著者
大西 真理子 庄司 一郎 小川 宣子 中上 寧 長岡 俊治 下村 道子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.305-313, 2004-04-15 (Released:2010-03-10)
参考文献数
20
被引用文献数
4

炊飯過程において調味料の添加が, 飯粒の水の吸水・膨潤にどのような影響を及ぼしているのか, 米の品種に違いがみられるのかを食塩を用いて検討し, 以下の結果が得られた.(1) 米の粗タンパク質およびみかけのアミロース含量はコシヒカリよりも初霜の方が多かった.(2) コシヒカリと初霜の飯の物性をテクスチュロメーターによって測定した.低圧縮測定した付着性については両品種とも食塩飯粒は普通飯粒よりも有意に減少していた.高圧縮測定した中心部の硬さ, 付着性, 凝集性のいずれも, コシヒカリについては, 食塩添加による影響はみられなかったが, 初霜については, 特に硬さについては有意に増大し (p<0.001, n=20), 付着性は減少傾向がみられ, 凝集性は有意な増加を示した.(3) 飯粒横断面の組織は, コシヒカリでは, 食塩飯粒と普通飯粒は同様の形態を示し, 胚乳細胞は表層部, 中心部ともに膨潤していた.初霜の食塩飯粒では, 飯粒の表層部は膨潤しているが, 中心部の胚乳細胞は小さく, 膨潤が抑制されているのが観察された.組織構造への食塩添加の影響は, 品種問に違いがみられた.(4) コシヒカリと初霜の白米 (掲精度90%) における蒸留水の吸水率は, 両品種間に差はなかったが, 食塩水の吸水率は, 蒸留水のそれよりも有意 (p<0.01) に低かった.また, 白米中心部 (搗精度50%) では, 蒸留水における吸水率は, 両品種間に差がみられ, 初霜の蒸留水の吸水率はコシヒカリの蒸留水のそれよりも低く, 食塩水においても有意に低かった.(5) 初霜の米粒を蒸留水および食塩水に浸漬したときの粗タンパク質の溶出は, 両浸漬水でみられ, 蒸留水におけるよりも食塩水の方が溶出率は高かった.そして, 溶出タンパク質のうちグロブリン, アルブミンおよびグルテリンが多いことをSDS-PAGE分析により確認することができた.
著者
大西 真理子 小川 宣子 山中 なつみ 庄司 一郎
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.303-313, 1997-04-15 (Released:2010-03-09)
参考文献数
20
被引用文献数
2

(1) 米を搗精する際の米の種類が理化学的特性に及ぼす影響について, 山田錦, コシヒカリ, タカネミノリの3品種の化学的成分, 吸水率, 酸度, 粘度特性から調べた結果, 以下のような傾向を示した.1) いずれの品種も化学的成分の水分, 粗タンパク質, 粗脂肪, 還元糖比は搗精度が90%, 80%, 70%と高くなるにつれ減少した.2) 搗精度が高くなるにつれ, 吸水率は高くなり, 山田錦の搗精度60%, 50%の吸水率はより高くなった.3) 脂肪酸度と水溶性酸度は搗精度が90%, 80%, 70%と高くなるにつれ減少した.4) アミログラムによる糊化温度は搗精度が90%, 80%, 70%と高くなるにつれて低くなり, 特に山田錦は80%搗精での温度低下が大きくなった.最高粘度と崩壊度は搗精による影響はコシヒカリではみられなかったが, タカネミノリや山田錦ではそれぞれ高い値を示し, 品種間に差異がみられた.老化度では, 搗精度を高くすることにより, コシヒカリは老化しやすい性質を示したがタカネミノリや山田錦ではこの傾向はタンパク質染色搗精度 50 % 脂質染色みられなかった.(2) 酒造米 (山田錦) における搗精度が理化学的特性および米組織での成分分布と表面構造に及ぼす影響を調べた.1) 蒸し加熱した米飯組織におけるタンパク質, 脂質の分布状態を光学顕微鏡で観察した結果, 果皮, 種皮, 胚芽, 糊粉層および胚乳におけるでんぷん細胞の細胞膜に沿った部分にタンパク質の存在が認められ, 脂質は種皮, 胚芽, 糊粉層のみに分布していた.搗精度の異なる米飯においては, タンパク質, 脂質が多く存在する胚乳部が段階的に削られていく様子が観察され, 粗タンパク質と粗脂肪の含量の分析値の変化と一致するものであった.2) 米の表面構造は搗精度が高くなるにつれ胚乳部のでんぷん細胞膜が破壊され, でんぷん粒の露出が観察された.