著者
白井 康大 中村 知史 鈴木 麻美 大坂 友美子 大西 健太郎 栗原 顕 小野 裕一 澤田 三紀 清水 茂雄 大友 建一郎 坂本 保己 磯部 光章 内藤 滋人
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.41, no.SUPPL.3, pp.S3_61-S3_64, 2009 (Released:2015-01-23)
参考文献数
5

症例は32歳, 男性. 感冒様症状後の下腿浮腫を主訴に前医を受診し, 胸部X線上心拡大と肺うっ血を認め心エコーにてEF 18%と著明な低心機能を認めた. 冠動脈に有意狭窄は認めず, 生検の結果心筋炎の診断にてアンジオテンシンII受容体遮断薬 (ARB), β遮断薬, 利尿薬を投与され, 心不全は改善し退院後当院を紹介受診した. 初診時EFは25%, ホルター心電図にて非持続性心室類拍 (NSVT) を認めたが, β遮断薬増量にて1年後の心エコーではEF 71%まで改善を認めた. ホルター心電図にて不整脈は認めず, 加算平均心電図, T波オルタナンス検査はともに正常であった. ARB, β遮断薬のみ継続し外来フォローしていた. 心筋炎発症から2年後, 出張先の米国にて妻と電話中突然倒れ心肺停止となり救急隊の蘇生にても心拍再開せず永眠された. 急性心筋炎に伴う低心機能, 不整脈に関して著明な改善を認めるも, 遠隔期に心臓性と考えられる突然死をきたした1例を経験したので報告する.
著者
大西 健太
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集 2022年度日本地理学会秋季学術大会
巻号頁・発行日
pp.134, 2022 (Released:2022-10-05)

目的:デジタル化が進行しているアニメーション産業において、以前より地理的な近接性の必要性が薄れてきている。しかし、依然として東京一極集中の産業立地に大きな変化は見られない。一方で、地方にスタジオを新たに設けたり、移設したりする事例が増えてきた。以上のような状況下で、アニメーション産業集積はデジタル化によってどのような変化をしているのか。なぜ未だに東京に集積しているのかに着目して研究を進めた。研究方法:聞き取り調査と文献調査を用いて調査を進めた。2021年10月から12月の2か月間で聞き取り調査を行い、並行して統計などを分析した。聞き取り調査先はアニメーターを養成している専門学校6校とアニメーション制作会社1社、法人である。結果:東京においてアニメーション制作会社の数は増加傾向にある。 多くの制作会社がデジタル機器を導入し、工程を効率化しているが、多くの課題が残っており、業界内でのシェア率は大きく高まっていない。また、アニメーション産業では過酷な労働状況が問題となっている。昼夜を問わない作業や低賃金労働などが代表的であり、若いアニメーターがすぐに辞めてしまったり、別産業への人材の流出が起きたりしている。これらは、集積による利益が、副次的に不利益を生み出したと本研究では考える。 東京で長年集積してきたアニメーション産業だが、近年地方へ工程の一部を移転する事例が増えている。移転した会社からは地方での制作のメリットが多く述べられた。インタビュー結果やインターネット記事の事例から、地方への進出条件を以下の4つにまとめた。① 作品制作やグロスを受注できる取引関係が構築されている② 完成したものを共有や運搬できるルートが確保されている ③ 人材を調達できる ④ 地方に行くメリットを見出している 考察:インタビューや統計より、産業集積からの大きな分散は見られなかったが、デジタル化を起因とする集積内部の変容がわずかながら見られた。CG会社が新たに多く参入したことによって、渋谷区を代表とする都心部にもアニメーション制作が波及してきた。 デジタル化は進んでいるが、東京での集積は依然として強固なものであった。その理由として、アニメーション産業の脆弱性が上げられる。制作会社は小さな規模が多く、制作に依存した経営体制をしている。東京で制作することは、集積による負の影響を受けることもあるが、それを容認することで、それ以上のリスクを回避することができ、どの会社も集積内での経営を成り立たせている。
著者
大西 健太
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集 2023年度日本地理学会春季学術大会
巻号頁・発行日
pp.136, 2023 (Released:2023-04-06)

アニメーション産業は「働き方改革」によって産業構造規模での変化が見られている.東京における産業集積内では大きな変化を求められ,地方への進出も増加傾向にある.本稿では,こういった状況下にあるアニメーション産業集積の動向に関して,集積内部の外部経済や外部不経済の面から考えていきたい.本研究では聞き取り調査及び報告書類を用いて検討・整理を行った. 結果を端的に述べると,外部不経済が進みつつあることがわかった.アニメーターが集積内の柔軟な専門家として流動的に業務を行っているが,勤務時間や報酬に問題があった.これらの改善が求められ,アニメーターの社員化や深夜業務の停止が行われているが,制作会社にとっては固定費の増加になり,負担が生まれている.また,人材不足の解消や人材育成のジレンマを乗り越えるために賃金が上昇し,経営面でも悪化傾向にある.その結果,デジタル化の助力もあり,地方への制作拠点の移転などが起きている.
著者
大西 健太
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集 2023年日本地理学会秋季学術大会
巻号頁・発行日
pp.126, 2023 (Released:2023-09-28)

