著者
小川 宣子 小林 由実 山中 なつみ
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.72, no.11, pp.739-749, 2021 (Released:2021-11-27)
参考文献数
13

ガス加熱と誘導加熱 (IH) の違いが炒め加熱と焼き加熱調理の仕上がりに及ぼす影響について, 炒飯, ほうれん草炒め, 厚焼き卵の味, 物性, 組織構造から調べた. フライパンで水を加熱した時の昇温速度が同程度になるように火加減を設定した. 強火で予熱したフライパンと卵焼き器の鍋底と側面温度は, ガス加熱の方がIHの場合に比べて均一かつ高温になった. 炒飯とほうれん草炒めは強火で各々同じ時間炒め, 厚焼き卵は中火で卵の温度が同じになるよう作製した. ガスコンロで炒めた炒飯はIHヒーターに比べ, 食塩相当量が高く, 付着性が低かった. 炒飯の飯を走査電子顕微鏡で観察した結果, ガス加熱の場合では, IHの場合には見られない表面部分の崩れが観察された. ガスコンロで炒めたほうれん草はIHヒーターに比べ, 組織構造が保持されていた. 厚焼き卵の加熱時間はガス加熱の方がIHに比べて短かった. ガスで加熱した厚焼き卵の表面構造には太い均一な網目構造が観察され, 表面の凝集性が高いことの要因と考えられた. 本研究における加熱条件では, ガス加熱の方がIHに比べて食材からの水分蒸発やたんぱく質の熱変性が促進され, 炒め加熱ならびに焼き加熱調理の仕上がりに影響したと考えられる.
著者
小川 宣子 山中 なつみ 長屋 郁子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成16年度日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.4, 2004 (Released:2004-09-09)

(目的)洗米・浸漬・加熱といった炊飯過程におけるマグネシウムイオンの存在が、飯の性状に及ぼす影響について明らかにすることを目的とした。(方法)米は平成14年度岐阜県産初霜(搗精度90%)を使用し、0.0006Nの塩化マグネシウム溶液(以下、Mg溶液)で炊飯した。米と同重量のMg溶液(25℃)で3回洗米し、米の重量の1.4倍量となるようにMg溶液を加えて25℃で1時間浸漬した後、間接式電気炊飯釜にて25分間加熱し10分間蒸らした飯(Mg飯)を試料とした。蒸留水を用い同様の条件で炊飯した飯(蒸留水飯)を対照とした。飯の性状について、加熱吸水率の測定、一粒法による硬さ,付着性,瞬間弾性率の物性測定、走査電子顕微鏡による表面構造の観察を行った。凍結切片をKMG-20-AM染色してマグネシウムの分布を調べ、さらに三点識別嗜好法による官能検査を行った。また、炊飯過程におけるマグネシウムイオンの存在が、飯の不溶性ペクチン量,水溶性ペクチン量に及ぼす影響を硫酸カルバゾール法により測定した。(結果)Mg飯の加熱吸水率は2.30倍で蒸留水飯の2.34倍に比べて有意(p<0.01)に低かった。Mg飯の硬さ1.48×105Pa、瞬間弾性率1.67×105Paは蒸留水飯に比べて有意(p<0.01)に高く、硬い飯であることが示され、官能検査の結果、Mg飯の硬さは好まれなかった。Mg飯の表面における網目構造の空洞が蒸留水飯に比べて小さかったことから、Mg飯が硬くなったのは吸水が不十分であったことが要因として推定できた。これはMg飯は蒸留水飯に比べて水溶性ペクチン量が少なかったことから、飯の表面部分に存在するマグネシウムによって、水溶性ペクチンが不溶性ペクチンとなり吸水を抑制した可能性が考えられた。
著者
小川 宣子 長屋 郁子 山中 なつみ
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成15年度日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.48, 2003 (Released:2003-09-04)

目的:卵がパンの性状に及ぼす影響を明らかにするため本研究では卵黄の役割について調べた。材料及び方法:水分・脂質含量を同じに調整した卵黄を添加していないドウ(以下無添加ドウ)と卵黄を添加したドウ(以下卵黄添加ドウ)を比較した。材料(強力粉,ドライイースト,砂糖,食塩,スキムミルク,蒸留水,油,卵黄)を混捏後,分割,30℃で55分間1次発酵を行ったドウについて、色,硬さ,瞬間弾性率(E0)と定常粘性率(ηN) から調べた。一次発酵後、ガス抜きをし、ベンチタイムと2次発酵を30℃で55分間行ったドウについて引っ張り強度、走査電子顕微鏡により断面構造を調べた。また、2次発酵後、190℃で10分間焙焼したパンについて、表面と断面の色,膨化体積,硬さ,E0とηN,気泡の大きさからきめを調べ,表面・断面構造を観察した。合わせて3点識別嗜好法による官能検査を行った。結果:卵黄添加ドウの色は無添加ドウより有意(P
著者
小川 宣子 オガワ ノリコ Ogawa Noriko 山田 和 ヤマダ ヤスシ Yamada Yasushi 山中 なつみ ヤマナカ ナツミ Yamanaka Natsumi
出版者
中部大学生物機能開発研究所
雑誌
生物機能開発研究所紀要 (ISSN:13464205)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.75-84, 2013-03

