著者
大迫 洋治 由利 和也
出版者
高知大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

本研究において、一夫一婦制げっ歯類をパートナーと別離させると、炎症時の痛み行動が増悪し、疼痛関連脳領域のうち、前頭前野、側坐核、扁桃体の活動が低下すると同時にこれら脳領域と他の疼痛関連脳領域との機能的結合が変化することが明らかになった。さらに脳内ドーパミン産生ニューロンが豊富に存在する腹側被蓋野における痛み刺激に反応するサブリージョンの興奮パターンが異なることが明らかになった。本研究により、精神的ストレスによる痛みの増悪に脳内ドパミン回路の機能変調が関与する可能性が示唆された。
著者
牛田 享宏 大迫 洋治 末冨 勝敏 小畑 浩一 石田 健司 藤原 祥裕 神谷 光広 石田 健司 藤原 祥裕 神谷 光広 小畑 浩一
出版者
愛知医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

四肢の不動化(ギプスやシーネの装着あるいは過度のベッド上安静)はしばしば不動化した部位の廃用とそれに伴う痛みが生じる。しかし、この痛みのメカニズムについてはまだ明らかにされていないのが現状である。そこで我々は独自に開発したギプス固定法による前肢拘縮モデルを作製し、痛みの発症のメカニズムに関与する脊髄後角における神経ペプチドであるCGRP、転写因子であるC-fosおよびアストロサイトの活性マーカーであるGFAP、ミクログリアの活性マーカーであるCD11 bについて調査した。また、後根神経節においてCGRP陽性細胞の大きさとその分布について調査を行った。更にこのような拘縮に対する運動療法の有用性を検証する目的での訓練の効果について調べた。その結果、ギプス除去後にギプス固定側の脊髄後角においてCGRP陽性線維の増加、C-fosタンパク陽性細胞の増加、GFAPおよびCD11bの染色性の亢進が観察された。これらのことはギプス固定により、脊髄後角においてミクログリアやアストロサイトの活性化亢進し、それを引き金として炎症性神経ペプチドの増加などが引き起こされていることが示唆された。同時に調べた後根神経節細胞レベルのCGRP分布パターンの変化は、同部位においても長期のギプス固定により、後根神経節細胞に感作や可塑的変化が引き起こされていることを疑わせるものと考えられた。今回のモデル動物では、ギプスから解放を行っても治療を行った患肢を使う傾向が乏しい。そこで、水中訓練や反対側のギプス固定などを行ったところ反対側のギプスによって、生活障害が引き起こされると患側を使うようになり自ら動かすようになることが判った。今後はタイミングや運動強度などについても検証を行っていく必要があるものと考えられた。