著者
和田山 智哉 伊藤 絢 大坪 亮一 大谷 恭子 森川 雅史 上田 直子
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
pp.cn-001289, (Released:2019-07-23)
参考文献数
19

症例は48歳,男性.全身痙攣発作後に左顔面,上肢の間代性痙攣が持続し入院.ジアゼパム,ホスフェニトイン,レベチラセタム投与で止痙したが,再び部分てんかん重積状態となり全身麻酔下で管理した.右前頭葉に皮質を含む拡散強調画像,T2強調画像で高信号の病変を認め,造影MRIで病変の中心部とその近傍の皮質が増強された.第6病日に開頭腫瘍摘出術を施行.増強された中心部で退形成性乏突起膠腫を認めた一方,近傍の皮質には腫瘍組織は認めず,増強効果はてんかん重積によるものと考えられた.てんかん重積に伴う造影MRI異常信号は,臨床的に脳腫瘍などの他疾患との鑑別が困難な場合があり,慎重な判断が必要と考えられた.
著者
永田 泰史 竹内 正明 大谷 恭子 園田 信成 尾辻 豊
出版者
学校法人 産業医科大学
雑誌
産業医大誌 (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.343-349, 2019
被引用文献数
2

左室流出路狭窄は時に大動脈弁狭窄症に合併する.しばしば両者の狭窄を分離することができないため,大動脈弁狭窄症の真の重症度を正確に評価することが困難になる.症例は外傷性血気胸で入院となった75歳女性.心エコー図検査により大動脈弁狭窄症と左室流出路狭窄を認めた.ドプラーエコーでは収縮後期をピークとするダガー型の血流波形を認め,左室流出路と大動脈弁を通過する最高血流速度は6.0 m/sであったが,両者の最高血流を分離することが困難であった.正確な大動脈弁狭窄症の重症度評価のため,ランジオロール(短時間作用型βブロッカー)とシベンゾリン(ナトリウムチャネルブロッカー)を用いた負荷心エコーを行い,同時にカテーテル検査により左室圧と大動脈圧を測定した.ランジオロールは無効であったが,シベンゾリンにより左室流出路狭窄は消失した.シベンゾリン負荷心エコー検査により大動脈弁狭窄症の重症度は中等度以下と評価され,適切な治療方針の決定が可能となった.本症例によって,シベンゾリン負荷心エコーは左室流出路狭窄を合併した大動脈弁狭窄症の重症度評価に有用である可能性が示された.