・頚椎の運動を機能的に行うための協調支点の調節を円滑にしたため頚部の関節可動域改善に影響がみられたのではないかと考える.【まとめ】舌の動きを促すことが頚部の関節可動域改善になり,治療展開の一つになるのではないかと考える.今後,舌の動きを促すことで影響を与える因子・研究の検討を深めていきたい.
著者
安里 和也 大神 裕俊 比嘉 裕 石井 慎一郎
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2006, pp.A0070-A0070, 2007

【はじめに】 臨床上、腰椎や骨盤の可動性を上げることで、歩行中の「歩きやすさ」や歩幅が増大することが確認される。しかし、腰椎・骨盤の運動前後で変化を明示した研究は見当たらない。そこで今回、実際に腰椎・骨盤運動前後での歩行の変化を調査し、得られた結果と若干の知見を交え報告する。<BR><BR>【対象と方法】 本研究の趣旨を充分に説明し、賛同を得た健常成人男性7名(平均年齢26.0±7.26歳)を対象とし、骨盤運動前後での歩行変化を比較した。骨盤運動とは、足関節・膝関節・股関節がそれぞれ90度になるようにセットした端坐位にて、体幹を伸ばす・丸めると連動して骨盤を前傾・後傾させる運動を選択した。また検者の手の感触にて腰椎前弯の分節的な動きが確認できるまで運動を繰り返した。歩行分析にはVicon-peak社製三次元動作解析装置を使用し、歩行は自然歩行(以下、歩行)とし、骨盤運動前後に4試行ずつ行った。マーカーは胸骨柄・胸骨剣状突起・第一胸椎棘突起・第10胸椎棘突起・両上前腸骨棘・両上後腸骨棘中間点・左股関節・左大腿骨内側上顆・左大腿骨外側上顆・左外果・左踵骨先端・左第五中足骨頭に貼付し、A:胸郭・B:骨盤の空間に対する角度及びC:骨盤に対する大腿骨(以下、股関節)の角度を求めた。データは前述の4試行の歩行の中からFoot flat時のA~Cを抽出、平均を求め、対応のあるT-検定にて比較した。また、各個人のデータ間の比較として対応のないT-検定を用い、比較した。なお、感想として運動前後の歩きやすさも記録した。<BR><BR>【結果】 骨盤運動前後における歩行に、統一した変化はみられなかった。しかし7例中6例が、骨盤・胸郭・股関節それぞれのXYZ成分9成分中のどれか2つ以上の有意差を認めた。また、全例で骨盤運動後は「歩きやすい」との答えが得られた。<BR><BR>【考察】 結果である、骨盤運動後の「歩きやすさ」という点から察するに、今回の対象者は腰椎・骨盤周辺に不合理な動きがあったと予測される。つまり、腰椎椎間関節・仙腸関節の可動域制限を有していて、骨盤運動により若干、腰椎個々、仙腸関節の可動性が見出され、立位身体質量中心点(以下、重心点)が前方へ移動しやすくなったと考えられる。今回は、そのことへの身体対応の多様さの結果と考えられるのではないだろうか。また統一見解が得られなかったことに関しては、個々の対象者の腰椎・骨盤周辺の不合理さが、研究前からの統一を得ていなかったからでないかとも考えている。<BR><BR>【まとめ】 「ヒトの動き」も物体の移動と同様、力学の本質である重心点移動という視点にたち、動作分析を行うことも一方法に成り得るのではないかと考えられた。
著者
大神 裕俊
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.C3P3376, 2009

【はじめに】日々の臨床の中で,舌の動きを促すことにより姿勢やアライメントに変化が出ることを体験している.また治療展開の中で頚部の関節可動域は,舌の動きによってさらに機能的になり安定する印象を受けている.そこで今回,舌の動きを促した前後での頚部の関節可動域を測定してみたところ変化がみられたので報告する.<BR><BR>【対象と方法】当院に通院し,本研究の趣旨に理解を得られた患者12名(年齢55.2±14.10歳).方法は棒付きキャンディーを使用し,端座位にて検者が被検者の口腔内でキャンディーを左右5回ずつ回転させ,そのキャンディーの動きを舌体で追わせる事により舌の動きを促した.この工程を左右各2セット行いその前後での頚部の関節可動域(屈曲・伸展・左右側屈・左右回旋)を測定し比較した.介入前後の比較には対応のあるt-検定を用い有意水準は1%とした.また介入後に頚部を動かした感想を聞いた.<BR><BR>【結果】介入前と比較して介入後では全ての頚部の関節可動域において平均10度以上の改善傾向が見られた.また全ての頚部の関節可動域で有意差を認めた.測定値以外において介入前と比較し介入後で頚部を楽に動かすことができるという訴えもあった.<BR><BR>【考察】今回,舌の動きを促すことで頚部の関節可動域に変化がみられた要因として,舌筋・舌骨上筋・舌骨下筋の作用,舌骨の動きによる影響が考えられる.舌筋は舌自体の運動に作用し,舌骨上筋は下顎骨・舌骨・口腔底・舌に作用し,舌骨下筋は舌骨を下に引いて固定し舌骨上筋による舌の運動を助ける作用を持つ.口の開閉運動に関与する力学成分は,頚椎後方から前方のベクトルと前方から後方のベクトルが舌骨の後方で交差している.この交点は第三頚椎レベルにあたり,顎関節・頚椎の運動を機能的に行うための協調支点となる.舌骨はこの協調支点と同じ高さにあり,付着する筋群や動きから動滑車の機能を持っていると考えられている.舌骨は前・後傾に動くことで舌骨筋群のベクトル方向を変え,上述した協調支点が常に第三頚椎レベルにくるように調節している.第三頚椎は頚椎カーブの頂点にあり,この頂点が偏位すれば頚椎全体に波及していく.今回の研究で行った口腔内でキャンディーを回転させることで舌の運動・口の開閉運動が起こり,上述の作用がある舌筋・舌骨上筋・舌骨下筋により舌骨の位置を正中化し,顎関節・頚椎の運動を機能的に行うための協調支点の調節を円滑にしたため頚部の関節可動域改善に影響がみられたのではないかと考える.<BR><BR>【まとめ】舌の動きを促すことが頚部の関節可動域改善になり,治療展開の一つになるのではないかと考える.今後,舌の動きを促すことで影響を与える因子・研究の検討を深めていきたい.