鶏卵の摂取が血中コレステロール濃度に及ぼす影響について,摂取方法をふまえて評価することを目的とし,鶏種の違いと熱変性が卵白の血中コレステロール上昇抑制作用に及ぼす影響を調べた.白色レグホーン,岐阜地鶏,奥美濃古地鶏の卵白を高コレステロール食とともにラットに10日間摂取させた結果,血中LDL-コレステロール濃度は各々49,72,61 mg/100ml となった.比較としてカゼインを摂取させたラットの106 mg/100ml に比べて有意に低く,いずれの鶏種の卵白も血中コレステロール濃度の上昇を抑制し,これら3鶏種においてはその作用に差はないことが示された.白色レグホーン種の卵を殻付きのまま85℃まで加熱したゆで卵の卵白と生卵白について同様に比較した結果,熱変性した卵白も生卵白と同様に血中コレステロール濃度の上昇を抑制した.さらに,全卵として摂取した場合の卵白と卵黄の相互作用を検討したところ,卵白の摂取は肝臓におけるコレステロールの分解を促進すること,卵黄の摂取はコレステロールの吸収を抑制することが示唆された.しかし,全卵として卵白と卵黄をともに摂取させたラットでは,コレステロールの吸収抑制は認められたが,コレステロールの分解促進は認められなかった.
著者
桑野 靖子 河原 ゆう子 佐宗 洋子 小林 由実 山中 なつみ 小川 宣子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成23年度日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.2, 2011 (Released:2011-08-30)

【目的】加水量,加熱方法,加熱工程の異なる炊飯方法で調理された飯について,甘みと香りの官能評価に対する理化学的な測定値に相関性があるか否かを検討した。 【方法】圧力IH炊飯器,IH炊飯器,ガス炊飯器の3機種で調理された飯とガス炊飯器の飯と同じ硬さとなるよう加水量を調整した飯の4種類を対象に,甘みの評価値として,糊化度と唾液アミラーゼによる人工消化後の還元糖生成量を測定した。香りの評価値として,主要な臭気成分量を定量化し,閾希釈倍数を算出した。官能評価は40歳代女性36名を対象に,各理化学的評価に対応した指標による評価と好みを炊きたてと炊飯後常温で4時間放置した飯(以下冷や)に対して行った。 【結果】「甘み」評価において,糊化度では飯間に差はなかった。人工消化による還元糖生成量ではガス炊飯器の飯とIH炊飯器の飯が有意に多かったが,官能評価ではガス炊飯器の飯と加水量を調整した飯の甘みが強いと評価され,IH炊飯器の飯は最も甘くないと評価された。ごはんの甘み評価には,ごはんの表層部と内部の水分量の違いが関与していると考えられる。「香り」評価手法については,炊きたてと冷やの違いは確認できたが,機種間の違いまでは確認できなかった。
著者
大西 真理子 小川 宣子 山中 なつみ 庄司 一郎
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.303-313, 1997-04-15 (Released:2010-03-09)
参考文献数
20
被引用文献数
2

(1) 米を搗精する際の米の種類が理化学的特性に及ぼす影響について, 山田錦, コシヒカリ, タカネミノリの3品種の化学的成分, 吸水率, 酸度, 粘度特性から調べた結果, 以下のような傾向を示した.1) いずれの品種も化学的成分の水分, 粗タンパク質, 粗脂肪, 還元糖比は搗精度が90%, 80%, 70%と高くなるにつれ減少した.2) 搗精度が高くなるにつれ, 吸水率は高くなり, 山田錦の搗精度60%, 50%の吸水率はより高くなった.3) 脂肪酸度と水溶性酸度は搗精度が90%, 80%, 70%と高くなるにつれ減少した.4) アミログラムによる糊化温度は搗精度が90%, 80%, 70%と高くなるにつれて低くなり, 特に山田錦は80%搗精での温度低下が大きくなった.最高粘度と崩壊度は搗精による影響はコシヒカリではみられなかったが, タカネミノリや山田錦ではそれぞれ高い値を示し, 品種間に差異がみられた.老化度では, 搗精度を高くすることにより, コシヒカリは老化しやすい性質を示したがタカネミノリや山田錦ではこの傾向はタンパク質染色搗精度 50 % 脂質染色みられなかった.(2) 酒造米 (山田錦) における搗精度が理化学的特性および米組織での成分分布と表面構造に及ぼす影響を調べた.1) 蒸し加熱した米飯組織におけるタンパク質, 脂質の分布状態を光学顕微鏡で観察した結果, 果皮, 種皮, 胚芽, 糊粉層および胚乳におけるでんぷん細胞の細胞膜に沿った部分にタンパク質の存在が認められ, 脂質は種皮, 胚芽, 糊粉層のみに分布していた.搗精度の異なる米飯においては, タンパク質, 脂質が多く存在する胚乳部が段階的に削られていく様子が観察され, 粗タンパク質と粗脂肪の含量の分析値の変化と一致するものであった.2) 米の表面構造は搗精度が高くなるにつれ胚乳部のでんぷん細胞膜が破壊され, でんぷん粒の露出が観察された.