国内外問わず,創造産業やコンテンツ産業といったクリエイティブな産業は大都市に集積していることが指摘されてきた.日本においても,アニメーション産業やビデオゲーム産業は大都市である東京都に産業集積を形成している.本発表で扱うアニメーション産業も東京都に85%が集中しており,都内の制作会社の数は2020年時点で692社に及ぶ.東京都の制作会社数は増加傾向にある一方,全国の制作会社数に占める割合は減少傾向にある.これは,アニメーション産業の地方進出を示しており,地方圏においてもアニメーション制作ができる環境が形成されるようになったといえる. アニメーション制作会社の地方進出に関する研究の蓄積は未だに浅い.現段階で地方に進出している企業に関する学術的な分析は,今後の地方圏における産業誘致策やアニメーション制作会社の立ち上げに大きな意義をもたらすと考えられる.以上のことから,本研究では地方圏に立地するアニメーション制作会社の取引ネットワークや成立過程,地域とのつながり等に着目し,現時点での地方でのアニメーション制作の現状を整理することを目的とする.本研究はアニメーション制作に関連する企業や団体・個人に対する聞き取り調査をもとに分析・考察を行った. 課題を整理すると,地方で制作を続ける上で問題になってくるのは,取引ネットワークの構築と市場の確保であった.取引ネットワークが構築されていなければ,仕事を請けることも発注することもできない.また,地方において市場が確保されていなければ,東京の制作会社の下請けとしての機能が大きくなり,地方で制作を行うメリットが薄れてしまう.これらの二つの問題を解消することが,地方での制作を持続的に行うために必要な要素である. なお本発表は,地方におけるアニメーション制作現場に関する調査の経過報告であり,あくまで事例に過ぎない.今後調査をさらに進め,地方進出が進むアニメーション産業の全体像の把握に努めていく.
著者
大西 健太 山本 周平 五味 成美 石原 隆史 中込 俊太
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2016, 2017

<p>【はじめに】</p><p></p><p>近年,介護老人保健施設(以下老健)は,在宅復帰への取り組みが強化されている。また医療機関で習得した身体機能から移動方法の確立や,在宅の環境調節等を行い在宅生活を支援している。今回は,Gait Solution Design(以下GSD)とT-Support(以下TS)を併用した機能訓練を実施したことによって歩行の安定性が向上し,在宅復帰に至った症例を経験したので報告する。</p><p></p><p></p><p>【症例紹介】</p><p></p><p>症例は脳梗塞により左片麻痺を呈された70歳代の男性。既往に脳出血による右片麻痺がある。主訴は既往にある右足の感覚鈍麻による歩行不安定性であり,歩行時の不安感を軽減させ,自宅で一人暮らしをしたいというHOPEがあった。他病院で6ヶ月間リハビリテーションを実施され,当施設入所となった。入所時より歩行はT杖で可能であったが,疲労感や不安感の訴えがあり歩行車と車椅子を併用していた。歩行は右下肢立脚期の股関節伸展相が少なく,右足関節は常に背屈,足趾過伸展の状態であった。また,表在感覚は脱失しており,歩行時の不安感から全身的に筋緊張が高い状態であった。</p><p></p><p></p><p>【方法】</p><p></p><p>介入期間は2ヶ月間とし,週3~5回(1回20分)の頻度で実施した。訓練時GSDとTSを使用した歩行訓練を実施した。GSDは右下肢踵接地時からの前脛骨筋の遠心性コントロール,TSは右下肢遊脚期の不随意な股関節屈曲を保証する事で,立脚期における股関節伸展相の誘発を目的とした。評価項目として,10m最大歩行速度およびTime Up and Go test(以下TUG)を計測した。また,川村義肢社製Gait Judge System(以下GJS)を用いて歩行周期における右足関節底屈モーメントのモニタリングを行った。</p><p></p><p></p><p>【結果】</p><p></p><p>歩行速度は初回時0.69m/sec,1ヵ月後1.00m/sec,2ヵ月後1.14m/secに改善を認めた。TUGでは,初回時18.4秒,1ヵ月後14.3秒,2ヵ月後14.7秒と共に改善が見られた。背臥位より見られていた右足関節背屈位および足趾過伸展位は消失した。それに伴い,GJSにおける評価では,歩行時右側下肢荷重量の増加に伴い,右立脚期での底屈モーメントの増大が認められた。</p><p></p><p></p><p>【考察】</p><p></p><p>今回,在宅復帰を目的として歩行に着目した介入を実施し,退院時はT杖歩行自立となり退所された。GSDとTSを併用した機能訓練によって,歩行速度は生活の自立に必要な1.00m/secを超え,さらにTUGも転倒リスクのカットオフ値である13.5秒に近い数値まで改善が認められた。GJSの結果から,この歩行速度の改善には過剰な筋緊張が抑制され,立脚後期における下腿三頭筋が効率的に働いたことが影響していると考えられた。以上のことから,介護老人保健施設においても機能回復に着目した歩行訓練を積極的に実施していく必要性があると考えられた。</p>