著者
大野 紀和
出版者
Japanese Association for Oral Biology
雑誌
歯科基礎医学会雑誌 (ISSN:03850137)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.389-399, 1986
被引用文献数
1

インド人 (Hindus) 家族17組 (両親と子供2人) の口腔内石膏模型を用い, 複シャベル型切歯, シャベル型切歯, Carabellr's trait, 介在結節および舌側副咬頭の5形質8歯別について観察し, その形質の遺伝形式を分析した結果, 以下の結論を得た。<BR>1. 親子間および同胞間の歯冠形質出現一致率は第一大臼歯のCarabelli's traitおよび側切歯のシャベル型切歯において同胞間で一致率が高い。<BR>2. 各組み合せにおける点相関係数を算出すると, 複シャベル型切歯における父親と子供間, 第一大臼歯のCarabelli's traitにおける母親と子供間とで有意な正相関が認められた。それ以外には認められない。<BR>3. 歯冠形質の表現型を遺伝子型に対応分類し, 両親の遺伝子型別の交配より子供に出現する遺伝子型をみると, 中切歯のシャベル型切歯において劣性ホモ接合体どうしの交配では子供は全てが劣性ホモ接合体となり, 第一大臼歯のCarabelli's traitにおいて優性ホモ接合体どうしの交配では子供にはヘテロ接合体と劣性ホモ接合体は出現しない。ヘテロ接合体どうしの交配では, 第一大臼歯のCarabelli'straitは劣性ホモ接合体, 介在結節および舌側副咬頭では優性ホモ接合体は出現しない。<BR>以上の結果より, 歯冠諸形質の遺伝形式は遺伝的要因と非遺伝的要因の相互作用によると考えられる。